匿名希望のヒーローということに、してもらえませんか
いい感じで勝って、機嫌よくオサラバ……
と思ったら、まさかの監禁された俺。
おい、これマジのやつかよ……
大丈夫か、俺……?
え。俺がその心の声に振り返ろうとした時。
——ゴッ!!
頭に物凄い衝撃と痛みがきて……俺はタバコを落とし、その場にたぶん倒れた……というか感覚がなくなった……
‐ホントにめんどくせぇなぁ……
俺が意識のある時に聞いた最後の心の声だった。
◇ ◇ ◇
気がついたら、俺は真っ暗な部屋に転がされていた。ここはどこだ? てか、めちゃくちゃ頭が痛い……誰か知らんけど、何かで殴ったんだろうな……まぁ死んでないからよかったのか。
目はまだ慣れてないけども、とりあえず手は後ろに縛られているのと、足も縛られている。そして、たぶんだけど金の入ったカバンはない。クソ……まぁまぁ勝ってたと思うんだが。やっぱヤクザのやってる博打はダメだな……というかもし今度やるときは用心棒を何人か連れていかないとな。一人ではダメだ。
とにかく……この状況をなんとかしないと。たぶんだけど、あの賭博場からはそんなに離れていないような気がするな。同じ建物か、もしくは違う建物の一室かな。こんな監禁専用の住居なんか用意するわけないもんな、きっと。それにしても、今何時だよ……
「あいつ、まだ気絶してるんか?」
「あぁ……まぁまぁキツめに殴ったからな。アイツもアホやなぁ〜、テキトーに勝って帰ったらええのに、調子乗って勝ちまくるから怒りを買うんやで」
声はわからんけど、たぶん見張りとか雑用係のチンピラ達だな。
「で、どうするって?」
「どうするって、場所知ってるやつを、このまま逃がしたらあかんやろ。沈めるか埋めるか、好きにせい、って言うてたで」
おいおい……マジかよ。
「まぁ、どうせもうちょい人手いるし、一人やったら逃げられんし、縛っとるから。とりあえずもうちょい転がしとき。そのままほっといてもええけど、それはそれで部屋が臭なるから困るやろ」
部屋の心配かよ! てか……マジでこのままだとやばいな……。ひとまず目が慣れるまで動けないが……せめて一人いなくなってくれれば。
「俺、ちょい腹減ってきたから、肉まんでも買ってくるわ。お前もいるか?」
「おぅ、気が効くやんか。俺ピザまん買ってきてや。あとで払うわ」
ひとりが買い物に行くみたいだな……てか、このあたりに誰か来ないのか……助けを呼ばないと。てか猿ぐつわまで噛まされてるし。
「ほな、行ってくるわ〜」
のんきに、見張りのひとりが外に出て行った。扉を開けて閉める音からして、やはり団地の一室のようだ。
階段を降りている音……二階以上だな。クソ……こんなん聞いてねぇぞ……あいつなんて言ってたっけ。一億はやめとけ、って言ってたよな……一千万ならいいんじゃないのかよ〜!
少し時間が立って、目が慣れてきた。俺のいる部屋の、隣の部屋に見張りはいるようだ。時間はわからんが……
‐このあたりの巡回って、暗いし怖いし嫌いなんだよな……
ん? 巡回……巡回って……ヤクザじゃないよな……。もしかしてこの心の声って近くにいるのか……?? どうにか知らせることはできないのか……しかも物音をさせずに……? 無理ゲーだろ……
『おい!! おいっ! 気づいてくれっ! そこのお巡りさん!』
‐えっ!! 誰? 誰々?? オバケか!?
え。反応が……あったぞ。これって俺の心の声が、お巡りさんに届いたのか? よし、それなら……
『お巡りさん……ですよね? ちょっと信じられないかもですけども、俺はオバケじゃなくて、悪いやつに捕まってる善良な市民です!』
‐善良な……しみん……
『そうです。お巡りさんの今いる近く……その辺りらへんに古びた団地群は見えませんか? そのどこかの二階で、違法賭博が開かれています!』
‐えっ、違法賭博!? あんたは誰なんだ……?
『すみません、名前は言えないんですが、匿名希望のヒーローということにしてもらえませんか……今悪いやつに捕まっていて、絶体絶命のピンチなんです!! お願いです! 信じてください!!』
‐俺の近くに……団地群といえばそこらへんだな……ちょっとすぐには信じられないが……どのくらいの規模というのは説明できるかな?
『えーと……団地の一室、二階部分の住居丸々を改装して賭博スペースが作られています。俺の覚えてる限りですが、客は十人くらい。ゲームマスターと盛り上げ役と、見張り? と受付を合わせて、運営は八人は少なくともいると思います!』
‐ゲームマスターて。まぁいい。そこまでの大規模じゃないっていうことなんだね?
お巡りさんは飲み込みが早い人で助かった……
『たぶん……ですけども。たまたま俺はその賭博場を見つけてしまって、別室に囚われています。人数を連れてその賭博場を抑えてもらえませんか!』
‐わかった! ちょうどこの近辺で開かれているという情報は前からあったんだよ。すぐ連絡して人数を募る。ヒーロー……君はとりあえず静かにしていなさい。
『ありがとうございます……!!』
やったぞ……それまでに見張りが来なければセーフだ。俺は転げながらなんとなく探っていた、縛られていた手と足の方をゆっくり緩めていった。たぶんあまり慣れてないやつなんだろう。縛り方が甘い。俺のほうが上手いんじゃないかな。物音はさせないように……
そのうちにもう一人の見張りが肉まんを買って帰ってきた。
「買ってきたでー。サービスでお茶も買ってきたった」
「おぉ〜、サンキュー。ちょうど喉も渇いてたんや。この待機のとこ、なんも食べもんも飲みもんも置いてへんもんなぁ」
その時、見張り役の携帯電話が鳴った。
「はいっ。えっ! 手入れですか!! 早く? わかりました! つ、捕まえたやつはどうします? ほっとけ? わかりました!」
来た〜! ラッキーだ……ありがとうお巡りさん……神様〜!! 俺はそのまま寝たふりをした。そして、勝手に出ていく見張り二人。
数分だけ念のために過ごし、それから動き出した。と、と……
おぉっ! 超ラッキー!!
アホの見張りの二人が置いていった、俺のカバンが隣の部屋にそのまま置いてあった。とにかく……このままいたら俺も捕まってしまう、さっさと出よう。俺はカバンを掴み素早くその場を離れた。
絶体絶命のピンチの中、
神様、仏様、お巡り様……が助けてくれたおかげでなんとかピンチを乗り切れそうな俺。
しかも、勝った金ゲット!
もう当分博打はやめだ……
それにしても……俺の心の声を聞く能力って……
なんかパワーアップしてる??




