私ヒロインなんて柄じゃありません 6
流れるように隣の部屋とやらに案内されると、そこには10着以上はあるドレスと靴とアクセサリーと…とにかく、そういった装飾品がいっぱい並べられていた。キラキラな景色に心踊る反面、用意周到というか、なんかデジャヴ…。これ、もし断ってたらどうなってたんだろう。仮定だけどゲームの正規ルートをいったっぽいので、心の奥でホッと胸を撫で下ろした。
「さあ、まずドレスから選んでいきましょう。気にいる物が無ければ追加を持ってきますので、遠慮なく言ってくださいね。」
あーーその台詞前にも聞いたなー。トータル何着あるんだろう、怖くて聞けないけどね!
言われるままにドレスが並ぶコーナーに進み、どんなドレスを用意してくださったのかを見始める。赤、水色、緑、黄色…色鮮やかなドレスをこうやって見るのはやっぱりワクワクするな。この紫のドレスも綺麗だなぁ…でもなんだかしっくりこない。
何様だって自覚はあるけど、ここにあるドレスの中にはビビッとくる物が無かった。
…追加の分、見せてもらうのって、アリ?
言うべきか否か迷って、フルール様とドレスへ視線を行ったり来たりさせてしまう。すると彼女は私の気持ちを察したのか、別の部屋のドレスを見に行きましょうと声をかけてくれた。
「こちらへどうぞ。これだけあれば、お気に召す物がきっと見つかると思いますわ。」
「あ、ありがとうございます…。」
ドアを開けた瞬間、ポカーンとしてしまった…。だってこの部屋、さっきと比べ物にならない数のドレスがあるんだもん。いちいち数えないけど本気で数えられそうにないぞ。
余りにも数が多いので、選別の参考の為にどんなドレスが良いかなんとなくのイメージを尋ねられた。正直どんなのが良いかなんてわからない。強いて言うならお茶会で着用したピンクのドレスとは違う雰囲気の物を着てみたい、ぐらいしか思い浮かば無かった。
2人で首をひねりながらあーでも無いこーでも無いと吟味する。手間をかけてしまって申し訳無いと思う反面、一緒に考える事が楽しいと感じた。
「どうしても見つからなければ、先にアクセサリーや靴を決めてそれに合わせる方法もありますけど…。」
「なるほど!今回のパーティーは確か立食だし、お茶会の時みたいな高いヒールの靴だとしんどそうですしね。」
もっとヒールが低くて動きやすくて、ドレスと合わせても自然な靴。可能なら好きなデザインの物が理想だけど。
「…あ。」
「??」
良い事思いついた!気持ちがパッと明るくなった瞬間ひとつのドレスが視界に入る。あれだ、あのドレスなら…!
数歩進んで目に留まったドレスを近くで確認する。私に似合うかはわからないけど、間違いなく素敵なドレス。もうこれが良いとしか思えなくなった。
「フルール様決めました、このドレスにします!」
「…えっ、こちらのドレスですか…??」
彼女が驚くのも無理はない。私が選んだのは、深い瑠璃色を基調にパールっぽいキラキラが散りばめられたドレス。Aラインのふんわりしたスカートでデザイン自体は前回と似ているけど、パステルなピンクとは色の印象が全然違っている。雰囲気は大きく異なっていた。
「はい、これが良いです。お借りしても良いですか?」
「それは勿論…でも、どうしてそちらのドレスに決められたのですか?」
「…このドレスだったらあの靴にぴったりだと思って。」
「あの靴?」
あ、これはフルール様わかってないな。私はドレスを自分に当てがいながらにこやかに答えた。
「フルール様がプレゼントしてくださった靴です、瑠璃色の石がアクセントの白のパンプス。あれなら立ちっぱなしのパーティーでも耐えられそうだし、ドレスと合わせても似合います!」
「別にあの靴を履かなくてもいいんですよ、新しい靴はいくらでも用意出来ますわ。」
「あの靴が良いんです。フルール様から貰った大切な物だから、大切な日にはあれを履きたい。そう思った瞬間このドレスを見つけたんです。これはもう、これ着てそれ履けって事でしょ!!」
驚きの表情を浮かべていたフルール様は、私の熱い語りを聞くうちに大変美しい笑顔になっていった。ドヤ顔を見せた途端クスッと笑われる。
「本当に、あなたって人は…。」
私に近づくフルール様。ドレスの一部を持って、私の顔の横に並べてみせた。
「わかりました、こちらのドレスにしましょう。トゥシェさんの瞳と同じ星空の色…とてもお似合いです。」
「!?」
えっなに今の口説き文句、どこで習ったの!?
嬉しいやら恥ずかしいやらで一気に顔が熱くなった。
ドレスと靴が決まったので、元々いた部屋に戻ることにした。そこで当日付けるアクセサリーや、メイクやヘアスタイルについて相談する。ある程度決まったのでそろそろお開きにしようかと話していると外からドアがノックされ、失礼しますと言いながらメイドさんが部屋に入ってきた。
「ご歓談中に申し訳ございません。お嬢様宛に王城から手紙が届いたので、急いでお渡ししたく参りました。」
「ありがとう、王城から?一体どんな要件かしら。」
メイドさんから手紙を受け取り封筒を開けるフルール様。中の文章を読み進めていくうちに、彼女の表情は困惑の色を示し始めた。
「…何が書いてあったんですか?私聞いても大丈夫なやつですか?」
「大丈夫…というより、トゥシェさんには聞いていただかなければいけませんわ。実は…。」




