表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

Twist / 最大の巨悪

遂にクルティードの統領であるエル・アルテサーノと接触したCLAWだったが、アルテサーノの奇怪且つ筋の通らない狂気的なテロ行為に翻弄されてゆき……

訓練の翌日CLAWのメンバーはクルティード対策作戦の説明のためにいつも通りブルドッグウェイにある旧署に集められていた。


「アレ?アミーナが乗ってるのってフィアットじゃなかったの?」とシバサンが声をかけると、涙目の彼女がおそらくFBIから貸与されたであろう十代目シボレー・インパラから出てきた。


「あ゛……わ゛わ゛わ゛たしのチンクエチェントは……ば、ば、ば、爆発したらしくて……」


「は……?爆発?盗まれたの?」


「そ、そ、そ、そうです……ス、ス、ス、スニッド・ロウ地区で発見されたらしくて……でも……む、向こうの警察官はこんなの日常茶飯事だから一々調べてられないって……」


「あちゃあ……あの辺は多いときで一日百件は車両窃盗が起きるからねえ……それに殺人が重なっててんやわんやでマトモに調べる時間が無いのさ。」


「そ、そ、そ、そんな!ここに……ここ……」


「おい、アミーナ、シバサン!そこでくっちゃべってないで早く集まるんだ!」


二人は急くエマに呼び出されると、壁にプロジェクターによって画像が映し出され、作戦のブリーフィングが開始された。


「よし、それではボス、アミーナ、連中の動向について説明をお願いします。」


「ま、ま、ま、まずはエル・アルテサーノについてです。し、し、し、資料をご覧ください。」


アミーナがパソコンに向かってリモコンのボタンを押すと、隠し撮りされたアルテサーノと思しき人物の写真が映し出された。


旧型のポルシェ・356の隣にいる人物でメキシコ人と思しき顔立ちに片三つ編みの髪形をしていて、強面に見えるが瞳の奥底にはどこか子供のような無邪気さがあった。


そしてその体格と傷を見た瞬間にアンジーが強い反応を示した。


「コイツは……スナッフビデオでクロウを解体していた張本人じゃないか……!末端の構成員じゃなく、まさかコイツが大ボスだったなんて!」


「え、え、え、FBIはこの半年間でずっと裏方でタスクフォース・アースソングの動向を見守りつつ、潜入捜査官をクルティードに送り込んで連中の動向を探っていました……」


「その潜入捜査官は残念ながらメキシコ国内で〝皮なめしにされて〟亡くなったが、彼が秘匿したデータはそのままFBI本部へと渡った。その情報によれば連中は今から一週間後に核兵器の取引を行うらしい。それも、隠れやすい国境付近や郊外ではなくアニマルシティのど真ん中にあるグランドセンターで取引を行うようだ。」


「アニマルシティで一番高いビルで核兵器の取引だって?怪しいどころか、どうぞ逮捕してくださいって感じだ。どうにも怪しいな……」


「さ、さ、さ、更に違和感があるのはその取引が夜間ではなく白昼堂々行われるというところにあります。じゅ、じゅ、殉職した捜査官の情報によればその場所にエル・アルテサーノは現金の入ったアタッシェケースと共に一人で現れて取引を行うとの情報がありました。」


「一人で……?正気とは思えないな。捕まえてくださいって言ってるようなもんだ。怪しすぎる。」


「何か秘策があるのかもしれないな。だが、街中で核兵器を爆発させればアルテサーノごと吹き飛ぶことになる。そんなバカな真似をするとは到底思えない。それにこっちにはアミーナもいる。最悪の状況下では彼女の技術と知識でアニマルシティを救うしかない。」


「それで……核兵器ってのはつまり……どのぐらいの範囲を焼ける代物だ?」


と、アンジーが核爆弾に対する質問をするとアミーナは眼鏡をクイっと動かし、いつもの吃音気味の発音は急に消え去ると、饒舌になって構造を解説し始めた。


「せぇつめいしましょう!この爆弾はW62型核爆弾と言います。弾頭重量百十五キロ、弾頭の長さは約一メートル。一九六〇年代の冷戦期にアメリカ軍がソ連に対する報復用として開発した大陸間弾道ミサイル用の複数独立目標再突入体として設計されたモデルで爆発力は約一七〇キロトン。つまりニッポンのヒロシマで爆発した忌々しきリトルボーイの十倍以上の威力があります。アニマルシティで爆発すればダウンタウンは一瞬で消え去り、ハリネズミウッドすら焼き尽くされる途轍もなく危険な代物……少し、美しさすら感じてしまいますね……一九七〇年から製造が始まり、六年間の間で千七百二十五発もの数が製造されました。二〇一〇年代頃には全ての同モデルが解体されて無くなったはずですが、調べた情報ではその解体された一台の部品を再構築した物がブラックマーケットに流されたと思われ、紆余曲折を経てクルティードが買い付けたもののようです。」


「……そんな代物をクルティードは買い取って何をする気なんだ……?たかが麻薬カルテル如きがこんなもの必要ないだろ。戦争でも起こす気なのか?」


「ええ、その通りです。普通であればこのレベルの代物は麻薬カルテルでは手に余るものでしょう……本来犯罪組織というのは闇に潜みながら悪事を働くものです。しかし、ロス・クルティードはメキシコのほぼ全土に勢力を伸ばして政界や軍とかなり強いパイプのあるありえないほど規格外の超大規模組織です。それにそれだけの規模になれば商売敵のカルテル相手にメキシコ軍を動かせばいいだけでわざわざ核兵器を用いる必要はない……だから核弾頭を使って考えられることは一つしかありません。買収した兵士とアメリカから買った核を使ってクーデターを起こし、メキシコという国そのものを乗っ取る……要するに奴らは〝国家転覆〟をする気なのでしょう。」


