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03そもそも仕組まれて罪をなすりつけようとされた

確かに、行動には合理的な理由が見当たらないとなる空気の中で、倒れていた貴族がかすかに意識を取り戻した。


「う……うぅ……」

「意識が戻られた!どなたがこのようなことをしたのですか!?」


医者が慌てて尋ねると貴族は苦しげに目を動かし、ゆっくりと指をさして、示したのはまさかの人物。


「!……え……ユニメラ、様……!?」


会場の全員が、息を呑んだ。


(え、ユニメラが犯人?いやいや、ないでしょ。そんなことするわけない。いや、でも、これは面白い展開になってきたなぁ)


内心でガッツポーズをした。まさか、有名な令嬢が犯人だと名指しされるとはこれほど愉快なことはない。自分を疑ったから、バチが当たったに違いない。

今度はあなたの番ですよ〜?

ユニメラは、顔を真っ青にしてその場に立ち尽くす。


「わ、わたくしが……そんな、まさか……!」


震える声で否定するが、倒れた貴族の言葉はあまりにも衝撃的で。


「被害者がユニメラを……」


父が困惑したように呟く。


「わたくしは、何もしておりません!信じてください、お父様!」


必死に言うが、一度向けられた疑念は、簡単には晴れない。

あることに気づいた。倒れた貴族の周囲に漂う微かな魔力の残り香は闇魔法のものだが、扱う闇魔法とはわずかに質が異なっている。もっと、未熟で、制御しきれていないような。


(なるほど。これは)


一歩前に出た。


「皆様、落ち着いてください。私は闇魔法に精通しております。魔力の残滓は闇魔法のものですが質が、私とは異なります」


会場中が再び注目する。


「このような未熟な魔法は使いません。もっと洗練された痕跡を残さない方法で目的を達成できます。それにこの魔力は、どこか……無理やり引き出されたような印象を受けます」


倒れた貴族の傍に膝をつき、魔力を辿るように手をかざした。


「これは……ユニメラの魔力ではありません。ユニメラの魔力を無理やり使わせたかのような痕跡があります」


ユニメラは、驚いたように目を見開いた。


「どういうことだ、ティリエン!?」


父が詰め寄る。お前はその前に保身に走ったくせに、うるさいぞと笑みを浮かべた。


「つまり、誰かがユニメラの魔力を利用し、貴族に闇魔法をかけたということです。犯人は、ユニメラではありません。ユニメラを陥れようとした、別の人間がいるのでしょう」


告げると、会場は再びざわめき、妹は救われたような顔をして、見つめる。


(別に、助けたいわけじゃない。面倒を増やしたくないだけ。疑ったことは一生許さないから)

「では、一体誰が……?」


父が困惑したように呟くが、他者に委ねないで、自分でそろそろ動いてほしい。


「さぁ?それは、これから調べなければなりませんね」


立ち上がり、ふと会場の隅に立つ一人の男と目が合ったら男は視線に気づくとサッと顔を逸らす。


(ん?今の男……?)


男の顔を記憶に刻み込んだ。慈善舞踏会の代表選出の際に、妙に熱心にユニメラを推していた貴族の一人。


「皆様、本日は大変なご迷惑をおかけしました。この件は必ず真相を究明いたします」


ユニメラが涙声で頭を下げると、会場からは同情の声と、彼女を励ます声が上がる。


(はぁ?結局同情される側なの?本当にしぶとい、まぁ、いいか。これでしばらくは悪評も少しは収まる)


何より、興味深い不幸の種が降ってきた。この事件の裏にいる人物を突き止めるのも悪くないと退屈な日常に刺激を与えてくれる、小さな娯楽になりそう。


舞踏会の一件以来、犯人探しに乗り出すことになった。もちろん、面倒なので最初は断ろうとしたのだがユニメラが「お姉様しか頼れる方がいない」と、あの天使の瞳で懇願してきたのだ。一度疑ったくせに、調子が良すぎる。

そのことは後々、たっぷりゆっくりとじわじわ突いてみたい。あなた、私のことを疑ったの覚える?とホラーな空気で追いかけたいなぁ。


(ああいう顔されると、拒否権がない、この世界。仕方ない引き受けるか。どうせ、暇だし)


目を逸らした男、つまりユニメラを熱心に推していた貴族の周辺を探ることにした。面倒な直接調査はせず、使用人たちに適当な理由をつけて情報を集めさせる。こういうときに、お金があると楽。


数日後、自室で集めた情報を整理していた。


「あと男……最近、多額の借金をしている、と」


男は子爵家の人間で、本来ならそこそこ裕福なはずだとぺらりと報告書を眺める。それが多額の借金とは、どういうことだろう。さらに、借金の返済期限が、ちょうど慈善舞踏会の日程と重なっている。


(なるほど。この男、ユニメラを貶めて、何かしらの利益を得ようとしたってことか。でも、なんでユニメラの魔力を使ってまで?闇魔法の痕跡を残して罪をなすりつけるつもりだったの?だとしたら迂闊なやり方。詰めが甘い)


もう一つ気になる情報があった。男は最近、頻繁に魔導具師、と呼ばれる人物と接触していた、という魔導具師とは魔力を利用した道具を製作する職人のこと。


(魔導具師……もしかして、他者の魔力を強制的に引き出す魔導具でも作らせたの?それを、ユニメラにこっそり使わせて、魔力暴走を起こさせようとした、と。闇魔法の痕跡を残すことで、闇魔法を使う私に疑いの目を向けさせた……と)


一連の筋書きが見えてきた。

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