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その後8 裁判の行方6

今回も「」内長めです

読みにくく申し訳ございません

「エレーナ嬢に問おう、そなたは此度、嵐が起こることはわかっていたか」

「はい陛下、承知しておりましたわ」

「その嵐を神託の巫女、フェリスティアがその嵐を止めることはわかっていたか」

「いえ、まさか見張りの目を盗み、牢から抜け出すようや不届き者がいるなんて…そこまではわかりませんでした」

「では改めて問おう。そなたが見た未来では嵐が来襲した後、国はどうなっていた」

「詳しくお話しするのも躊躇われるほど無惨でございました。強い風で家々が破壊され、その後降った大雨に流されていきました。その際、犠牲者も多く出て…思い出すのも恐ろしい光景でした。まさに世界樹の無慈悲さを象徴しているかのようでしたわ」


エレーナはそう言いながらすすり泣く。

ルード伯爵はそんな娘の肩を隣で支えた。


「これが世界樹の恐ろしさ。陛下、これこそが所詮は人間とは相容れない存在の象徴でございます!」

「ルード伯爵、そなたは娘の未来を見る力を通してこの被害を知っていた。それを防ぎ、被害を削ごうとは考えなかったのか」

「恐れながら陛下、ちっぽけな人間1人がそのような脅威に対して一体なにができましょうか。それよりもこれは我々が世界樹のなんたるかを知るチャンスでございました。我々が世界樹の脅威を理解し、人が自力で作り上げる新しい国という未来を掴むためのチャンスでございます!」

「チャンスか…国の民の命が懸かっているのだぞ」

「たしかに残念なことではございますが、尊い犠牲でございます」


晴れやかにルード伯爵が言い切ったところで、暫しの沈黙が訪れた。

国王陛下は黙ってうつ向き、机に置かれた手が震えていた。

不審に思った文官が後ろから「陛下」と声を掛けると、陛下はゆっくりと顔をあげた。

その表情は普段の穏やかな国王からは想像できない、怒りに満ちた表情だった。


「尊い犠牲と言ったな…ルード。貴様、民の命をなんだと思っているんだ!!!」


初めて見る激しい剣幕の陛下にアナスタシア親子が思わずたじろぐ。

後ろに座っていた傍聴席からも短い悲鳴があがるほどの威圧感だ。


「国というのは、民あってこそのものだ。それは国家の理想などというもののために犠牲にしていいものではない。そして国民がいようとも、人が生きていくためには住まうための大地が不可欠だ。私達は大地があってこそ生きていける。確かに大地、自然は我々の思うようにならないこともある。しかし、それは当然のこと。大地は自然の摂理の中にある。それは人間の摂理とは全く異なるものだ。そんな中でも世界樹は異なる摂理の側から人に寄り添い、国を見守ってくれている。だからこそ我々も大地を敬い、享受する。異なる摂理にあるもの同士が互いに歩み寄りながらこの1つの世界で生きていく。それこそが我々が末長く健やかに生き、民の生活を守るために大切なことだ。ルード、そなたが真に民の命を尊ぶならそなたとの対話を受け入れよう。しかし、人も大地も軽んじて理想を語るならば、この国の国王として、そなたの話は断固として聞き入れない」


まるで金縛りにでもあったかのように、誰も身動きがとれなかった。

声をあげぬまま、涙を流している者もいる。

先ほどまで威勢よく話していたルード伯爵すら、うなだれたまま硬直していた。


いつも静かに穏やかな微笑みを浮かべている国王陛下。

陛下の民を思う気持ちがこのように強く深いものだと示されたのだ。


「裁判に戻ろう。真否の石をルード・アナスタシアへ」


陛下の一言でようやく場内の時が動き出した。


「ルード・アナスタシア、そなたは自身の証言がすべて事実、そして己が真実に基づいたものだと認めるか」

「…はい認めます」


やや歯切れ悪くルード伯爵が言葉を発する。

石はまるで判断を迷うかのように、白と黒がマーブル状に表れた。

おそらく証言の中に真もあれば偽もある、ということなのだろう。


「続けて問おう。そなたが語った人の力によった国を造るという理想、それはそなたにとって真実か」

「はい」


石の色は白く変わる。


「その理想の過程で権威の所持、不所持に関わらず邪魔者を排除し、自身が成り上がりたいという野望はなかったか」

「ございません」


石の色は黒く変わる。


「そなたは自らの行為が罪だと認めるか」

「はい」


石の色は黒だった。


陛下は1つ小さく息を吐くと、続いてエレーナ様に石を持つよう命令される。


「エレーナ・アナスタシア、そなたは自身の証言がすべて事実であると認めるか」

「はい…」


うなだれたまま、蚊のなくような声だった。

石の色は白と黒のマーブル状に変わる。


「そなたがこの一連の件の発案者であること、クロフォードに懸想していたことは、クロフォードが別の宝玉、集音の石で暴いている。そなたはクロフォードと結ばれるためにこの一連の罪を計画した。相違ないな?」