「……国家転覆だと……?」


アミーナが国家転覆という言葉を口にした途端、CLAWのメンバーは皆一様にどよめき始めた。


たかだか麻薬カルテルの一つが核兵器を保有して国家転覆を狙うなど、最早現実では考えられない状況である。


しかも、それほどまでの規模の話になれば当然のことではあるが政治的な問題となり、軍やCIAが噛まなければおかしい案件である。


最早警察の一派閥が手を出せるような状況にないのは明白であった。


「ご明察だなCLAWの諸君。」と作戦室内の背後から、一人黒ずくめの装備を着た人物がナイフ・トゥワーリングをしながら現れた。


明らかに怪しげな様相をした人物に全員が驚き、センチュリオンが捕まえようと動くが回避されると、臀部を軽く蹴られて床に横転してしまった。


「鈍いな。そんな物を着てるからだ。だが、今の一瞬の凄まじい殺気で分かった。お前のそのアーマーは拘束具に過ぎないのだな。」


「……お前は?見るからにCIAって感じだ。」


「ノーコメントと言っておこう……お前たちに言う通り、この問題は一警察官がする仕事ではない。とっとと身を引くのが身の為にもなる。これは警告だ。」


「だが……我々がクルティードと一番長く戦い、一番知ってきた立場だ。それに、仲間を傷つけられた因縁もある。少なくともエル・アルテサーノの逮捕だけは私たちにやらせてほしい。」


「だが、それでヘマをしてアニマルシティを丸ごと吹き飛ばしてしまったらどうする?連中の出方は不規則だ。」


「そのためにアミーナがいる。」


「……フン、エマ・カストロ・マルチネス警部……調べた通りに頑固な奴だ。」


「私を知っている……?」


「ああ。貴様の親族がどうやってアメリカまで来てどうやって根付き、どうやって貴様が生まれ、どうやって家族を形成したのか……そのすべてを私は知っている。娘もお前に似て頑固者なのもな。」


「……言っておくが、私の娘に手を出せば容赦はしないぞ。」


「安心しろ。そんなことをする趣味はないし、するメリットも無い。ただ警告するためにここへ来ただけだ。それに……上層部はお前たちのことを完全に舐めている。故に一人しか警告に派遣しなかった。たかが警官如きにできることは少ない。本気でお前らを止めたいなら……もう既にやっているからな。」


「……一つ気になるんだが、この状況に政府はどう動くつもりなんだ?」


「知るわけがない。国家が単なる組織の使い走りに過ぎない個人に対して伝える必要もない。そして興味も無い。ただ仕事をするだけだ。」


そういうと黒づくめの人物はプレートキャリアのショルダーパッドに取り付けたナイフシースにナイフを収めると、そのまま部屋を後にした。


エマはその人物の後を追ったが一瞬の内にどこかへと消えてしまっていた。


しかし、残り香を残すかのようにガレージからはプリムス・ロードランナーのV8エンジンの轟音が響いた。


「クソ、なんなんだアイツは……意味不明なことばっかりぬかしやがって。名前も名乗らないとは。」


「ともかく、この異常事態を乗り切るためにも訓練と突入先の構造把握を怠るんじゃない。グランドセンターの見取り図を手に入れた。これからどのようにしてアルテサーノを確保するかを考えよう。」


「確保?冗談キツイぜ。この規模のことをやらかしたカルテル……いや、テロリストを捕まえるだけで済ませるってのかボス?」


「そうじゃない。奴が噛んでいる案件は他にも山ほどあるはずだ。捕まえて法の裁きにかけ、表沙汰になっていない悪事まで全て暴かなければ被害者たちは誰も浮かばれない。クロウのことはわかっているが、前のように一時の感情に流されるんじゃないぞアンジー。」


「……ったく。わかったよ。」






数時間かけて綿密な作戦会議と突入訓練を終えた後のロッカーにてルースとニーナは私服へと着替えていた。


「……とんでもない規模の話でしたね。まさかアニマル市警に入って一年も経たない私たちがこんな大仕事をすることになるとは……これはもう、いじめとかしょうもないことをやってる場合じゃありませんよね?」


「……確かに私も驚いた。まさか国家転覆なんてワードを生きてる内に生で聞くとは思ってなかった。」


「怖くなりましたか?怖いなら逃げていいってエマさんも言ってましたよ。」


「まさか……私は給料が高ければそれに従うだけ。それと、相手が大きくなったからといって私が友達になったと勘違いしてフランクに話しかけるな。気色悪くて反吐が出る。」


バンと音が鳴る様にわざと強くロッカーの扉を閉めたニーナだったが、その瞬間に外から見ていたルフィナがニーナに話しかけてくる。


「まあ、そんなことをしてはいけませんわ。物は大事に扱わないといけません。それとニーナ、少し時間ありますこと?」


「……は?なんで一々指図されないといけない訳?それに、時間って何。私はもう疲れたから帰りたいの。」


「まあそう言わずに……わたくしはただ貴女と少し食事がしたいんですわ。」


「そのまま酒を飲ませてレズプレイってんならお断り。私は同性愛者と金持ちが大嫌いだ。だから、あんたが死ぬほど嫌いだ。同じ空間に居てほしくない。」


「生憎、わたくしには既に婚約を誓った相手がいましてよ。それに……言うことを聞かないと少しマズいんじゃありませんこと?」


ルフィナはそういうとニーナを部屋の角へと連れて皆に見えない角度でスマートフォンに映し出された録画映像を見せた。


そこにはニーナがフィアット・500を持ち出してスニッド・ロウのチンピラに渡して燃やさせる一部始終が映っていた。


「お前……コレどこで……」


「アミーナが車の話をしていたのをちょっと盗み聞きして、片手間に探偵に依頼して調べさせましたの。スニッド・ロウ地区の警官の緩い捜査を使って掻い潜ったつもりでしょうが……わたくしの目はごまかせませんわ。」


「なんだよ、クソ同性愛者。弱み握って何しようって言うんだ。レイプか?私のアソコが見たいのかよ!何ならここで今見せてやろうか!恥ずかしくもなんともないぞ!私がどれだけここを使ってスニッド・ロウで食いつないできたと思う?」


「ですから、ただ一緒に食事をしたいだけ。ただ、貴女と腹を割って話したいんですわ。」


ルフィナの真剣な瞳を向けられてニーナは瞳を気まずそうに反らすと、そのまま強引に手を引っ張られてガレージへと連れていかれ、ポルシェ・パナメーラの助手席に座らされると、ルフィナはエンジンをかけて車を動かし始めた。


