はたから見ると、普通にカップルに見えるのかな
急に競馬場に行きたいと言い出したサチ。
俺は俺で、少しだけワクワクしてしまう。
せっかく競馬場行くなら……週末だよな。
「阪神競馬場にいきたい」
え。
サチがいきなり言ってきたのは、そんなある日のことだった。
「競馬場て……競馬、好きなのか?」
「競馬じゃなくて馬が好きなの」
あ、そういうことね。びっくりしたぞ……未成年でガンガン博打してたらオジサン泣いちゃうぞ……。
「なんかね。小さい頃にお婆ちゃんが連れてってくれて、楽しかったの。お馬さんに乗った」
「あ〜! あれだな、ポニーじゃねえかな。あれでも小学生までだぞ、確か」
競馬場の脇というか同じ敷地内で、ポニーに乗れるイベントがあるのだ。お子様用みたいなやつだな。それ以外にも子供が遊べる公園みたいなのもある。博打というだけでなく、親子連れの客の誘引とかもあったのかな?
「むー、とにかく久しぶりに行きたい」
おっ。俺はその時ピンと閃いた。
「せっかくだから、明日土曜日だから明日に行こうぜ。名付けて……『小さい頃の思い出を感じながら、ついでにガッツリ稼いじゃうぞ』作戦だ!」
‐思い出が、けがれる
心の声で言ってくれて優しいね〜。でも、そのほうが余計に来るね〜。
「あはは……まぁとにかくだ。俺と一緒ならレースも参加できるし、楽しいぞ〜! あ、俺もそんなに競馬したことないから知り合いに聞いたことあるくらいなんだけどな」
「お出かけだから、スカート履いていく」
「おーおー、いくらでも履いていけ。ん? スカート持ってたっけ?」
‐今日買うに決まってるだろタコ
どんどん心の口、悪くなってきてるね〜……パパ悲しいよ……
◇ ◇ ◇
そして土曜日だ。俺の住んでるとこの最寄り駅からは、阪神競馬場のある仁川駅までは、一時間もかからないくらいでいける。
サチは昨日買った、チェックのフレアスカートに上は長袖のブラウスに薄手のスプリングコートを羽織っている。俺はいつものビジネススタイルだ。てか、俺は元々ほとんど服を持っていない。
「おっ、昨日買った服似合うな。可愛いぞ」
サチは嬉しかったのか、自分でもくるっと回りながら笑っていた。よかったじゃないか。
まぁガチで増やしにいくわけじゃないし、百万くらい持っていくか。帰りに梅田でご飯食べて帰ってもいいしな。
朝ごはんはコンビニでおにぎりとお茶を買って、行きの電車の中で一緒に食べた。
‐可愛い彼女連れてアイツええなぁ〜、俺も彼女欲しいわ〜
彼女じゃねぇよ。ん……まぁこうやって二人で出かけたりしてると、傍から見ると普通にカップルに見えるのかな。そうそう、サチは十七歳らしい。んーと、六歳差になるのかな。なんと言うか……嫌な気はしないな。
阪神競馬場は、阪急の仁川駅から歩いて十分もないところにある。
「なんだか久しぶりに来た気がする」
サチが小さい頃……ていうと小学生とか幼稚園くらいだったとしたら十年以上前だもんな。
俺がここ来たのは二年前くらいだったかな。馬好きの友達に連れられて色々教えてもらったな。そうそう、俺もあまり知らないんだけど、だいたい競馬のレースは場所にもよるみたいなんだけど、十時くらいから十六時くらいまでの六時間で三十分おきくらいに合計で12レースある。
んで、11レース目というのが大きいレース、というのが普通だそうだ。
「サチ、さっそく入ろうぜ〜」
「先にお馬さん見に行く」
「えっ、そうなの? まぁ急がなくてもいいか」
馬がレースをしている競馬場の脇に、ポニーがパカパカ子供達を乗せてる場所があるのだ。見学するのは自由だ。
「サチ、お前ここでポニーずっと見とくか? 俺、中に行ってきてもいい?」
「ダメ。一人じゃ危ないでしょ? あとで一緒に入る」
「はいはい、わかりましたよ〜」
まぁいいか。せっかく久しぶりに来たんだもんな。サチの好きにさせてやろう。俺は隣で一緒に見ていた。
「ねぇ見てみて。お馬さんて目が綺麗だよね〜」
「あぁ、そうだな」
確かに馬はなんだか、つぶらな瞳をしている。ポニーのほうが優しい感じかな? なんだか今にも喋りそうな気になってくるよな。
「サチ、楽しいか?」
「うんっ」
そうか、よかった。このまま楽しい気持ちのままでいれたらいいな。
なんだか、俺はこのままサチと二人で暮らしていくのも悪くないなと思い始めていた。俺ってこんな流されるタイプだったっけ……
なんだか普通にデートみたいなことをして、
それも悪くないなと思ってしまっている俺。
んー、まぁでもせっかく来たから少しだけレースも参加はしたいよな。




