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王子達とのお茶会は波乱の予感です 3



「着いたよ。この扉の奥が、卒業パーティーでも使用する城の大広間だ。」



目の前には今まで横目に見てきたどの扉よりも大きな扉。フラム殿下は重厚感の漂うそれを、ギィとゆっくり開いてみせた。



…広っっ!!



どこまでも高い天井。端のほうは部分的にガラス張りになっており、日の光が柔く入ってくる。中心付近には無数に煌めくシャンデリア。小さく見えるけど、きっと近くで見たらなかなかのサイズなんだろうな。

高さも勿論高いけど横?床の面積?もかなり広い。昔通ってた高校の体育館何個分だ…?こんなに広いのに、どのあたりを見ても床がキラキラしている。ワックスかけるのにかかる時間は途方もないと思うけど、しっかり手入れされてるって事か。


壁を見ると、劇場でいうところのボックス席のようなスペースが連なっている部分があった。お偉い方が視察したりする時に使うのかな?ボックス壁と垂直の角度の奥の方に、椅子が置かれた高くなっている部分を発見。ももももしかして、いわゆる『玉座』ってやつ…!?



あまりの異空間さ、ファンタジーさに大興奮していると笑い声が聞こえてきた。我にかえって殿下達を見ると全員笑ってる…私また、変な顔でもしてましたか!?



「それだけいい反応をしてもらえると、連れてきた甲斐があります。」



口角を上げて言うフリュ殿下。恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが同時に込み上げる。



彼は兄のフラム殿下と違って、私への態度に変化が無い。見るからにキャラ変している兄と、いつも通りの弟。ここまで違うと、フリュ殿下は本当に私と最後のダンスを踊りたいと思っているのかますますわからなくなる。ただでさえ、彼の誘い方は他の人と違う雰囲気だったんだもん。


物静かでクールな印象のフリュ殿下。口数は少ないけど、城下の人々とのやり取りから優しい彼の本質は何となく見えている。歳下なのに私よりしっかりしてて、話していると心が安らぐ。一見ヴァン先生とタイプが似ているけど、フリュ殿下は同年代だからか親近感が湧いて等身大で話が出来るんだよね。



だからこそ、あの日のフリュ殿下の提案がどうしてもしっくりこない。あなたが私と踊りたい理由は何?…それがわからないと、あなたに返事が出来ない気がしている。聞いたらちゃんと、教えてくれるのかな…?



フリュ殿下に視線を向けてみるけど、彼は私を見ていなかった。目が合わなかった事にどこか安心する。

するとその時、誰かに手を掴まれグイッと引き寄せられた。




「広間の中央まで行ってみようか。」

「えっ、ちょ、フラム殿下!?」



現在大広場にいるのは私達4人だけでは無い。この部屋に入った時点で、明日のパーティーの装飾をしたりテーブルを運ぶ多くの使用人の方達がいて、彼等の作業の傍ら大広場を見せてもらっている状況なのです。

けれど、フラム殿下はそんなのお構いなしに私の手を引き、ずんずん作業する使用人の合間を縫って進んでいく。王太子相手だから皆道をあけてくれてるけど、こんなことしたら作業の邪魔になりませんかぁあ!?


殿下の足がやっと停止した、この辺がこの大広場のど真ん中って事?もう広すぎて、本当の中心なのか私にはさっぱり。



…着いたんですけど。あの、手、繋いだままなんですけど。



「…殿下、あの」

「卒業パーティーのダンスは、この広間の中央の空間で踊る事になっている。」



背中を見せていた彼が振り返る。手は離してくれない。

人が沢山いるとはいえど、今この近くで作業している人はいない。フルール様とフリュ殿下を入ってきた扉の近くに置いてきてしまったので、今ここにいるのはフラム殿下と私の2人だけみたいな状況だ。



このシチュエーションでダンスの話題…えっ今返事しろって事?

待って待って、聞かれる可能性は考えてたけどそれでも私は誰と踊るか決めれていないんです!!



「トゥシェ。」

「っっ!」



続く言葉を予測して、思わずぎゅっと目を閉じる。ええいこうなったら正直に言うしかない、『あなたと踊りたいのかわかりません』…って!!





「…ー明日の夜、この場所で君と踊る事を楽しみにしているよ。」




……。




「…えっ?」

「戻ろうか、アイツら置いてきちゃったし。」

「えっ、いやあの、ちょっと待って…。」

「だいぶ待たせてるもんな、早歩きするから遅れるなよ。」

「いやだから違…っっ」



困惑していると、急に私の手を引く彼の手の握る力が強まった。一瞬その背中からとてつもなく冷たいオーラを感じ、思わず私は口を閉ざす。顔だけ振り返ったフラム殿下は、人形のように整った笑顔で「ドレス慣れてないのに無茶させてごめん。」とだけ言い、早歩きを再開した。

再び使用人の隙間を縫って扉の入り口に戻ったけど、殿下は手を離してくれそうになくて。フルール様に諭され、ようやく彼は私の手を解放した。


婚約者のこんな行動を目の当たりにして、フルール様はどう思ったかな…怖くて聞けないや。




さっきのフラム殿下の言葉…まるで、私が彼とダンスを踊るのは決定事項であるような言い方だった。私は誘いに対してYESもNOも伝えて無いのに…そんなに自分を選んでもらえる自信があるって事?あの夜は自信なんてこれっぽっちも感じさせなかったのに?何が彼をああ言わせたの?私、誘いに了承した風な言動どこかでとったっけ?



わからない。



わからないけど、話題を掘り返したら自分の首を絞めかねない。そのリスクを背負ってまで再確認する勇気がない。

大広間への道のりでは罪悪感を隠したけど、戻る道では困惑した気持ちを隠して会話をした。



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