王子達とのお茶会は波乱の予感です 2
部屋の中には大きな赤いU字ソファーがローテーブルを囲うように配置されていた。端の方にフリュ殿下が座っていて、フラム殿下はフリュ殿下から離れた壁にもたれて立っている。シュポールさんがドアを閉め、私達が少し進み近寄ると、2人は背筋を伸ばしてきちんと立ち上がった。
「ご機嫌よう、フラム様、フリュ様。本日はお招きありがとうございます。」
「あっ…ありがとうございます。」
フルール様がとった淑女の礼を見様見真似でやると、彼等からも整った礼を返された。2人が近づいて来る。私は両殿下を交互に見つつ背中に伝う冷や汗を感じていた。なんせ彼等と会うのはあの日ぶり…最後のダンスに誘われたあの時ぶりなんですもの。もし、今日どこかのタイミングで返事を聞かれたらどうしよう…なんて答えよう?
そう、あれから1週間経ったにも関わらず、私はいまだに自分の本心を掴みきれずにいた。
フラム殿下が私の正面で立ち止まる。そして、上から下までじぃーっと凝視し始めた。
えっ…いきなり返事聞いてくる感じですか?フルール様とフリュ殿下いるのに?心の準備出来てないよ、流石に勘弁してほしいんだけど!?
…と、思ったものの予想外に声をかけてもらえない。隣で会話していたフルール様とフリュ殿下も、こちらに漂う異様な雰囲気に気付いたのか会話を止めて私達の方を見てきた。
「…あの、フラム殿下?」
割と長時間になってきた為、恐る恐る声をかけてみた。
「ああごめん、ドレスアップしたトゥシェはやっぱり綺麗だなぁって見惚れてた。」
「!?」
爽やかな笑顔でサラッと爆弾発言された…?
ねぇ、それ、フルール様の前で言っていいの!?フルール様の目が点になってるよ!?
「ちょ、何言ってるんですか。フルール様の方が、綺麗、です、よ…?」
「そうか?俺にはトゥシェの方がよっぽど綺麗にに見えるけどな。」
おいおいおい!!いくら私に好意を持っていたとしても、婚約者の前でそんな発言は許されるのかい!?
私の困惑などなんのその、フラム殿下は私の手を取り手の甲にチュッと口付けをした。様になってるな…じゃ無い、何するんですかぁぁあ!!?フルール様もフリュ殿下も、完全にフリーズしちゃてるよ!?
「…兄上も、そのような事をなさるのですね。」
ポカンとあっけに取られたようなフリュ殿下の言葉にハッとする。
以前フルール様の屋敷で私のドレスアップを見た時も、フラム殿下は私に綺麗と言ってくれた。けど顔を真っ赤にして、とても口数が少なかった。
今日の私もあの時と同じようにドレスアップをしている。綺麗と褒められたのは一緒だけど、今日の殿下はストレートに人目を気にせず、照れる素振りもなくそれを言ってくる。
…なんか、あの時とキャラ違いません?
「したいと思った事をしたまでだ、悪いか?」
「……いえ、別に。」
弟君に視線を移すフラム殿下。その視線は私に向けられていたものより冷ややかに感じられた。
「さて。」
私の方に向き直るフラム殿下はにこやか。あれっ、この人、こんなにお行儀の良いスマイルする人だったかな?
「早速だけど、今から王城内を案内しよう。ここなどんな所か、どんな雰囲気なのかトゥシェ知ってほしいからな。」
「…はい、よろしくお願いします。」
部屋の片隅では、シュポールさんとスエテさん、スクレさんが何やらやり取りをしている。側近の3人は、私達が王城をまわっている間にお茶会のセッティングをしてくれるらしい。お願いしますありがとうございますと頭を下げて、私達4人は部屋を出た。
「まずはパーティーの会場となる大広間に行こう。ここから少し歩く、疲れたら言ってくれ。」
「ありがとう、ございます…。」
…フラム殿下が優しい。
なんだろう、いい事なのに、いい事のはずなのに…なんか気持ち悪い。
今まで散々自分のペースで話しかけてきていたのに、何故今になってこんなに気を遣ってくるの!?
選んでもらいたいから…とか?優しいアピールをして、私にダンスの誘いを了承して欲しいから??
確かに、このルックスでこんだけ優しくされたら普通は恋に堕ちる。これが初対面なら私もやられてるかもしれない。
けど、あまりにも違いすぎる。私の知っているフラム殿下は、人の気なんて知らずにグイグイ攻めてきて若干自己中心的。なのに、いざと言う時に恥ずかしがったり言葉が足りないー…なんだか不器用な人。
月夜に私を抱き締めた彼の腕は小さく震えていた。私に選んで欲しくて、見て欲しくて、必死だったんだと思う…親に一生懸命に縋る幼い子供のように。
なのに私はそんな彼を振り払ってしまった。捕まる、怖いと思ってしまった。
だからなの?だから急に優しくなったの?自分を変えてまで、あなたは私に選ばれたいの?
私は…あなたが変わる事なんて望んでいないのに。
私の速度に合わせて歩くフラム殿下の優しさに罪悪感を覚えつつ、表面上は楽しみながら大広間へと進んだ。




