幕間3 竜の聖女様
今回は、次から始まるドラゴン退治編の導入です。あくまで補助的役割ですので、恐らく読まなくとも次の話はわかると思います。
王国の中で最も教徒が多い宗教が竜教である。この竜教では星の魔力が最も神聖視されており、星の魔力を持つ女性あるいは青年が聖女、聖人として祀られる
現在、その位置には旅人……正確には“元”旅人であるハーフエルフの少女が祀られている。彼女の種族であるハーフエルフは人間の寿命である七十年よりも長い、百年生きることの出来る混血種である。エルフの血が混ざる者たちは魔力の操作に長けており、人間よりも少ない魔力を持つものでも同魔力量の人間のおよそ三倍の力を発揮することが可能である為、現在の聖女は齢二十五でも残り十年はその地位にいることになっている
また、聖女や聖人として祀られれば教会から名付けを受け、役目の解任までは真名で呼ばれることは無い
厳かな雰囲気のある礼拝堂で、白い服とレースを被った赤髪の少女が祈りを捧げている。捧げている先には竜─ドラゴン─を象った像とこの世の創世神と語り継がれる男神と女神の像がステンドグラスの光を浴びながら神々しく堂々と佇んでおり、教会には今日もパイプオルガンの音が響き渡っている
「聖女様!!!」
礼拝堂の扉が勢いよく開くと先程まで祈りを捧げていた少女は顔をあげ、ゆっくりと振り返る。ベールがふわりと翻り、ほんの少しだけ彼女の髪色が光に映えた。美しい赤髪である
「なんでしょうか…?」
聖女と呼ばれた彼女は少々首を傾げながら自身を指す“聖女”という言葉をかけた神官へと近付き、『大変慌てているようですが、どうされましたか?』と問いかける。すると、その神官は
「聖女様…いいえ、竜の聖女 ダリア・ネモレンシス様。先程は大変失礼致しました。本日は、国立魔法学園で現れた例のヤツの正体の報告が」
緊張の糸が張り巡らされ、ピリピリとした空気が流れる中、その神官は彼女の前に跪きながら重い空気を切り裂いた
「ヤツの正体は……新しくこの世界に生まれたドラゴン型の精霊でございます。つきましては、国王陛下より直々に王宮へと足を運び、陛下の依頼を受けて、ドラゴン型の精霊を精霊界へと戻す、もしくは契約をして欲しいことのでございます」
「そう……けれど、私一人では不可能です。どうするのでしょうか…?」
その問い掛けに神官は応えることなく、ただ俯いているだけだった
「…分かりました。それでは、日程はどうなっているのでしょう?」
「国王陛下との対談は謁見の間で執り行われる模様です。恐らく、その際に共に竜の元へと向かう者達も出会うことになるでしょう。……私からは以上でございます」
「えぇ、それでは」
そういうと、神官は礼拝堂を後にして、中にはダリアだけが取り残された。暫くの沈黙の後、ダリアは口を開き、小さな声で言った
「なにかイヤな予感がする…精霊たちが恐れている………けれど、民の為というならば、私は……」
あくまで補助の補助をすると、人間の聖女、聖人は齢二十~三十が限界とされています。その年齢以上の間、聖職(特殊)に勤め続けると、全員四十代で亡くなるからです。しかし、あくまで人間としての統計から言われていることなので、ハーフエルフのダリアには当てはまりません。そのため、彼女は長い間聖女としての地位に着くことになりそうなのです。




