主人公の憤懣3
本来の主人公の番外編、今日は主人公本人視点です
腹が立つ!腹が立つ!!腹が立つっ!!!
苦心して書き溜めたノートを破いても、花瓶を壁に打ち付けても、手近なものを力任せにぶちまけても、私の怒りは収まらない。
なんで婚約者が私じゃないの!?
しかもなんでその婚約者が悪役令嬢じゃなくて、ゲームの中で名前もなかったチョイ役の巫女なんかなわけ??
私はこのストーリーの主人公なのよ。そんな私を差し置いてなんだっていうのよ。
こんなのありえない。
こんなおかしい世界、間違ってる。
お茶を一口飲み、気持ちを落ち着かせるためにも部屋の掃除をさせるため、侍女を呼ぶ。
ベルをドアに打ち付けるのをとりあえず最後のストレス発散にしよう。
相手や状況は違うけど、ここからフェリスティアを婚約破棄させる。
最後にクロフォード様と結婚するのは私なのよ!
~・~・~・~・~
「失礼致しま…」
「遅いっ!!!呼んだら速く来なさいよ!この愚図っ!!」
全くこの青白い顔をした侍女は、本当にいつもどんくさく、人をイライラさせる。
謝りながら、ビクビクしつつ部屋の片付けを始めた。
アナスタシア家は伯爵家だというのに、大した使用人がいない。
加えて次から次へと辞めていって、残ったのは使えない者ばかりだ。
こういう所はゲームには出てこないので、実際生活してみないと分からなかったところだ。
今回の婚約劇についても、ゲームの表面上は出てこなかったなにかが作用して、ストーリーが変わっているのだろうか?
だとしたら、もう正攻法では通用しない。
こちらも独自の手を考えなければ…。
のそのそとした動きの侍女による、片付けはまだ終わらない。
王室の使用人達なら、もうとっくに終わっているだろう。
それを考えると再び怒りがこみ上げてくる。
大体この侍女、フェティアとかいう名前で、巫女と名前が似ているところも気にくわない。
よくよく見てみると背格好も似ていて、段々と腹がたってきた。
こいつも解雇してしまいたいが、「後釜がいないのです」と屋敷の執事に泣きつかれ、我慢しているだ。
憎たらしい巫女と似た侍女…。
…。
いいことを思い付いた。
所詮ゲームの知識と思っていたが、ここで得た知識もバカにはできない。
「ねぇフェティア?あなた、フェティアって名前よね?」
「はい、そうでございます」
「私、学校で巫女様を見て知っているのだけど、あなた、名前だけじゃなくて彼女に背格好もそっくりよ。結っている髪、ほどいて見せてちょうだい。あぁ、やっぱり。髪の長さもほとんど同じ」
「はぁ…」
私はフェティアに髪をほどかせ、体格をチェックする。
うん、やっぱり似ている。
こらならイケるわ。
「フェティア、あなたにしか頼めない、素敵なお仕事があるわ!」
こんな使えない侍女に仕事を与えてやるのだ。
この妙案を思い付いた自分を誉めてあげたい。
やっぱり私こそがこの世界の主人公なのだ!
~・~・~・~・~
「あぁ!本当にそっくり!!瓜二つよ!どう?フェティア?生まれ変わった気分は!?」
フェティアは口をあんぐり開けて、鏡に映った自分を見つめている。
どうやら言葉もでないくらい感動しているらしい。
全く主人の質問に返事も出来ないとは。
本当にろくでもない奴。
それにしても我ながら中々の出来だ。
顔色の悪さを隠し、巫女の顔と似せるため、私自らメイクを施してやった。
そして神託の巫女の象徴、水色の髪と瞳を、色を変える効能の薬草(宿題で配布されていたものの余りをとっておいたのだ)を使い、見事に表現できている。
“賢さ”スキル獲得のため、やむを得ず受講した“薬学”の知識がこんな形で役に立つとは。
前世で獲得したゲームの知識と、今世で得た知識を総動員しプランを練る。
大丈夫、これならきっとうまくいく。
私は執事を呼びつけ、お父様にすぐに私のところに来るよう、伝えてもらう。
お父様は私に甘い。
そして野心家だ。
伯爵という称号では満足できず、さらに上を狙っている。
お父様の野心とコネクション、あの伯爵家の薬草に関する知識、そして私のこの計画があれば、必ずやハッピーエンドを迎えられるはずだ。
美しい顔で、魔女のように高笑いする主人を、すっかり姿の変わった侍女だけが震えながら見つめていた。
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