「高級車か……クソ、最悪だ。なんで高級車になんか乗らないといけないんだ!ポルシェなんて成金どもの乗り物だ。触れるだけで吐き気がするね。あぁ、早くバラして飯のタネにしてやりたいよ。」


「それを言ったら貴女だってブルーさんのシェルビーに乗ってるじゃありませんこと?」


「〝エレノア〟は別だ。マスタングは私たちみたいな貧民に寄り添ってくれる車だ。成金趣味のポルシェなんかとは違う。」


「でも、その車はブルーさんから盗んだものですよね?」


「は?盗んでないよ借りたって言ったじゃん。」


「今朝、アミーナさんが車が爆破されたと言っていました。皆クルティードの件でごたついて何も言っていませんでしたが、わたくしはどうも怪しいと思っていたので、昼休みの休憩時間にブルーさんに電話をかけました。そうしたらまだ寮のガレージの中にあるはずと話していました。おかしいですわね。なんで旧署のガレージにシェルビーがあるんでしょう?」


「……知らないよ。ホントに借りた。」


「貴女があの車を〝エレノア〟と呼んでいる理由は映画のゴーン・イン・シックスティセカンズが由来でしょう?貴女の態度を見て経歴や何を経験したかをカルラに調べてもらいました。そうするとスニッド・ロウ出身で十三歳から十七歳までにかけて車両窃盗で何度か捕まっているとの情報が出てきました。貴女は警察官である前に車両窃盗のプロなのでしょう?それでブルーさんのシェルビーを標的にして色や外装が違うにも関わらず、エレノアと呼んでいる……ニコラス・ケイジが演じたあの役のように。」


「チッ」とニーナはイライラ貧乏ゆすりをしながら居心地が悪そうにし始めると、懐からタバコを取り出して躊躇なく火を付けて吸い始めた。


「ようやく……化けの皮が剥がれてきましたわね。」


「すぅ……はぁ……だから?このまま突きだす?今この状況で私を追い出すメリットがあると本当に思ってる?街どころか世界の危機なのに?」


「いえ……そうじゃありませんわ。わたくしは素の貴女が見たかった。貴女はわたくしやルースさんの前では激しく感情を露わにしますが、他の皆の前では静かにしていた……つまり、貴女の心を開けるのはわたくしかルースさんしかいなかった……でも、ルースさんに任せるにはあまりにも荷が重すぎる。だから、先輩としてわたくしはブルーさんに言われた通りに貴女のことを更生させないといけないと思った。だから、その態度の悪さはわたくしに心を開き始めた第一歩の証明ですわ。」


「……知ったような口を効きやがって!」


ニーナは怒りを露にするとポケットに隠し持っていたバタフライナイフを取り出してポルシェの助手席側のシートを切り裂き、綿を露出させて引きちぎり始めた。


「ぎゃはははははは!ポルシェを切るのは気持ちいいなあ!気分がスッとする……生きてるって感じがする……」


だが、その行為に対してルフィナは全くと言っていいほど動じなかった。


「なんだよ……車を切ってるんだぞ、高級車を切ってるんだぞ!なのに、なんで嫌がらないんだ!泣けよ、べそかいて私に泣きつけよ!なんで泣かないんだ!泣けよ、泣けって!」


ルフィナはあたりの歩道付近で車を停めてシフトをパーキングへと入れると、ハザードランプを押してそのままシートベルトを外し、ニーナを抱き締めた。


「は……?」とニーナは呆気に取られるしかなかった。彼女は今まで生きてきた中で抱擁をされたことなど一度も無かった。


「大丈夫ですわ……車なんていくらでも治せます。貴女は確かに酷い人生を生きてきたのかもしれません……ですが、まだ貴女にはまだまだ未来がありますわ。だから……少しでも優しくなれる手助けをしたいんですわ……貴女の壊れた心の欠片を少しでも治してあげたい……それが、ブルーさんが望んだことでもあり、貴女の人生のためにもなる……」


「離せ、離せ!反吐が出る、やめろ!誰が金持ちに抱かれたいんだ。お前たちは私たちを〝プア・トラッシュ〟と蔑んで差別してきた癖に、何かきっかけができたら優しくするのか?今のスニッド・ロウを見てみろよ。助けを求めている人間をお前たちは助けたか?ただ一人しか見ることができないお前みたいなバカマンコが私を勝手に救った気になってんじゃねえ!」とニーナは必至でルフィナを跳ね除けようとして肘打ちやジャブを食らわせるが全く抱擁は緩むことが無かった。


「大丈夫ですわ……大丈夫ですわ……!わたくしがちゃんと、受け止めてあげますから……!」


「なんだよ……なんなんだよお前……キッショい同性愛者で金持ちのクソマンコの癖に……」


「……落ち着いてきましたわね。何かあるならもっと闇を吐き出してくださいまし……わたくしがきっと、貴女を助けてあげますから……」


そういうと抵抗が止んできたニーナの頭をルフィナは優しく子供を相手にするように撫でると、それと同時にニーナの腹がぐぅと鳴った。


「お腹……空いてますわよね?さっきも言った通り、予約してるフレンチがあるんですの。今から一緒に食べて今後のことを考えましょう。大丈夫、わたくしは貴女の味方ですわ。」


ルフィナがそういうとニーナは無言で頷き返したのだった。






「クソ、なんてスピード出しやがるんだ!」


「死んじゃいますって!」


シバサンの運転に新人であるルースとニーナとアミーナは悲鳴を上げていた。


だが、他のメンバーは少し違った感想を持っていた。


「なんか今日のシバサンの運転はトロいなあ。」


「百キロ前後しか出てませんわね。」


「なんで涼しい顔してんだあんたら……!」


「いつもは百八十は出すはずなんだよ。……シバサン?今日はトロくないか?」


「ナギサにもっと命を大事にしてって言われたんだよ!だから……安全運転に目覚めちゃって!」


「どこが安全運転なんですかぁあぁぁぁぁあああああ!」


「あら?ナギサくんとはやっぱりお熱いんですの?こんな状況ですがわたくしもそろそろ……カルラと身を固めようかと考えていまして……」


「まだ結婚してなかったんだ!あんだけあっつい仲なのに意外だね。」


「やっぱり、両親の見られ方も変わってしまうかもしれませんから、カミングアウトはかなり慎重になっていたのですが……性別の壁でしがらみを感じるのはもう辞めにしたいんですわ!だから……このクルティードの事件が終わったら、皆さんを式にお呼びしますわ!」


