キミニサチアレ
阪神競馬場に来て、色々と楽しむ俺とサチ。
ポニーを見て楽しむのもいいが、
少しだけレースも楽しみたいなぁと思う俺。
◯登場人物
松岡 修二 23歳
無職。人付き合いが苦手。
急に他人の心の声を聞くことができるようになった。ボリューム調整可能
新能力、心の声に返事できるようになったぞ!まだまだ未知数な俺のチカラ!
幸 17歳
博打帰りの夜中に彷徨っていたのを拾った。
謎の女の子。ひょんなことから、家にかくまうことになった。
「サチ、楽しいか?」
「うんっ」
そうか、よかった。このまま楽しい気持ちのままでいれたらいいな。
なんだか、俺はこのままサチと二人で暮らしていくのも悪くないなと思い始めていた。だが……それはそれでもしかしたら。いつかは何か問題が起きるのではないかと、不安もよぎった。
「そろそろ、あの中に入りたい」
「おっ、そうかそうか。俺もそれがいいと思ってたんだよ。ホントは早めに行けたら指定席が取れたらと思ったんだけど……もうこの時間だと指定は無理かもだな」
そうなのだ。俺も、例の馬好き友達からの情報でしか知らないんだが、大きいレースのある土日はまぁまぁ混んでいて。早めに予約だったり、並んだりするとゆったり見れる指定席というのが有料で入れるんだけど、G1とかそういうデカいレースの時よりはマシだとしても、重賞と呼ばれるG2とかG3とかいうちょいデカいレースのある土曜日もそこそこに混むのだ。
まぁ俺の場合、別にデカいレースがいいとか悪いとか、そういうのは特にこだわらないので、楽しめたらいいんじゃないかなというくらいだけど。
「やっぱ指定席はいっぱいか……なんかカレーとかうどんとか、食べてから見に行くか?」
「うん、食べる。私カレー好き」
「うんうん、じゃあレース前にいっちょ腹ごしらえをしておくか。俺はカツカレーを食べるぞ。そして、勝負に勝つ!」
‐オヤジギャグ……
「でも、私もカツカレーにする。トンカツ好き」
結局食べるんかい! まぁそんなことを思いながら、レストランでカツカレーを食べる2人。まぁ元々カツカレーは好きなのだ。カツ丼も好きだけどな。
「全然関係ないんだけどよ。せっかく外食をする時なら、家で簡単に作れるようなやつより、手間がかかるもの、というか美味しいもの食べたいって思うんだ。だからデザートというか、パフェとかも何気に好きなんだよ」
「オッサンなのにパフェ好きとかキモい……」
「一応もう一度言っとくが、俺は二十三歳だぞ? サチとは六歳しか離れていない。俺でオッサンなら周りはみんなおじいちゃんだろうが」
「私はシュウジのことを言ってるの。周りと比べてはダメだよ」
コイツ……こういう時だけ妙にオトナぶりやがって……。てか呼び捨てかい。
「あ、そうそう。さっきチラッと出馬表見てたんだけど、面白い名前の馬が出るみたいだぞ。ほらこれ」
携帯電話の画面をサチに見せる。
「あ、私の名前がはいってる!」
そうなのだ。メインのレースの手前の10レースに出ていた馬の名前。
【キミニサチアレ】
「なんかいいことありそうだろ。俺はこういうのは応援してやろうと思うんだ。サチはどうする?」
「もちろん応援する。というかピンク色で可愛い」
あ、ピンク色というのは競馬のレースを走る馬は走る順番で色がわけられているのだ。白とか黒とか、青とか赤とか、あるんだけど、俺もよくは知らないが、一番後ろのほうはピンク色になっている。このサチの名前の馬は一番後ろのほうの14番で、ピンク色なのだ。
「おし、二人で応援するぞ。あ、あとで教えてやるけど、馬券買う時は自販機みたいなとこで買えるからな。お前にも今日は特別に十万円やるから好きに使っていいぞ」
「わーい。私、そのピンクの私の馬にする」
自分の名前が入ってたらきっと喜ぶと思ったんだよな。まさかの色まではわからんかったけど。そして、俺はサチが色々見てるすきにちょこっと馬券の自販機で一枚の券を買った。
「ほら、これやるよ」
「何これ? がんばれ! って書いてるのなんで?」
これは友達に前に教えてもらった、記念に残す用みたいな買い方なんだけど、応援馬券と言って、単勝と複勝を同じ金額で同時に買うことで、馬券の上に『がんばれ!』という文字がプリントされるのだ。
「なんで、って説明はややこしからいいけど。サチにがんばれ! って言ってくれてるみたいでいいだろ。記念に持っとけよ」
サチは無言で微笑んだ。たぶん喜んではいる気はする。
「つうわけで、俺はこれからの生活費を増やすために、本気になる。お前には期待してないけども、まぁ頑張れな。あ、さっきのサチの馬なんだけどな、記念に参加してみてもいいかもだけど五番人気で十三倍のオッズだから、勝つのは厳しいかもだわ」
一応、情報だけは伝えておいた。
よし! サチにあげた十万円を抜いた九十万を……二百万くらいに増やすぞ〜!!
