力のために歪んでしまった現実は、お前自身に返ってくるで
清水寺の帰りに、担々麺と特製ローストビーフをいただき大満足の俺。
やっぱ美味いもん食べたら幸せだ。
そして、美味いもんを食べるには金がいる。
そろそろ、動くかな。
「辛いやつって、めちゃくちゃ辛いの?」
「ん……あぁ、まぁまぁ普通の辛さやな。食べてみるか?」
「いや、それはやめておく」
やっぱ美味いもの食べたら幸せな気分になるな〜! なんだかもう色々考えてたこともどうでもよくなるな。
「ごちそうさま〜!」
担々麺って、元々が辛いやつっていうイメージだったから、食べたことなかったんだが、辛くない担々麺ならイケる、ということがわかった。まぁそもそも辛くない場合は、担々麺と言うのかどうかは俺は知らない。
◇ ◇ ◇
それから数日は、婆ちゃんと観光がてらご飯を食べにいったり、ただただ、家でぼーっとしたり、あとは、婆ちゃんの知り合いが家に遊びにきて、話し相手になったりと、そういう感じでまったりと過ごした。
俺はまったりと過ごしながら、これからの展開を考えていた。
この、心の声を聞く能力を使って何をするか。まずは金だな。仕事はもう辞めるつもりにはしているが、日々の生活もそうだけど、何をするにも金がいる。
京都で婆ちゃんと観光をしながら、俺は何人かの知人にメールを送った。あと、職場の方へは身体の調子が戻らないことと、有給休暇の残りを消化したうえで、退職をしたい旨を伝えた。
ある程度の金を手に入れることが出来たら、次は人だな。金で人は雇うことはできるが、それに加えて人の心を掌握する必要がある。これは少し練習が必要な気がする。
あと……女なぁ……まぁこれはどっちでもいいや。女が絡むとどうしても面倒くさくなる気がする。俺自身はどっちでもよくても、女自身や、それに伴う周りの男衆が惑わされてしまっては、ややこしいからな。
というか……俺は金を手に入れ、人を集めて、何をしようとしてるんだ。宗教でも始めるのか。
いや、違うな。きっと、俺にしかできないことがあるはずだ。これは間違いない。
探偵? 人助け? いや……そんなもんじゃない。人の心が。人が求めているものが全てわかれば、きっと、もっとスケールのでかいことが、できるはずだ。
邪馬台国の卑弥呼様? 陰陽師の安倍晴明? それがホントかどうかは知らんが、そんな権力には興味はない。
俺は心の底から。人類が始まったときから、何を求めていたのか。それが知りたいのだ。これはきっと、人間が存在する意味というものにもきっと繋がっていくと思う。俺は自分でも何を考えてるんだとツッコミを入れたくなるようなことを、なぜか淡々と考えていた。
ひとりの知人からメールが返ってきた。
『西成区あいりん地区』
これについてはまた、詳しく電話して聞くとしよう。
「シュウジ、なんかまた良からぬことを考えとるんか?」
「ん〜、そんなことねぇよ。全然大丈夫」
「まぁ、これからお前が何をするにしても、これだけは言っとくで。お前に宿った力を、どう使うかはお前の勝手やけどな。その力のために歪んでしまった現実というのは、きっとお前自身に返ってくるで。それだけはようわかっとくんやで」
歪んでしまった現実?
「そんな悪いことしないから大丈夫だよ、婆ちゃん」
◇ ◇ ◇
その日の晩に、俺はメールが返ってきた知人に電話をかけた。
「悪いな、遅くに。景気はどうだ?」
『良いわけねぇだろて。つーか、あまり大規模でない賭博場なんて聞いてどうすんの? あんなとこで金稼ごうとしたら指無くなるぞ』
「あー、大丈夫大丈夫。ちらっと勝ってすぐサイナラするからさ。目立つようにはせんよ」
指無くなるっていつの時代だよ。
『俺も、たまにしか顔出さないとこだから大丈夫だろうけど、名前は絶対出すなよ。あと、なんかあっても俺は知らんからな』
「うんうん、大丈夫大丈夫。んで、前に言ってた手本引き? そのルールだけ、さくっと教えてよ」
『お前なぁ……ルールも知らない素人でいきなり賭博場行ったらやばいぞ。まぁいいけどよ……』
いいのいいの。だって俺には必殺技があるんだから。運が絡むサイコロとかポーカーとか、そういう系はダメだ。結局仕込んでいたり、心を読もうが手札の運とかもある。
知人に聞いた手本引きという博打は、六つの絵札から親がどれを選んだかを当てる、という物凄く単純なゲームだ。しかも親が何を選んだかがわかれば、必ず当たる。当たり前のことだが。
かけ方とか、倍率とかを一応聞いたが、まぁそんなのはいい。それよりも当てる当てないの駆け引きの仕方だな。おそらくだが、いきなり入った紹介もない一見客が、大勝ちした場合、怪しく思うか、必ず目を付けられる。
だから、周りの様子も見ながら、ほどよく勝ち、目立たないようにする。このバランスが大事だな。
『ちなみにどのくらい金を稼ごうとしてんの? まぁ聞いても仕方ないけどよ』
「んーそうだな〜……一億くらいかな?」
『いっ! もし勝てたとしてもそれはやめとけ。殺されるぞ』
あ、そうなのか。だいぶ控えめにいったつもりなんだけどな。まぁ、ヤクザのシノギになっている賭博場で、稼ごうとすること自体、危ないのは危ないからな。このあたりは探り探りいくとしよう。
知人のつてを利用してあまり大規模でない出入り自由の賭博場の情報を得た。
上手くいくかはやってみないとわからんが、
手っ取り早く金を増やすにはこれしかない。
美味いもん、人手、そして女……はついでだな。
次の目的地は……大阪市西成区!