そして、CLAWのクルーたちはそれぞれグランドタワーの周りの裏路地に到着すると待機した。


エマは事前に警視に話を通して一般人に紛れたアニマル市警の私服警官たちがあたりを見張ってCLAWのメンバーに逐一情報を共有していた。


すると、白昼堂々とポルシェ・356に乗ってエル・アルテサーノと思しき人物がグランドタワーの駐車場に車を停めた。


「ここがグランドタワーか~高いね!すっごいおっきい!流石アメリカ最大の経済都市アニマルシティ!」


観光客気分ではしゃぎながらアルテサーノはポルシェの中から重厚感のあるジュラルミン製のアタッシェケースを取り出すとグランドタワーの下部へと歩を進めていく。


そしてその様子をアンジーはゴールド・ネームライフルで観察していた。


「……ボス、こちらアンパサンド・スリー。標的をスコープでバッチリ狙ってる。引き金を引いちゃダメなのか?それか周りにいる私服警官に捕まえさせた方が……」


「ダメだ。前も言ったが奴には余罪が山ほどあるが、奴はおそらく身分をいくつも持っているはずだ。ただ捕まえるだけでは罪を証明できない可能性がある。捕まえて情報を全部吐かせなきゃならない。」


「……了解。」


すると、アルテサーノはいかにも怪しいスーツを着込んでサングラスで目元を隠した複数人の男性たちに声をかけた。


「よっすよっす~!ケーキちゃんはどこにあるわけ?」


「既に従業員の何名かを買収して運び込んである。ここでは目立つ。指定通りグランドタワーの内部で取引をしよう。しかし……何故アニマルシティのこんなに目立つ場所を選んだのだ?」


「だって、アニマルシティの絶景を一望したかったし。」


「何……?たったそれだけの理由で危険分の一千万ドルを前金で払ったというのか。」


「そ。私は観光が大好きだからね!あとでパワーパフガールズとハローキティのグッズも買いに行こうかな。」


「訳が分からん……」


怪しい男たちはそんな会話を続けると、そのままエレベーターに乗って最上階へと移動し始めた。


「いいのかボス、連中建物の中に入っていったぞ。ヘリを出さなくていいのか?」


「いいんだ。むしろ外で逃げられるより中で追い詰めた方が捕縛しやすいし、ヘリを動かせばすぐに相手を刺激して逃げられてしまう。よし、皆集まれ。今から最上階へと向かうぞ。」


アニマルシティ・グランドタワーは全部で七十三階層ある超高層ビルであるが、エレベーターが全部で三十八機も存在しており、エマはバレない程度の途中の階層までエレベーターで昇り、途中から階段に切り替えて移動するように指示を出した。


「よし、センチュリオン、ほら、出番だよ!」とシバサンがグルカの後部を聞こえるように叩くと、センチュリオンは後部ハッチから出ようとして頭をゴンとブツけた。


「はぁ、どんくさいやつだなあ……」


そしてCLAWがエル・アルテサーノの確保のために移動して数十分後……


「おお、コレが注文のケーキちゃんだね!重そう……!」


「よし……ではアルテサーノ、代金を支払ってもらうぞ。」と黒づくめの恰好をした男たちのボスが言うと、アルテサーノは両手に持っていたアタッシェケースを男たちの方向へと投げた。


「中身を確認しろ。」と男たちのリーダーが指示を出し、部下たちがケースを空けた瞬間、中に仕込まれていた爆薬がさく裂すると、肉体はバラバラの木っ端みじんとなった。


「あはははっ、面白!」


「げほっ……げほっ……な、なんだ、何が起こったというんだ……何が……う゛わぁ゛──」


リーダーの男の足が四四マグナム弾によって吹き飛ばされて千切れ飛び、アルテサーノはニタニタと笑いながら地面に散らばっていた肉片を口にして咀嚼し飲み込んだ。


「うーん、体脂肪率が高い味だね。ドーナツばっかり食べてたのかな。そんなに美味しくない。」


「い……いかれてる……なんだってこんなことを……それに……核兵器を前して躊躇なく爆薬を使いやがって……!」


「私はね、楽しければなんでもいいの。全てのコトにに筋が通っている必要はないと思う。不条理、理不尽、それを楽しまなくちゃいけないの。キミは……その、理不尽な目にあっちゃったかもだけど。私を恨まないでね。多分天国行けると思うし。」


アルテサーノはそういって引き金を引くと、リーダーの男の頭は粉々に吹き飛んで痙攣しながら動かなくなった。そしてアルテサーノはその男の頭の破片を拾い上げてスナック感覚で食べていた。


すると、部屋のドアが勢いよくブリーチングされ、エマらCLAWのクルーたちが一斉に突入してきた。


「手を上げろ!エル・アルテサーノ!お前を逮捕する!」と声を上げると、アルテサーノは持っていたリボルバー拳銃をエマたちの足元へと投げ捨てた。


「おっ、動物ちゃんたちがいっぱい来たみたいだね!おっはよ~!私はエル・アルテサーノ!君たちが追っているロス・クルティードの統領だよ!」と明るく振舞いながら手を振り、アルテサーノは男の脳漿を喰らい続けていた。


辺りを見回すと人の肉片が辺り一面に散らばっており、先ほどの爆裂音によるものであるとCLAWのクルーたちは理解した。


「ひ、人を食ってる……」とアミーナが怯えると、「意外と美味しいよ?食べる?分けてあげるよ。」とアルテサーノはフランクに返した。


「おい、アミーナ!しっかりしろ!お前の仕事はそこにある核爆弾を解体することだ。私たちがアルテサーノを確保する!安全に解体してくれ!」


「わ……わ、わ、わ、わかりました……」


そういうとアミーナは手際よく解体用に使う工具を背負っていたバッグから取り出し、口にライトを咥えて地面に置いてあった核爆弾の解体を開始した。


再突入体のノーズコーンを電動ドリルで火花を散らせながら解体し、現れた放射能の危険マークが貼られた金属製のコンテナを開けると、中からレンズの集合体が露出する。


そしてあらかじめ手配されていた旧式のパルコード解析機を挿入し、解析した番号をキーパッドに入力すると、中から中性子発生源が出てくるはずであったが、何故か中にはサプライズと落書きされた紙切れが一枚だけ入っていた。


