もう少し大人になってから、そんなことは言え
大阪で寿司を食べ終わったあと、急に挙動がおかしくなるサチ。
いきなりどうしたんだ?
◯登場人物
松岡 修二 23歳
無職。人付き合いが苦手。
急に他人の心の声を聞くことができるようになった。ボリューム調整可能
新能力、心の声に返事できるようになったぞ!
幸 17歳
博打帰りの夜中に彷徨っていたのを拾った。
謎の女の子。ひょんなことから、家にかくまうことになった。
‐違った……よかった……
違った? もしかしたら……わからんけども、サチを襲っていたヤツに似ていたとか、かな……。
んー……今すぐに聞くのはやめておこう。帰ってからでも聞いてやるか。
「人たくさんいるから、ちゃんとくっついとけよ〜。迷子になるぞ」
サチはさっきよりは少しマシになったが、やはり表情は少し暗かった。俺はサチの頭を優しくぽんぽんと叩きながら言う。
「パフェ食べに行こうぜ。俺ホットコーヒーも飲みたいんだけど」
「うん、食べに行く」
ちょうど寿司を食べたところの下の階にパフェも置いている昔ながらの喫茶店がある。梅田周辺は様々な店もあるし、お洒落な店もあるが、俺はどちらかというと、昔ながらの喫茶店のほうが好きだし落ち着く。ファーストフードやチェーンのコーヒーショップも利用しないわけではないが、ぼーっとゆっくりしたい時は、やはり喫茶店に入る。
今は尚更サチの状況もあるし、ゆっくりできるところがいいと思った。
食堂街の二階から一階に降りる階段を下り、駅側の方にあるよく行く喫茶店に入る。よく行くと言っても常連みたいな感じではない。
「いらっしゃいませ」
指で人数を知らせ、奥のテーブル席に座る。
「サチ、なんのパフェにする? 俺は今日は抹茶パフェにする。それとホットコーヒー」
「んーと。私はこのプリンパフェがいい。あとミックスジュースにする」
店員を呼び、注文を伝えた。
「寿司、美味かったな〜。今日はサチのお手柄だわ。あ、なんか他に行きたいところとかはあるのか? 今度連れてってやるぞ」
「うん……私、遠くに行きたいかも。私のことを誰も知らない遠く」
遠く……か。
「大阪とかじゃないほうがいいのか?」
「うん。いっぱい遠くがいい。沖縄とか」
「沖縄って、また極端だな〜、関東とかはダメなのか?」
「あ、関東でもいいよ。んー、まぁでも微妙かな……」
そういえばシンジの子どもに誕生祝い送ってやるの忘れてたな。てかメールって返ってきたんだろうか。
「俺、元々東京だからさ。実家っていう意味だけど。まぁでも俺も別にどこでもいいかな。仕事もそもそも辞めたし」
そうなのだ。結局仕事はどさくさでもう辞めたのだ。ただ、あまり生活……というか金の心配はあまりしていない。たぶんどうにかなるからだ。
そうこうしてるうちにパフェと飲み物が来た。
「美味しそう。いただきまーす!」
パフェを食べ、コーヒーを飲みながら考える。このままサチと二人で暮らすのもいいとは思っているが。その前に、サチのことを聞かなければいけないな。きっと知っていたほうがいいはずだ。
‐シュウジ、私のことヤバイやつだと疑ってるのかな……
『そんなこと、思ってねぇよ。安心しろ』
俺は喫茶店の中なのもあって、あえて心の声で返事をした。パフェを食べながらである。こういう時に意外と便利だな。
‐シュウジ、私のこと好きでしょ?
『何言ってんだお前。もう少し大人になってからそんなことは言え』
‐じゃあ……嫌いなの?
『嫌いじゃねぇよ。とりあえずパフェ食べたら家帰るぞ』
「はぁ〜い」
なんだよ、子供かよ。ま、とりあえず家に帰ってから詳しく話すか。
◇ ◇ ◇
「ただいま〜!」
元気に、誰も待っていない家へ帰る俺達。
「なんやかんやしてたらあっという間に一日が過ぎるな」
「シュウジ。私、父親に殺されそうになったの」
え。
「サチ……お前」
「お母さんはどうなったのか生きてるかもわからないけど、刺された。そして、私は逃げてきたの」
やっぱそういうことかよ……。
「俺と出会った時のことだな? あのあたりに住んでたってことだな?」
「うん……私怖い。なんでこんなことになったのかわかんないし」
父親に殺されそうになったサチ。そして母親は刺された? 生きてるかわからないだと。わからないが母親が死んでいて、父親が殺人犯になっていたとしたら、もう少し情報が出るはずだ。出ていないということは、未遂に終わったんじゃないのか?
ただ、そうなるともちろん家には戻れないだろうし、家の近所もやばいってことだな。
「理由はわからないんだな。まぁわかったところでどうしようもないしな。んー……しばらく関西から離れるか?」
「どうしたらいいかわからないの」
「まぁそうだよな。少し考えるか……ん〜、母さんとか婆ちゃんには相談できないしな〜」
そりゃそうだよな。その女の子誰なの! とか言われそうだよな。んー、どうするか。
「私のこと助けてくれるって言ってくれたのって、たまたま?」
初めてサチと出会った時のことを言ってるんだろう。あの時の俺の気持ちは……なんだったんだろう。
「俺も正直言うとよくわかんねぇな。ただ……ほっとけないな、と思ったんだよ」
「なによそれ〜。もう昼寝しよっと」
寝るんかい。まぁ……ひと眠りして、それから色々考えるか。
‐私は、シュウジのこと好きだよ
なんだよ、素直じゃねぇな〜、心の声でしか言えないなんて。
『はいはい、ありがとな。俺も、好きだよ』
サチのことをどうするか。父親のことを聞いた以上、このままフラフラしていたのでは、危険が伴う。何か手を打たねば……
唐突に色々なことを明かしてきたサチ。
でも唐突過ぎて、まだ色々追っついてないぞ。
これからどうするのか、それを考えなければ……




