その後7 裁判の行方5
2022年もエンディングを目指してノロノロとではありますが頑張って参りますので宜しくお願いいたします。
今回も「」内文の量が多く、読みにくいです…
すみません。
「精霊様?…ハロさん?起きてください」
「むにゅ~、フェリスティアもすこしだけその甘いのおかわりちょーだい」
「寝ぼけないでくださいハロさん、こちらは精霊の間です」
「はっ!そうだったそうだった。で、全部おわった?」
「まだ2/3しかおわってません」
「なんだって!?」
ハロさんはそういって唇を尖らせている。
そのお姿は大変にかわいらしいのだが、ここでの対話はお互い『仕事』の一環。
かわいそうなのでこの手はあまり使いたくなかったがやむを得ない。
「精霊様?私は神官長より、漏れなく隠さず全て精霊様にご説明するようおうせつかっております。精霊様も世界樹様にそのように言われてこの場にいらっしゃるのではないですか?」
「!!」
どうやら図星らしい。
「人間の動向など手に取るようにわかる世界樹様なのです。ここでの精霊様のご様子も世界樹様はもしや見ていらっしゃるのでは…?」
ハロさんは慌てて宙でピンと背筋を伸ばす。
なぜか私と同じ正座スタイルになっていた。
「フェリスティアよ、話を続けなさい」
「…それでは恐れながら続けさせていただきます」
~・~・~・~・~
最後に行われたのはアナスタシア家の裁判だった。
今回の件で主犯と位置付けられており、一連の裁判でのハイライトだ。
広間に集まった人たちの緊張感も一気に高まっているのがわかった。
「ルード・アナスタシア、エレーナ・アナスタシア、それぞれアナスタシア伯爵家の当主、そして同家の第1令嬢で間違いないな」
「はい」
しかし、しんと貼り詰めていた広間の空気はお2人の被告人の登場で一変する。
ルード・アナスタシア伯爵は普段と変わらぬ様子で堂々と胸を張り、被告人席へと入場した。
エレーナ様はというと、これから裁かれる被告人とは思えない、宝石とリボンのたっぷりついたピンク色の舞踏会に来たのではと思わせるような豪華なドレスで登場したのだ。
あまりに場違いさと堂々たる入場っぷりに一同口をポカンと開けてお2人を見届けることしかできなかった。
お2人の名前を確認すると、陛下は早速罪状の確認にとりかかった。
「国内各地でおきた毒草接種による国民の体調不良。そしてそれを薬草で自ら仕立てた偽者の巫女によりあらかじめ用意した解毒草で治療させ、偽者を本物の巫女であるかのように仕立てあげた。同時に自らの手駒を王城内で働く騎士や文官の中に紛れ込ませ、サキュスを使って近衛兵を中心に意思を奪い、自分達の言いなりにする。その近衛兵を用い、国王である私や妃にも多量のサキュスを摂取させ、部屋に監禁。政のための書類や印を手中に収めた。奪った私の署名付召還状を使用して国の貴族を集め、神託の巫女、フェリスティア・アーリアを偽者の巫女として断罪、牢に閉じ込めた。そして外遊中であったクロフォードにフェリスティアが偽者であった旨を手紙で送って城に呼び戻し、たびたびサキュス入りの食べ物や飲み物を渡し、こちらについてもその意思を自分達の配下に置こうと画策した。それらは全てエレーナ・アナスタシアを王太子であるクロフォードの妻とし、また、元王族達を薬で自分達の傀儡とすることにより、アナスタシア家の政治への発言力を強め、国内での地位をより強固に更にはより飛躍させるためであった。そしてアナスタシア家はこれらの計画、実行を積極的に主導した。ルード・アナスタシア、以上相違ないか」
「陛下、恐れながら申し上げます。いくつかの相違と補足説明をする許可をいただけますか」
「許可する。申せ」
「まず、サキュス等の薬草を用いたという各種の罪については認めます。ルモンド家が薬草の栽培に成功しているという噂を偶然耳にし、魔が差したのでございます。しかしこの一連の出来事の我々の真の目的は陛下が仰られたような利己的な理由ではございません。グリンフィールド王国は建国以来、王家の世界樹信仰を基礎として国を束ねられてきた。しかしお集まりの皆さんもご存知の通り、世界樹はなんでも我々に教えてくれるわけではないし、我々の不利益を取り去ってくれるわけでもありません」
