続・匿名希望のヒーロー、正体は俺だ。
絶体絶命のピンチを、
強運とお巡りさんのおかげでなんとか切り抜けた俺。
とりあえず巻き込まれたら、俺までパクられるので……
その場をまず離れることにした。
◯登場人物
松岡 修二 23歳
IT企業勤務、システムエンジニア
人付き合いが苦手
急に他人の心の声を聞くことができるようになった。ボリューム調整可能
数分だけ念のために過ごし、それから動き出した。と、と……
おぉっ! 超ラッキー!!
アホの見張りの二人が置いていった、俺のカバンが隣の部屋にそのまま置いてあった。とにかく……このままいたら俺も捕まってしまう、さっさと出よう。俺はカバンを掴み素早くその場を離れた。
というか……さっきは必死だったからわかってなかったけど、お巡りさんの心の声に、俺、返事できてた!?
え、これってどういうことだ……。ま、まぁ、とりあえず今は家に帰ろう。
◇ ◇ ◇
時間は夜中で、終電も過ぎていたので、俺はできるだけ人の多い繁華街をまず目指し、そこでタクシーを拾った。
とりあえず、助かった。
‐なんかこの人、重そうなカバン持って、急いでるし、銀行強盗みたいで怖いな……
『大丈夫だよ、俺はヒーローだよ』
「えっ、お客さん、なんか言った??」
あはは、ちょっと試してみたらやっぱできたわ。返事できるのオモロー!
「えっ? なんも言ってねぇよ。運転手さんちゃんと安全運転してよ〜」
「あっ! ……はい……おかしいなぁ……?」
この能力はまだちょっと未知数だから、練習してみないとだよな。でも、もしかしたら使いようによったら、これはいいかもしれないぞ。心の声を聞くだけでなく、指示を飛ばすこともできる。そんな考えがよぎった。
「わぁっ! なんやあれっ! 女の子?」
国道沿いでなく、細い道を走っていた時のことだった。そこまで暗くはなくて街灯はぽつりぽつりとあったが、なんだか必死で何かから逃げている女の子がいた。道路の真ん中を走っていたから、タクシーも危なくて一時停車したのだ。高校生くらいか……??
‐たすけて、ころされる。たすけて、ころされる
え。その女の子……だよな。
「お客さん、ちょっと待っててや……あの子が通り過ぎたら走りだすから」
おいおい……殺されるとか勘弁してくれよな……さっき殺されそうになったところだぞ。
‐たすけて……誰か……
「あっ、運転手さんすみません。あの子近所の知り合いだったわ。乗せてもらっていい?」
「え??」
ドアを開けてもらい、女の子に声をかける。高校生くらいか? わからんけども、なんか酷く顔色が悪い。あと……血?? あぁ……めんどくさいことはあまり好きじゃないんだけどな……
「とりあえず乗れよ。あー……あれだ。お迎え遅くなってごめんな。腹減っただろ」
「!!!」
女の子はびっくりした様子で俺の方をみた。
‐こわい……やばい……こわい……
今にも泣きそうだ。なんだなんだ。何があったんだ。
『大丈夫。俺が助けてやる。とりあえず乗れ』
直接の言葉だと、運転手さんにも怪しまれそうだし、覚えたばかりの返信機能を使ってみた。なんとなくだが、女の子の怯えが少しだけ、収まった気がした。いや、驚きに変わっただけか……
「運転手さん、とりあえず三十分くらい進行方向に走ってもらっていいですか?」
‐とりあえずってなんや……よーわからん客やで……
運転手が心でぼやいている。まぁそりゃそうだ。
おそらくだが……この女の子は何かから逃げていた。だから降りるとしても、ある程度は移動してからのほうが、安全度は高いと判断したのだ。女の子はなぜか凄く震えていた。仕方ないから、俺の上着をかけてやった。なんか血……ついてるしな。
しばらく無言で走った。
‐おなか……減ったな
腹減ったのか。もしかしたら……監禁? 虐待?
俺もさっき監禁されたばかりなだけに、他人事じゃない感じがしたので、まったく縁もゆかりも無い子ではあったが、少し同情した。
『メシ……どこかで食うか?』
女の子は、どこからか聞こえる声にびくっ、とした。二度目なんだけどな。
‐おっちゃんの声? おっちゃん……誰?
おっちゃんと来たか……俺まだ二十三歳なんだけどな。
『んーと、そうだな……あ、俺はな。匿名希望のヒーローだ、よろしくな』
それを聞いた女の子は、なんだか妙な顔をした。なんだよそれ。スベったみたいに見るなよ〜
一難去ってまた一難。
なんだなんだ、この女の子。
殺されるとか穏やかじゃないよな。
でもな……困ってるやつみたらほっとけないんだよな……俺。