「か……かかか、空です!何も入っていません。これは既に解体済みのW62です!」


「なんだと……?」


「あははははははっ、そう、それね、偽物!引っかかっちゃったね!」


アルテサーノはお腹を抱えて大笑いをしていた。


「そもそも〝私自身が囮〟なの!核兵器の取引は~別のところでもう終わっちゃってるってワケ!そこで伸びてる人たちも全員何も知らなかったの!」


「なんだって?じゃあお前は偽物のエル・アルテサーノなのか?」


「いやいや、違うよ?私は本物のエル・アルテサーノ!あなた達が憎んでいるロス・クルティードのボスそのものだよ!」


「だが、こんなことをして一体何のメリットがあるっていうんだ?」


「メリット……?何それ?美味しいの?私はただこのゲームが面白ければいいだけ。不合理だろうが不条理だろうが大いに結構!筋が通らないことがおもしろおかしくてたまらないってワケ!私は死ぬのは怖くない。けど、刺激が無さ過ぎるのもまた面白くない!だから、引っ掻きませるだけ引っ掻き回して世の中をグッチャグチャにしちゃおうって思ってさ!だから──」


そういうとアルテサーノは右手でフィンガーピストルを作ると、グランドタワーの最上階の絶景から幾つかの建物の方向を指差した。


「バン──」とアルテサーノが口ずさんだ瞬間、視界に入っていたUCACパンダモニカメディカルセンターで大きな爆発が起こった。


「お前……何してる!」


「面白いこと!カチリ……バン!バンバン!」とアルテサーノが親指を動かして撃鉄を上げる真似をした後に銃声の口真似をすると、アニマルシティ中央銀行、そして運が悪いことにエマの娘であるリタが通っている小学校であるアニマルシティ・ポリテクニック・スクールが大爆発を起こした。


「見てよ!すっっっっっごい綺麗な花火が上がったよ!」


そしていくつも連鎖的に他の名所も立て続けに爆破され、アニマルシティは黒煙に覆われると火の海となっていた。


「や、やめろ!」エマはアルテサーノに飛びかかって無理矢理関節技をかけると、そのままガラスに押し付ける。


「あひゃひゃひゃひゃひゃ!見てよ、アニマルシティがいっぱい燃えちゃってるよ!マシュマロ炙れるかな?……うん?どうしたのその焦り顔?あ……もしかしてご家族の方がお勤めになられている場所があったとか……?その……うぷぷ……ご……ご愁傷様です……ぷぷ。」


いつも冷静沈着なエマも瞬間的に人生で最大の怒りを覚えると、アルテサーノの顔面に今まで込めたことも無いような力を使ってジャブを食らわせた。すると、アルテサーノの頬が抉れて大きく鼻が出血して地面に倒れた。しかし、アルテサーノの笑い声は止まらない。


「あはははははははははははははははははははははははははははは!あははははは!もっと、もっと殴ってよ、そうやって殺意を込めて私を殴って!私は殴られると、股が濡れちゃうから!その恨むような瞳も濡れちゃう……ねえ、ほら、殺す気で、殺してよ?骨を折ったって目を潰したって構わないよ?やらないの?もっとゲームの難易度を上げて!私を楽しませてよ!」


「ふざけるなっ!貴様……!」とエマは眉間に皺を寄せ、今まで見たことも無いような怒りの表情を浮かべて胸倉を掴んだ。


「ああ……ああ、ジャガーちゃんって意外と優しいんだね。パンチは凄い気持ちいいのにもったいないなあ。その瞳を見ればわかるよ。貴女って根っこは大甘なんだね。面白くないなあ、よし、もっとゲームの難易度を上げよう!」


アルテサーノはそういってエマの腰のホルスターに挿していたスタッカートを抜くと、自分の右手の上腕二頭筋の部分を撃ち抜いた。


「い゛だい゛ッ!痛いよう……血が、血がどくどく出てくるよう……でも……下が、下がビッショビショだよぉ!あはははははははははははは!」


連続し続ける筋の通らない訳の分からない合同にCLAWのクルーたちはただひたすらに困惑するしかない。


動揺して周りの音が一旦シャットアウトするとひたすらにキーンという音と心臓の鼓動音だけがこだまし続けた状態で立ち尽くすエマだったが、そんなエマにタイラーは「しっかりしてください警部!」と喝を入れた。


「警部!警部!しっかりしてください!アルテサーノは責任をもって我々が本部に運びます!下の階に降りたら警部は速くメディカルセンターと小学校に急いでください!アレックスさんとリタちゃんが無事か確かめて!」


「ああ……?ああ……そうだな、クソ、待ってろアレックス……リタ……!センチュリオン!お前が一番力持ちだろう?アルテサーノを押さえつけろ!」


エマがそう指示するとタイラーが手錠をかけたアルテサーノをがっちりと拘束して抱えた。


そしてCLAWのクルーたちはエマとタイラーで二手に分かれてエスカレーターで下階へと下っていった。


「タイラーさん……とんでもないことになっちゃいましたね……」


「あぁ……まさか、生きてるうちにこんな規模のテロがアニマルシティで起きるなんて……それにあんなに取り乱した警部を見るのは初めてだ……〝警部は罪を憎んで人を憎まず〟が基本で、どんな凶悪殺人を起こした相手でも私怨で殴ったりしたことは一度だってなかったんだ……クソ、アルテサーノめ、一体何を考えているんだ!奴は狂っているとしか言いようがない!いや、狂うなんて言葉じゃもう言語化することができない!ルース、逃げ出したいなら逃げてもいい。国家転覆に大規模テロは私だって経験したことが無い。」


「いえ……私はタイラーさんに命を救われたからこの場所にいます。タイラーさんと一緒に入れるなら命を失ったって構わない。その覚悟があります。だから、〝逃げてもいい〟なんて弱音を吐かないで私を信じてください。」


