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王子達とのお茶会は波乱の予感です 4



大広間を見せてもらった後は、パーティー当日に通る事になるであろう通路や、使う可能性のある部屋をいくつか案内してもらった。一通り見学が済んで最初の部屋に戻った頃には、その部屋を出発して1時間以上時間が経過していた。



「お疲れ様でした。お菓子と紅茶の用意が出来ていますので、こちらでゆっくりおくつろぎください。」



シュポールさんに促され、U字ソファーの端の方に腰を下ろす。私の隣にはフルール様が座った。全然良い、むしろ嬉しいんだけど…。


フラム殿下って、ランチタイムの時とか必ずと言って良いほど私の隣に座ってたよね?なのに今、彼は私の隣に来る素振りすら見せずに対面に腰を下ろした…なんで?場所が違うから?それともこれもキャラ変のせい?

てか、ランチタイムで私の隣をキープしてたのってアプローチの一環だったのかな。『フルール様との関係修復の為のクッション』って何だそれ…。かつての自分自身の思考回路のねじれ度合いに呆れ、嫌気がさす。



艶々としたチョコレートケーキが4人分運ばれてきた。ベリーのソースとクリームが添えられたそれは、美味しそうであると共に芸術品のような美しさをしている。

スエテさんが私達の前にケーキを置くと同時に、スクレさんが入れた紅茶をシュポールさんが私達の前へと運んでくださった。



「…いただきます。」



美味しそうで、今すぐ食べてしまいたい所だけど…なんか、すっごい見られてるんですが。

殿下2人もフルール様も、側近の方々も何故私を見る!?ただでさえ緊張しているのに、更にドギマギしてしまうではないですか…!



カシャーン!



思わずフォークを落としてしまった。慌てて拾おうとしゃがみ込むと、私が拾うより先にシュポールさんがそれを取り、スエテさんに新しいフォークを渡された。



「あっ…すいません、ありがとうございます。」

「お気になさらないでください。今回のように食器を落とした時は私共が対応するので、トゥシェさんは座ったままで良いのですよ。」

「いやいや、そんなの申し訳無いですよ。」



そんな上流階級みたいに汚れ仕事を使用人の方に任せるのは、私の性にはあいません。大きく首を横に振ってシュポールさんの言葉を否定するも、シュポールさんも譲る気はないようで。やりますやらなくて良いですを数回言い合い、最終的にシュポールさんの「わかりました、今回はあなたの意見を聞き入れましょう」という納得してなさそうな言葉でやり取りを締めくくった。



気を取り直して…私は緊張しながらも、今度はちゃんとフォークを落とさずにケーキを一口大に切り、それにベリーソースをつけて口に運び込んだ。




「……っっ!!」



口の中で、表面の薄いチョコレートがパリパリと柔く崩れる。少し硬いそれと、しっとり重厚なチョコレート風味のスポンジ、挟まれている砕かれたアーモンドの織りなす様々な口当たりが楽しい!そしてベリーソースをつける事で甘くなり過ぎずほのかに酸味が加わって、濃厚なのに後味がしつこく無い。



「…めちゃくちゃ美味しいです!高級感漂い過ぎて私には不釣り合いなのに、こんな美味しいケーキを用意してくださるなんて…!!」




テンション上がって思わず笑顔が溢れる。ほっぺたが落ちるんじゃないかと心配になって両手を自らの頬に当てた。



「…良かったですわ、それでこそトゥシェさんです。」

「え?」



隣のフルール様がとても嬉しそうな、ホッとしたようにも見える表情をしている。…もしかして、硬くなって緊張してたのを見透かされて心配かけてました?うわー申し訳ない!

気のせいかもだけど、あたりを見回すとフルール様以外のほとんどの人も表情が和らいでいた。全員私に注目していたのは、緊張してる私がちゃんとケーキを美味しく食べられるのかを確認したかったからでしょうか。意図はどうであれ、空気が柔らかくなった感じがしてちょっと安心した。



しばらく両手を顔に当てっぱなしにしていると、だんだん手のひらが熱くなってきた。ちょっと冷ましたい、ひんやりした場所があれば触りたいですなぁ…このソファー、革製だからひんやりしてたらするかな?ちょっと触ってみよう。


皆の談笑に混じりながら、自らの両サイドに広がるドレスのスカートとソファーの隙間に手を入れる。そして両手をスッとソファーに押し当てた。ひんやりまではいかないけど熱は吸収してくれてる気がする。





…ーあれっ?




苦しんでる、蒼い顔で。

震え出し、息が乱れて…倒れ込んだ?


手前にあるのは食べかけのケーキと、一口飲んだかまだ口をつけていないか微妙な量の紅茶が入ったティーカップ。



…ー10秒にも満たない時間、手を冷やそうとしただけなのに視えてしまった。


どうして?私、魔法使おうなんて思ってなかったのに。

突如頭の中に流れた映像。間違いない、この私が両手で触れているこのソファーに関する過去か未来の映像だ。



どういう事?予知夢騒動の件があってから、私は適度に魔法を使ってランダムに魔法を発動しないよう努めている。今日だってフルール様と合致する前に部屋で魔法を使って、ちゃんと魔力を減らしてきたのに。

この発動の仕方はボール村にいた時と全く同じだ。流石にこんな短時間で魔力が容量オーバーになるなんて考えられない。じゃあなんで…




なんでとか言ってる場合じゃない!

この映像、ケーキや紅茶の色合い、服装に至るまで今見てる景色そのものだ。

急いで視線を向けると、私の脳内に映った人物がまさにケーキを口に運び込もうとしているところだった。




「ダメーーーッッッ!!!!」



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