私ヒロインなんて柄じゃありません 5
3日後。すっかり体調が戻った私は、久しぶりにフルール様のお屋敷にお邪魔させてもらった。サラ様やスクレさんに先日迷惑をかけてしまった事を謝罪するとともに、またお世話になります!と頭を下げる。2人とも気にしないで良いと言ってくれました、優しい。
ダンスレッスンが始まると、明らかに上達しているらしい私を見てサラ様は大変感激してくださった。「自主練の成果ですかね!」って明るく返したけど、その詳細を掘り起こして話したくは無いので話が深掘りされる前に話題をシフトチェンジした。
数時間程みっっっちりしごかれてレッスンは終了!予想はしてたけどかなりクタクタです。
前と同じ様に汗を拭って身なりを整えたけど、時刻は現在15時過ぎ。前回の様に流れで晩ご飯〜とはならない。代わりといっては何だけど、私とフルール様が着替え終わって案内された部屋には美味しそうなケーキ等が置かれたアフタヌーンティーセットが置いてあった。
「沢山動いてお腹も空いたでしょう?ひと休みしましょう♪」
「はい!」
促されるまま椅子に座り、いただきますと言ってから紅茶を一口。華やかなのにしつこく無い飲みやすい紅茶だ。えーっとまず何食べよう…このゼリーにしようかな、フルール様の瞳みたいなキラキラの黄緑、マスカット味かな?
なんて思いながらスプーンですくってぱくり。…あれ、これマスカットじゃない?
「…メロン?」
「そうです…もしかして、メロンは苦手でしたか?」
私が困惑の表情を浮かべたせいかフルール様がオロオロし始めた。
「いやまさかそんな訳ありませんよ!ただ、メロン食べたのいつぶりだろうって感じなので。」
少なくとも今世では食べた記憶が無い。前世でも高級品だったので、一般庶民だった私は数回しか食べたことが無かったと思う。食べ進めていると果肉を見つけた。恐る恐る口に入れると、なんというか…高級なみずみずしい感じがした。
「美味しい!」
「良かったですわ。」
気に入った事が伝わったようで、フルール様も笑顔を見せてくれた。ゼリーの他にもマカロンやら、小さいケーキが数種類用意されていてどれも絶品だった。
お菓子を食べきり、紅茶を飲んでまったりする。カップの中身が少なくなったフルール様がおかわりを断って、新たな話題を切り出してきた。
「トゥシェさんは、卒業パーティーに着ていくドレスは決まっているのですか?」
「やっぱりパーティーだからドレスコードなんですね…当然のように決まっておりません…。」
一応クローゼットにドレスはあるけど、他のことで頭がいっぱいで当日どれを着るかなんて微塵も考えていないのが現状です。いやーまいったな、なんて言いながら苦笑いしてみせる。それを見たフルール様に「そんな気がしていました。」と言われた。予想の範囲内かーい!
彼女は残りの紅茶を飲み干して言葉を続ける。
「そこで私から提案なのですが、卒業パーティーでトゥシェさんが着用するドレスやヘアセット、メイクなど…以前お茶会でさせて頂いた時のように、今回も私にお手伝いさせては貰えませんか?」
なんと!?
「良いんですか?1回ならまだしも2回だなんて、流石に図々しすぎません?」
「そんなことありませんわ、私がそうしたいんですもの。前回ドレスアップをした時のトゥシェさん、とてもお綺麗でした。なので今回も!あなたが美しくなるお手伝いは私がさせて頂きたいのです!!」
あ、圧が凄い。私としては大変有難いお話で断る理由が見当たらないけど、本当に良いんでしょうか。
…待てよ、おそらくフルール様はこの乙女ゲームの主要キャラ。これも何かイベントに繋がる可能性が…?ここでYESと答えるかNOと答えるかで、今後の展開変わったりしない?
目の前には、お目目をキラキラさせながら私の返事を待つ大変可愛らしいフルール様。あーときめく。変な憶測で彼女の提案を断ってこの愛らしさを曇らせたく無い。
…ええいもう展開とか知らん、今の気持ちに素直なお返事をしようではないか!なるようになれ!!
「…ありがとうございます、ぜひお願いします!」
「良かった、良いお返事をいただけて嬉しいですわ!では早速隣の部屋に行きましょう、既に物は見繕ってありますの。」
「なんだって!?」