「おっ、いっちょ前にいいこと言うじゃないか人食いウサギ。私だってそうだぜ相棒。明らかに激ヤバな状況だが……私たちが動かないとどうにもならない命があるしな。」


「正直僕だってすっごい怖いよ。ナギサに会えなくなることが怖い。でも、やれることはやらないとダメだと思う。」


そう話しているとエレベーターの自動ドアが開いた。アンジーがライフルを構えて出ようとすると、そのバレルを知覚したのか外から銃撃がCLAWのクルーたちを襲っていった。


「クソ、撃ってきやがった!見えない、撃ってきている奴らは!?」


「ああ、マジかよ、ありゃあ事前に待機してた私服警官たちだ!あいつら裏切りやがった!アンパサンド・ワン、こちらアンパサンド・ツー!私服警官たちがこっちに向かって撃ちまくってる!指示をください!」


センチュリオンにがっしりと拘束されているアルテサーノはひたすらに爆笑していた。


「あははははははははは!見てよ、金があれば警察官って買収できちゃうんだよね!一千万ドルチラつかせたら直ぐにああなっちゃった!」


「……仕方ない。それならこっちだって手がある……ルフィナとニーナはアルテサーノを拘束!センチュリオン、ぶちかませ!」


センチュリオンはのっそのっそと縛り上げたアルテサーノをルフィナとニーナに渡すと、スリングで背負っていたPKM機関銃のボルトを動かし、被弾を恐れずに前に出るとフルオート射撃で標的を撃ちまくっていった。


けたたましい七・六二×五四ミリ・リムド弾が発する轟音はエマたちの聴力を脅かすほどであった。


そしてその射撃精度は圧倒的で銃弾は裏切り者の私服警官たちの肉体を一瞬の内にまるでボロ雑巾が如く変質させていく。


なにより恐ろしいのはその射撃が腰だめ撃ちであるにも関わらず非常に正確なことで、一発として弾薬を無駄にしていない完璧な銃撃であるとエマは心の中で形容せざるを得なかった。


そうして永遠にも一瞬にも思えるマシンガンのフルオート射撃を終えた後、センチュリオンは空になったPKM機関銃のボルトを動かすと、フィードカバーを開いてベルトリンクを手で払った次の瞬間、まだ生きていた警官の一人が銃撃をしようとすると、センチュリオンは防弾ベストに携帯していたスタナグマガジンを一本取り出して投げると、その警官の頭蓋骨にクリーンヒットしてめり込むと、そのままその裏切り者の警官は脳を破壊されて絶命した。


「よし……流石だセンチュリオン!」とエマが声をかけると、センチュリオンは即座にサムズアップして再装填を再開した。


「あーあ。そっちもジョーカー持ってたんだ。ちくしょ~やられたなあ!でも、そうじゃないと面白くない。ゲームオーバーが近づかないとゲームは面白くないもん。」


「貴女の目論見は絶対に叶うことはありませんわ。早くこっちに来なさいこの化け物!エマさん、コイツのことは私たちに任せて早くご家族のもとへ!」


「ああ、恩に着る!」


エマはそういってグランドタワー近くにある路地に停めた日産・スカイラインの400Rのアクセルを全開にすると、パトランプを付けてサイレンを鳴らしながら運転し始めた。


前にシバサンがスカイラインを勝手に400Rにしたことに少し疑問を感じていたが、今回ばかりはシバサンがこの車両を選んで本当に良かったと心の底から思った。


辺りは野次馬と渋滞が続いていたがエマは何百何千とアニマルシティをパトロールしてきた経験があるため、土地勘に頼りつつ、夫のアレックスに電話を掛けた。


「……あぁ、エマ!一体どうなってるんだ!昼休みで近くのレストランにいたから助かったけど、メディカル・センターが爆破された!辺りは大パニックで大変なことになってる!」


「無事でよかった!話している時間はないからよく聞いて!リタの学校もテロの標的になった!私はリタが無事がどうか確かめに行く!そっちももし余裕が出たら学校に来て!」


「なんてことだ……そっちに行きたいのは山々だが、こっちは負傷者が多すぎてトリアージすら終わってない!エマ、リタを頼む!」


エマは電話を切ると急いで小学校へと向かい、スカイラインを停めて自分と同じく子を心配する家族をかき分けながら、必死でリタを探した。


大声で名前を叫ぶが、その声は他の同じく子を探す親の声で掻き消されていく。


そして十分ほど経った頃に見覚えのある少女が泣いていた。


「リタ……リタ……しっかりしてよぅ!」


「ああ、リタ!この子どうしたの?」


「リタのお母さん……リタが、リタが爆発が聞こえた瞬間に私のことを庇ったの……それでリタを見たら胸から血が……」


リタを見ると冷や汗をかいて呼吸困難に陥っていることが確認できた。


エマはリタの胸を叩くと太鼓のような音が聞こえた為、これが緊張性気胸であると確信すると、周りにいる救急救命士を呼ぶが皆対応に追われていてどうすることもできない。一大事であるためエマは仕方なくメディックポーチからゴム手袋を取り出して身に着け、腰からナイフを抜くとリタの服をめくって第四~第五肋間にナイフを突きたてた。


娘に対して治療行為とはいえナイフを向けることは流石に躊躇せざるを得ない心境であったが、このまま放置して死なせるわけには絶対にいかず、エマは力を加減しながら三センチほど突き刺して切り開くとそのままナイフの柄で筋肉層を剥離した。


すると、空気が抜ける音が聴こえた為、耳を澄ませて空気がきちんと逃げたかを確認しきると、しっかりと胸膜が開いているかを調べ、呼吸の改善を確認した後、大急ぎで周りにいる救急救命士に「アニマル市警のエマ・カストロ・マルチネス警部!この子は緊張性気胸でレッド・タグだ!応急処置はして空気を抜いたが予断を許さない!直ぐに治療を頼む!」と言って引き渡した。