エレーナ様はうつむいたまま、力なく首を横に振る。

石は黒く変化した。


「そなたは自身の罪を認めるか」


もはやエレーナ様はなにも反応しなかった。

石も同様に先ほどの色そのままだった。


「エレーナ嬢、最後に問う。そなた、未来が見えるというのは本当か」

「…はい」


石の色は黒だった。


~・~・~・~・~


「アナスタシア家の犯した罪、ルモンド家の際と同様、死者や怪我人を出したわけではない。しかしアナスタシア家は本件の主導的役割を果たした。結果的に取り返しのつかない被害は回避できたとはいえ、ルード伯、エレーナ嬢共に民の命を軽んじており、国の宝は喪われていてもおかしくない状況だった。そしてそれを反省していないことは真否の石によって明らかにされている。私は斬首刑でもおかしくないと考えている。しかし今回、極刑は回避してほしいという嘆願書が集まっている。それを汲んで此度の件に対し、ルード伯、エレーナ嬢共に永久禁固刑を言い渡す」

「国王陛下、恐れながら質問をお認めいただいてとよろしいでしょうか」

「許可する、レブンクロー公爵」

「嘆願書とは一体なんのことでございましょうか?手元の資料にも言及はありませんが」

「あぁ、困惑させてすまない。今日の裁判の直前に届けられ、資料に載せるのに間に合わなかったのだ」


そう仰って国王陛下は書類の束を掲げてお示しになる。


「此度は死者がなかったことを鑑み、極刑を回避してほしいという旨の嘆願書、100枚だ。主にエレーナ嬢の通う学院の学友達の署名だ。フェリスティアが中心となって集めたものだ。今回はこの署名の面々の意を汲むことにした」


国王陛下がこちらを見て微笑む。

私は深くお辞儀をし、感謝の気持ちを表した。

今回の一件が許されないことであることはよくわかっているつもりであったが、出来ることなら誰の命が失われることなく、終わりを迎えてほしいと思ったし、もしもあの教室で笑顔をくれたエレーナ様がいなくなってしまったなら、うまく表現できないがきっと後悔すると思ったのだ。

葛藤はあったものの、多くの方に協力していただき、今日までになんとか署名を集め、国王様にお渡しするることができた。


「ハッ!なにが署名よ…アンタのせいでこうなってんのよ!!人からクロフォード様を盗っといて善人ぶるんじゃないわよ!このモブが!!…ハッはっはは」


突如つんざく悲鳴のような叫びが場内に響き渡る。

今までうつむいたままだったエレーナ様が突然天を仰ぎ、言いはなったのだ。

場内に集まった者達がぎょっとしている中、エレーナ様の不気味な笑いは止まらない。

実父のルード様すらもあっけにとられているほどだ。


「クロフォードから聞いてはいたが…狂っていたか。しかし判決はこれ以上覆さない。我が判に同意する者は起立を、異をとなえる者は着席せよ」


エレーナ様の絶叫にも似た笑いがこだまする中、2/3ほどの貴族が起立する。


「ルード・アナスタシア、エレーナ・アナスタシア、本日この場をもって、そなたらから爵位とそれに基づく財産を没収、この後すぐに牢へと収監となる。…そなたらの改心を祈っておる」


陛下のそのお言葉で2人は近衛兵らに連れていかれた。

エレーナ様は最後まで笑いを止められるまま、その場を去っていった。


~・~・~・~・~


「私からの裁判の報告は以上でございます」

「うん、フェリスティアは減刑をもとめたんだね」

「…はい、今回の事は世界樹様や精霊の皆様、そして大地に対する最大の侮辱であることは重々にわかっているつもりです、ですが…」

「うん、大丈夫わかってるよ」


ハロさんはそっと頭を撫でてくれる。


「自然も人間も命はだいじ。輪廻の中でうしなわれるのはしかたない。でもわざわざなくすのはちがう。母さんもきっとそういう。フェリスティアは優しいね。それにたくさんいろいろかんがえてくれたんだね。ありがとう」


優しい言葉をかけられるとおもわず涙が出た。

ハロさんの言う通り、嘆願書を提出する事については世界樹様に対する背信なのではないかと非常に悩んだのだ。

しかしこれを逃し、万が一斬首刑の判決がでれば、もうそれを取り消すことはできない。

死というものを突きつけられる恐怖はよくわかっているつもりだ。

あの恐ろしさを味わうのは、それが自分であろうと他人であろうと嫌だった。


「フェリスティア、ぼくたちのことすき?」

「!はい、もちろん大切で大好きです」

「うん!ぼくもフェリスティアのこと大好き!」


そう言って小さな手で頭に抱きついてくるハロさんはとても暖かった。

大地と人はきっとこれからうまくやっていける。

なんとなくそう思えた。

以上で裁判編は終了です

ここからもう1山、しばらくエンディングまでお付き合いいただけますと幸いです

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