それは確かにそうではある。
世界樹様は精霊さんを通じて、自然に関わる様々なことを教えてくださるが、例えば人間が困っているからといって雨を降らせたり、日照りを解消させたりといったことをしてくださるわけではない。
あくまでも人間に寄り添い、大地を見守り、私達にこの自然と共に生きるヒントをくださるのだ。
グリンフィールド王国はそんな世界樹様を敬い、感謝しながら一定の距離感をもって歩んできた。
「陛下、我が娘エレーナは確かな未来を見ることができます。娘の力を使えば、世界樹などに頼らなくともより効率的に国を司り、発展させていくことが可能でございます」
ルード伯爵の言葉を受け、広間はざわついた。
未来を見るなんてことができる人間がいるのか。
「証言をさせたい者がいるのですが、よろしいですかな」
「許可しよう」
ルード伯爵に呼ばれてやって来たのは、お仕着せを着た40代くらいと思われる女性だった。
「許可をいただき参上致しました。アナスタシア家で侍女長を勤めております、マーナと申します」
マーナは初めての登城でしかもたくさんの人の注目を集めて話さなければいけない状況に緊張しているのか顔はすっかり青ざめていた。
「マーナよ、普段のエレーナについて部下の侍女達の話や君の印象を陛下やお集まりの皆さんに説明して差し上げなさい」
「はい、旦那様…エレーナ様はお美しく聡明でお優しくらっしゃいます。そこまでは他の貴族のご令嬢と同様でございます。しかし、私はエレーナ様は他の方とは違う、それら加えて神秘性のようなものをお持ちであったと私は思います。エレーナ様のお世話をさせていただいております侍女達も「エレーナ様はまだご本人が知り得ないはずのお話をご存知であることが多々あり、まるで未来をご覧になっているようだ」と申しておりました」
マーナはそこまで言い切ると、ちらりと主人であるルード伯爵を見やる。
伯爵は1つ頷くと、マーナはほっとしたように深くお辞儀をし、そそくさと席をあとにした。
「陛下、エレーナは先日の嵐も予言しておりました。我々が接触する前からルモンド家は土地を汚す毒草を育てており、それを娘の力で突き止めたのでございます。私はルモンド家に行き、毒草の栽培を辞めるように説得するつもりでございましたが、辞めたところで嵐が発生する事実は止められない。そらならこの嵐を利用して、決して我々を常に守護するわけではない世界樹の真の姿を国民に見せ、1度この国の世界樹信仰を葬り去る。その後、我が娘の未来を見る力を元に新しい国の基盤を作り直す。それこそがグリンフィールド王国の今後の発展に必要不可欠だと私は考えました。陛下をはじめとする王家の皆様は世界樹に傾倒なさっている。そのため1度その信仰を解き、我が意見についてご理解いただく状況を作るためにサキュスを使用した次第でございます。もしも今回の件が毒草を使用した傷害、公文書偽造、王政転覆、王家暗殺未遂だと仰るのであれば認めましょう。しかし、それらの罪は真にこの国を憂い、この国の発展のためなら尊い犠牲となりたいという一念から生まれたということをお忘れなきよう」
「陛下!クロフォード殿下!私も父上と気持ちは同じでございます!」
ルード伯がそう言って恭しく頭を垂れた後、エレーナ嬢が続いた。
「私は決して自分本意な考えから殿下のお側にいたいと言っているわけではありません。私の力が国のためになるならば、ぜひ王政に最も近いクロフォード様のお側でお支えするのが1番いい。そう考えたのでございます。クロフォード様と国をお慕いするこの気持ちは今も変わりませんわ!」
まさかの2人の主張に場内はしんと静まり返った。
そして場内の視線が玉座に向かう。
皆、国王陛下のお言葉を待っていた。
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