リタの応急処置を終えた後、エマは人生の中で一番ドッと疲れた気分になると、その場に座り込んでアレックスの到着を待つのだった……






数時間後に容体が安定したことを確認したエマはアレックスにリタを任せると、ブルドッグウェイにある旧署へと戻っていた。


「警部!もういいんですか?リタちゃんに付きっ切りでもいいのに……」


「ああ、娘は無事だ。だが、今はアルテサーノの暴走を止めきるのが先だ!これ以上奴の好きにさせてたまるものか……それで奴は?」


「尋問室で縛って拘束してます。今のところ何も話す気はないみたいだ。時間が来たらFBIに引き渡すつもりです。来てください。」


尋問室のマジックミラー越しにアルテサーノを見ると、にやにやしてへらへらした態度を取っていた。


エマは尋問室に入るとアルテサーノの前の席へと座った。


「へへぇ、で、どうだった?家族は無事だった?」


「……無事だ。危なかったがな。」


「ざあああああああああんねんだよ……傷ついた?」


「貴様如きに傷つけられるほど私の心はヤワじゃない。」


「そっかぁ……そりゃあ残念だなあ……楽しい花火パーティはひとまず終わりっ!ニュースとか見せてくれない?どんな感じに報道されてるか見たいよぅ。」


「そんな権利お前に与えるわけないだろうが……」


「じゃあ、私を殴る?殴ってよ、ほら殴って。」


「悪いが私は拷問は趣味じゃないんでな。それで?本物の核兵器は何処に隠したんだ?」


「じゃあ拷問して吐かせてよ!私、痛いのが好きなんだよね。爪剥いたり水で溺れさせたり何してもいいからさ。切り刻んでよ、私のコト。」


「……」エマは無言で尋問室を退室した。


「全く理解不能だ……」


「ボス、なら私に任せてくれない?」といきなりニーナは話し始めた。


「ニーナ?何か手立てでもあるのか?」


「私は……ダーティワーク得意だし。人が嫌がることでも私はできる。私がルフィナと戦った時のこと覚えてるでしょ?」


「……頼んだ。」


ニーナはその辺から工具箱を取り出すとそのまま尋問室へと入った。


「あぁ、子猫ちゃん?その工具箱は何?すっごいゾクゾクして濡れてきた!そ、その錆びたペンチで私の指を潰してよ!ヤバイ、ドキドキしてきちゃった……心がときめいちゃう!焦らさないでよ、はやく、はやくぅ……」


ニーナは工具箱から小型のレンチを取り出すと、それで思い切りアルテサーノの頭を殴打した。鈍い音が辺りに響く。


「あぅ……なんで頭から殴っちゃうわけ?せっかくの痛みを感じ取れないじゃん!つまんないよ!」


「核兵器はどこだ!?どこに隠した!」


「もっと気持ちよくさせてって言ったじゃん!だから、そのペンチで私の爪をぺりぺりしてよ子猫ちゃん!」


ニーナは言われた通りに錆びたペンチを取り出した。


「いいよ。じゃあペンチで虐めてあげる。でも、指じゃない?」


「じゃあどこ?ゾクゾクしちゃうっ!」


「口を開けろ!」


ニーナはアルテサーノの顎をがっしりと掴むと、アルテサーノは自ら口をあんぐり開けた。ニーナは奥歯をペンチで掴むと、全力で引き抜いた。


「うお゛っ……おおおおおおお゛………あっ……」


鮮血と共に地面に綺麗な永久歯が転がり、アルテサーノを見ると股を生暖かく濡らし、顔を赤らめて口から血を垂らしながら満足そうな顔をしていた。


「イ……イっちゃったぁ……あまりにも良すぎて漏らしちゃった……ふう、子猫ちゃん、最高だね!私、貴女のことが好き!」


「は……?」


アルテサーノはニーナにずりずりと近づくと、そのまま体重で押し倒して唇を奪った。


舌をねっとりと絡ませながら、ディープキスをして唾液を交換していく。


「貴女……私と同じ匂いがする……どぶ泥で足掻き苦しんだとってもいい匂い……」と囁きながらアルテサーノはニーナの喉元を啜った。


「ニーナが危ないですわ!」というルフィナの声と共にセンチュリオンが尋問室へと入ると、そのまま首根っこを掴んでニーナから引き剥がした。


「ニーナ!大丈夫?怪我はありませんか?」


「ない……キスされただけ……」


「はぁ……よかった……」とルフィナはニーナを抱き締めた。


「へへへへ……いい思いしちゃったなぁ……そこにいるおっきな人も、良ければ私のコト殴らない?貴女の力なら私の頭なんて一瞬でぐしゃぐしゃにできちゃうかも?」


「もう彼女の精神性を理解することは不可能だな……」


すると、アミーナがFBIからの連絡を受け取ったようでエマへと取り次いだ。


「もしもし?」


「エマ警部。私です。アルテサーノを確保したと聞きましたが……」


「ああ、確保した。ウチは古い署だからセキュリティはイマイチだし、コイツを飼い殺すくらいならそちらに引き渡した方がいいと思ってな。現状核兵器の在り処は自白させられてない。」


「捕まえただけでも大手柄です。今からポイントを指定しますので、そこでFBIの移送班に引き渡してください。ニュースを見ました。国家の異常事態だ……それにCIAらしき人物から警告まで入りましたし……」


「こっちもだ……ともかく、こいつに法の裁きを食らわせる以外に今できることはない。こちらも全速力でそちらに届ける。」


「〝シバサンの運転〟なら直ぐでしょう?」


「……ああ。」と呟くとエマは連絡を切った。


「よし、みんな。アルテサーノを移送するぞ!」


エマは全員に号令を出すと再度武装を行ってグルカに集まった。


「これからFBIが指定したポイントにこのアルテサーノを届ける!全員絶対に逃がすんじゃないぞ!アメリカの危機なんだ!状況開始!シバサン、ハンドルを握ってくれ!センチュリオンはタイラーと共にシビックで来るんだ!」


全員が車へと乗り込むとパトランプを響かせながら全速力で移動を始めた。


「……ねぇ、ハローキティ好き?」


「無駄口を叩かないでください!」


「私ね、ハローキティ大好きでさ。グッズ集めてるの!せっかくアメリカに久しぶりに来たっていうのにグッズも買わせてくれないの?」


「黙ってくださいまし!」


「ハロー、キティ!こんにちわ!出来立てのポップコーンはいかが?キティはみんなの人気もの!わ・ん・ぱ・く・いじわる!起こりん坊も~キティと一緒なら!つられて優しく、なっちゃうなぁ!ハロー、キティ──」


