オムライスとチョコレートパフェがたべたい
謎の逃亡女子に、おっちゃん呼ばわりされる俺。
俺まだ二十三歳だぞ。
てか、どうすんだよ、こんな女の子拾ってしまって……
◯登場人物
松岡 修二 23歳
IT企業勤務、システムエンジニア
人付き合いが苦手
急に他人の心の声を聞くことができるようになった。ボリューム調整可能
謎の女の子 ?歳
自宅に帰る途中に出くわす。
助けて、殺されると物騒な心の声を発する。
‐おっちゃんの声?? おっちゃん……誰?
おっちゃんと来たか……俺まだ二十三歳なんだけどな。
『んーと、そうだな……あ、俺はな。匿名希望のヒーローだ、よろしくな』
それを聞いた女の子は、なんだか妙な顔をした。なんだよそれ。スベったみたいに見ないでほしい。
まぁいいか。その妙な顔が、怖がったり怯えたりしている顔じゃないことは確かだ。とりあえずどうするか……家の近くらへんまで来たらまずメシかな。腹減ってるみたいだし?
「あ、すみません。この先の信号を左に曲がったところにある、ファミレスで停めてもらえますか?」
「あっ、はい〜わかりました」
‐ようやく解放されるわ……なんか怪しい客には関わりたくないわぁ〜
怪しい客で悪かったな。ファミレスの駐車場に停めてもらい、女の子とタクシーを降りる。チップ代わりも含めて、少し多めに三万円渡しておいた。
「えっ! えっ! そんな貰っていいんですか? おおきに〜!」
なんだよ、現金なやつだな……。やっぱ金かよ。
「腹減ったんだろ? ここで食べようぜ〜、俺も腹減ったわ。あ、大丈夫か? ケガは……してないか?」
女の子は無言でうなずく。歩くのはゆっくりだけど、警戒はしてないようだ。入ったファミレスはどこにでもあるチェーンのファミレスだった。24時間のファミレスが俺の家の近所にあるのだ。
「二人ね〜、喫煙で」
監禁された時からタバコを吸っていないから、まず一服したい。
「なんでも好きなん頼みな〜、俺はとりあえずカツ丼頼むわ。あとでデザート頼もかな。あとドリンクバーね」
灰皿を取ってきて、タバコに火をつける。そういえばこの女の子、名前なんていうんだろ……てか、誰かもわからんし。タバコを吸ってる俺をじっと見つめる女の子。ん? なんなんだ……
‐タバコ……嫌い
「え。タバコ苦手なの? ……えーと……あぁわかったよ。ちょい待ってな……」
ひと口だけ吸ったタバコを灰皿で消し、店員を呼ぶ。
「あ、ごめん。申し訳ないんだけど、禁煙席に変えてもらってもいいですか?」
深夜……というかもう早朝になるかもだけども、こんな時間だから、席は空いていた。混んでる時間帯だと、絶対目立っただろうな。
「あー、えっと……とりあえず注文をするか? それか代わりに頼んでやろうか?」
‐オムライスとチョコレートパフェが食べたい
おー、便利な心の声だねー。というか直接話すよりもいいねぇー。皮肉な言葉は心にしまい、仕方なく俺は店員を呼び、その二つとドリンクバーも頼んだ。
「飲み物は何がいいんだ? 寒そうだったから温かいやつにするか?」
‐コーラの氷なし
『はいはい、わかりましたよ』
もう声に出すのも面倒臭くなってきたから、俺も心の声で返す。なんだこいつは。
ドリンクバーコーナーで、コーラと、俺は水をくんだ。俺は、コーヒーとかは食後に飲みたいタイプだ。
「カツ丼とオムライスお待たせしました。パフェは後ほどお持ちしますか?」
「あ、うんうん、後でまた言うわ。ありがとね」
女の子は無言でオムライスを食べる。まぁまぁ早いな。お腹空いてたんだろうな。
「話せないだろうし、言わなくてもいいけどよ……名前というか、呼び名くらい教えてくれてもいいんじゃない? 俺は……シュウジだ」
「むぐ……サチ……」
「ん? サチって言うのか? あ、デザートもう頼んでおくか。俺は何にしようかな〜。あ、これにしよ、チョコレートを上からかけるサンデーにしよ」
デザートを店員に頼み、俺はホットコーヒーを入れた。女の子はコーラのお代わりを入れた。
「で、どうしたん。なんかあったのか? まぁ……なんか大変そうだけども」
サチは嫌な顔をした。
‐今は話したくない
「はいはい、わかったよ。ほらデザート来たから食えよ」
チョコレートパフェと、ホットチョコレートサンデーが来た。ここのサンデーに温かいチョコレートかけるやつ、美味いんだよな。かけたらパリパリのチョコになるんだよ。サチはデザートを見て、嬉しそうな顔をした。はは、こういうとこはちゃんと女の子だな。
「うまっ!このな、温かいチョコかけて、アイスに付いたチョコがちょっとパリッとなるのが、またいいんだよ」
サチはジロジロと俺のデザートを見る。
‐私もそれ食べたい
「お前はそのパフェがあるだろ。人の食べかけはあまり欲しがっちゃダメだぞ〜」
サチはしゅんとした。なんだよ子供かよ……まぁ……子供なのか。
「もうしゃあないな……ほら食えよ。半分やるよ」
嬉しそうな顔をした。俺も釣られて笑ってしまった。
「急がなくていいからゆっくり食えよ。あ、今さらだけど……帰るところあんのか?」
‐たぶん、ない……
まぁ……そうだろうな。事情はわからんが。んー、さすがに未成年を俺の家に入れるのはまずいか……
「俺はどっちでもいいんだけども、とりあえず家にくるか?」
「おっちゃん……助けてくれるって。言ってくれた」
さっきのタクシーでのことか。まぁ……そう言ったな。
「あぁ。事情がわかった方がもちろんいいけども。どっちにしても、今かくまってほしいならとりあえず来いよ」
サチが俺をじっと見る。
‐えっちなことするでしょ
「しねえよ! てかガキがませた口聞くなっての」
んー、なんか図々しいのか、ビビリなのかよくわからん女の子だな。お腹いっぱいになったのか、あくびをしている。俺も眠たいよ。だいぶ疲れたからな。
「まぁとにかく帰ろうぜ。これからのことは明日考えよ。俺もめちゃくちゃ眠たいわ」
ファミレスを出て、俺の住むハイツはすぐなので、歩いていく。
なんていうか……これからどうしようか。てか帰るところないんだよな、コイツ。と、こんな時間にメールが来た。
『シュウ兄、さっき子供うまれたよー』