◇ ◇ ◇
そして、数時間後。
「シュウジどうしたの? 落ち込んでる?」
「あ……いや、なんでもねぇよ。まぁこんなのは楽しめたらいいんだ。あぁチクショー、あいつの追い切りの情報、全然アテにならんじゃないか〜!」
一応だが、ここに来る前に例の馬好き友達に、今日のレースのある程度オススメの競走馬をメールで送ってもらっていたのだ。
だが……二着、三着まではあって惜しかったんだが、全て外れた。後で思ったんだが、複勝にしておけばよかったんだよな〜!チマチマしたのが嫌いな俺は全部単勝にしてたのだ。
「マジかよ……帰りに梅田で寿司でも食おうと思ってたのに、回転寿司になりそうだぜ……サチお前のほうはどうだ?」
「え、私のピンクの馬のやつを買っただけだよ〜。応援しーよっと」
「え、他は全然買ってないの? あ、じゃあ残りを帰りのメシ代にしようぜ。残りは家に置いてきちゃったからな」
「え、貰ったやつ、全部サチの馬に買ったんだよ」
え。全部って十万円……
「おい、お前あれは厳しいって言ったよな……てか単勝に十万円突っ込むの俺の友達くらいしか聞いたことないぞ……あぁ……回転寿司も無理かも」
そんなことを言っているうちに、10レースが始まった。
「サチー! がんばれ!」
子供は気楽なもんだよな……まぁ、元々なかったような金だし、いいか。
「よしっ、この際サチを全力応援だ! 俺も応援してやる。がんばれ! サチ〜〜!!」
心なしか、照れたような顔をするサチ。お前じゃねぇっての。
『少しペースが早めのようです。人気どころが横並びになっています』
あぁ〜、やっぱ厳しいかぁ……
『最終コーナーを曲がったところで、広がりました。おおっと、大外からキミニサチアレが猛然と追い上げてくる!』
「おい! 来てるぞサチ!! がんばれ! がんばれ! 刺せー!!」
「がんばれ〜、私がんばれ〜!」
『キミニサチアレがそのままぐんぐん伸びてくる!! そして……来ました! 一着は、キミニサチアレ〜〜!!』
「「やった〜〜っ!!」」
マジで来やがった。え、え、いくらだったっけ?
「わーい、私が勝った〜!」
「ちょっと、念のために馬券見せてくれ。おぉっ! ……ホントだ……十万の、最終オッズが14.5倍だから……145万!! サチでかしたっ!!」
俺は思わず、サチを抱きしめた。
「シュウジ、苦しい……。でも、良かったね」
「あ、ごめんごめん。いやマジで助かったぞ……これで帰りに美味い寿司が食えるぞ! やるな〜、サチ!」
「うんうん。あ、でもね。私はこのシュウジにもらったやつのほうが、嬉しいよ」
サチは手に持っていたガンバレ馬券をぴらぴらした。あはは、欲がないやつだな。まぁそれだから当たったんだよ、きっと。