「黙りなさい!」


「こんにちわ!出来立てのポップコーンはいかが?──」とアルテサーノが呟いた瞬間、シバサンが運転しているグルカとタイラーの運転しているシビックは横から飛び出してきた幼稚園バスにぶつかると、そのままの勢いで横転して地面を擦りながら移動した。


そして数秒間の沈黙の後、後からまた二台ほどバンがやってきて、グルカの後部ハッチをバンの中から出てきたメキシコ人の男たちが開いた。


「おお!おひさ!私、アルテサーノ!助けて助けて~!」というと、クルティードの構成員たちはナイフを取り出してクルティードの拘束を解いた。


そしてクルティードの構成員は中で倒れているニーナやルフィナを撃とうとするが、それをアルテサーノは静止する。


「待って、こいつら殺しちゃゲームが面白くなくなっちゃうじゃん。」


「はぁ……?」


「ちょっと銃を貸してくれる?」


「あぁ?はい──」


アルテサーノは銃を手渡したクルティードの構成員を躊躇なく射殺した。


「おわかり?まだ殺しちゃダメだよ~つまんないからさ。来世はちゃんと覚えてから私の部下になってね。」


そしてアルテサーノが逃げようとしたその足を掴む手があった。


「……に、逃がしませんわ……絶対に逃がしませんわ……」


「アレ?ユキヒョウちゃん?粘るねえ!凄い!偉いよ~その根性!難易度ベリーハードって感じ!」


「あなたたちみたいなやつらに……世界を好き勝手させるわけには……いきませんわ……!」


「かっこいい!すごいかっこいいよ!ヒーローだ!スーパーマンとかバットマンみたい!」


「ど……どれだけ愚弄されようとも……かまいません……わたくしは……正義を貫き──」




「じゃあ私もジョーカーごっこをしちゃおうかなっ!」




その瞬間、ルフィナの背後から十二ゲージのショットガンの銃声が聞こえると、膝の皿ごとぐしゃぐしゃにはじけ飛ぶと、足は皮膚で辛うじてくっついているだけの状態になった。


「う゛……う゛あああああああああああああああああああああ!」


そしてルフィナの背後からニヤニヤと笑いながらニーナがモスバーグのポンプを動かして排莢した。


「すぅ……はぁ……やっと清々した!最っっっっっっ高の気分!」


「どう゛し゛て゛……どう゛し゛て゛……ニ゛ー゛ナ゛ァ゛!」


「え?ナ~ニ勘違いしちゃってるワケ?この〝アルテサーノおねえちゃん〟が一千万ドルって話をした時点で腹は決まってたよーだ!さっき拷問に行ったのもわざと!音が遮断されてるから小声で意思疎通を図ってたってワケ!私に親心でもわいたつもりだった?お前に殴られた時からムカついて仕方なかったんだよぉ!ハグだって嗚咽がするほどきっしょかった!高級フレンチとか連れて行って飼えるようになったと思ったら大間違い!お前は最悪のアバズレ!おフレンチなんて全部喉に指突っ込んで吐いたよバーカ!」


ニーナはそういうと地面に落ちていた削れたアスファルトを拾い上げてルフィナの足を繋げている皮膚にかけると、そのまま踏みつけた。


「ん゛ぅ゛ぅ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛!」


悶絶しながら嘔吐するルフィナの声を聴きながらニーナはうっとりとした表情をした。


「それにぃ、さっきキスした時にアルテサーノおねえちゃんにときめいちゃった……私、おねえちゃんみたいに危険な人だーいすき!心のそこから好きになっちゃった……」というとアルテサーノの頬にチューをすると、愛おしそうに胸を人差し指でなぞった。


「ねえねえ、おねえちゃん!コイツぶっ殺してもいいかな?」


「一人ぐらいなら殺したって構わないよ。子猫ちゃん!」


「ねねねねねねねねね……脳みそぶちまけろ!──」




「させるか!」




エマがクルティードらに向かって銃撃を開始し、的確にニーナが持っていたショットガンをSR-16で撃ち抜いて破壊し、他の構成員をフルオート射撃で蹂躙した。


「あはっ、やっぱり強いなあジャガーちゃんは!じゃ、子猫ちゃん、一緒に逃げよっか!一緒にボニーとグライドならぬ……ボニーとボニーになっちゃおう!」


「うん、アルテサーノおねえちゃん!」


そういうと二人はクルティードの面々が用意したバンに乗ってアクセル全開でその場を逃げ去り、エマは急いで足を負傷したルフィナに駆け寄る。


「ルフィナ、ルフィナ!しっかりしろ、今助けてやるからな……凄く痛いだろうが、辛抱してくれ……!」


エマはターニケットを取ると太ももをきつく締めて止血し、医療用モルヒネを取り出して注射する。


「ブ……ブルーさんと……カルラに……顔向け……できませんわ……」


「自分を責めるな意識を保て!私こそ最初からニーナをしっかり見てチームから外していれば……あの時アンジーに引き金を引かせていれば!」


「わ……私は……傷ついた子一人救うことができな゛か゛っ゛た゛!警官……失格ですわ……」


涙を流すルフィナに消毒液をかけた後に手を血まみれにしながら無理矢理飛び出た内容物を皮の中に押し込むと、包帯を使ってぐるぐる巻きにした。


ルフィナは崩れ行く意識の中で学生時代にあったテロリストの惨劇で足の同じ個所を負傷したことを思い出していた。


そして視界がどんどんとぼやけていく中であの時助けてくれたスワット隊員の姿が見えた。そしてあの時助けてくれたスワット隊員がエマ・カストロ・マルチネス警部その人であると確信を持つとそのまま意識を失った。


「ルフィナ……ルフィナ!……まだ脈はあるな……おい、おい、大丈夫か!」


エマは倒れているタイラーの体を揺さぶって目を覚まさせた。


「……な……何があったんですか……」


「ニーナが裏切ってアルテサーノを逃がし、ルフィナが負傷した!早く緊急搬送しないとマズい!」


「……なんだって!?」タイラーは一気に目覚めると、あたりに使える車が無いかを探し始めた。


「それとタイラー……」


「……なんですか?」




「ブルーを……ブルーを呼び戻すんだ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