シュウジ、死んだらあかんで
よしっ、そろそろ金を手に入れるために動くぞ。
京都で婆ちゃんと観光や食べ歩きも楽しいんだけど、
やはりこの力を試したい。
知人と連絡を取り、俺は手っ取り早く稼げる方法に出ることにした。
『ちなみにどのくらい金を稼ごうとしてんの? まぁ聞いても仕方ないけどよ』
「んーそうだな〜……一億くらいかな?」
『いっ!! ……もし勝てたとしてもそれはやめとけ。殺されるぞ』
あ、そうなのか。だいぶ控えめにいったつもりなんだけどな。まぁ、ヤクザのシノギになっている賭博場で、稼ごうとすること自体、危ないのは危ないからな。このあたりは探り探りいくとしよう。
学生の頃に読んだマンガで、億単位の博打とかをしてたのがあった気がしたから、ホンマモンだとそうなのかと思っていた。
知人にはそのあと、掛け金が十万単位であることや、イカサマは絶対に見抜かれるし、殺されるから厳重に注意を受けた。んー、バレないイカサマだから大丈夫だと思うんだけどな。要は親が決めた札の数字と同じ数字に、がっつり賭けたらいいんだろう。楽勝だ。
俺はしたこともない博打のシミュレーションを頭の中で繰り返しながら、金が増えていく様子を思い浮かべた。
中途半端な金額なんて勝ったところで意味がない。
◇ ◇ ◇
婆ちゃんには、大阪に仕事を残してきたことがあるからと言い、婆ちゃんちをあとにした。
「何かあったらいつでも言うてくるんやで」
婆ちゃんはそう言ってくれた。
「ありがとう婆ちゃん。何かあったら連絡するよ」
‐シュウジ、死んだらあかんで……
婆ちゃんは去り際に心の声でそう言った。なんか嫌な予感するんだけど、大丈夫だよな?
◇ ◇ ◇
知人に教わった西成区に行く前に、自分ちに寄って風呂に入ったり、着替えたり、一服をしたり、身支度をした。金を入れるバッグを新しく買い、向かう途中に銀行で百万をおろした。
場所は寂れた住宅地にある古い団地の一室。なぜ、知人にあえて大規模ではなく小規模の賭博場を紹介してもらったかというと、あまり大規模だと監視の目も多いかなと思ったのと、小規模でまずは手馴しという風に思ったからだ。目立ちすぎるのはまずいからな。
入った団地は、もう住人はほとんど入ってないんじゃないかなと言うくらい、スカスカだった。現にちゃんとした住人はいないと思う。時間が夜ということもあるが、とても周りは静かで。ただ、異様な雰囲気だけは漂っていた。現場は二階だが、一階から二階へ上がるところに、見るからにチンピラのような風体の男が一人立っていた。
おそらく受付というか、見張りみたいな役割の下っ端だとは思うが、無言でカバンを上にあげて、意味ありげにうなずいた。下っ端のチンピラもそれで伝わったのか、無言で通してくれた。
二階のその現場の扉はカギは開いており、普通に入って行った。開けた瞬間、尋常ではない空気を感じた。すでに博打は途中のようだった。
知人から聞いたルールだと、いつでも入って、いつでも出ていけるということだった。入り口は普通の住居の玄関と一緒だったが、たくさんの靴が並べてあり、それでも置ききれない靴は廊下にも敷物がしかれていて、その上に置かれていた。
玄関は普通の住居と一緒だったが、奥の居住スペースは壁が取り払われていて、一つの広い和室になっていた。奥の方の広間にたぶん客だと思われる参加者が十人くらいと、その更に奥に、なんて呼ぶかわからんが、ゲームマスター? みたいな人がいて、両隣には見るからに強そうな用心棒みたいな二人が座っており、更にその場所の周りに三人、場を見張っているようなやつが立っていた。ゲームマスターと用心棒と見張り? そんな感じかな。
玄関を上がった所には、下にいたチンピラと似たようなのが二人いた。これが受付みたいな感じかな。おろしてきた百万をそのまま受付に渡す。聞いた話では受付けで十万ずつの束に変えてくれるところはまぁまぁ用意があるということだから、それなりの規模であるらしい。その場で交換とかはせず、自前で用意をするような感じだと、そこまで親の用意がない場ということかな。
十万ずつを束ねたズクと言われるものを十束受け取り、一から六の数字が書かれた張り札もそこで一緒に受け取る。
「入りました」
ちょうど俺が部屋に入ろうとした時に、ゲームマスターが次のゲームを始めたところだったようだ。六つの札のうち、一つを布に包み、場に置く。その数字を当てる、というのが「手本引き」だ。知人がなんやらかんやらと張り方というのを教えてくれたが、いっぱい賭けるほどオッズが低いらしいので、俺はスイチと言われる一点張りしかしないことにした。というか当たるのにわざわざ低い賭け方する必要ないよな。
「さぁ、張った張った!」
ゲームマスターの両側に座っていた用心棒が客をあおる。用心棒でなく盛り上げ役みたいな人なのかな? おれは初回は見学させてもらうことにして、ゲームマスターの心の声を探った。
‐もういっちょ、三でいくで……
めちゃくちゃ聞こえてるぞ、お前。俺はニヤけそうになったが、完全に怪しいので我慢した。
客は各々の賭け金と自分の思う張り札を裏を向けて場に出す。だいたい二〜三枚で賭ける人が多いみたいだな……みんなビビリなのかな?
「では……勝負!!」
盛り上げ役の二人が掛け声を上げ、親が包んでいた札を場に出す。
「さんっ!!」
「また三かいなぁ〜!」
「よっしゃっ!!」
まぁまぁみんなやられている中、一人だけ当たったようだ。あ、スイチでの配当が4.5倍らしいが、それでも四十五万。んで、他のみんなが外れたら、もちろん親の総取りだから、まぁまぁたいがい親が勝ちそうだな。
それにしても……当たったな。俺はドキドキというか、楽勝過ぎて呆れてしまったくらいだ。あとは度胸と、張り方だな。目立たないように目立たないように。
「次から参加しまーす」
一応ひと言いっておいた。
ようやく、博打開始。
始める前から大勝ちしか見えてこない俺。
小規模だから一億は無理でも、とりあえず何千万はいけそう?
行っとくか!




