私ヒロインなんて柄じゃありません 3
押し込まれた場所にボーっと立っていると、割とすぐにノックの音がしてフルール様と寮母さんが入ってきた。寮母さんに状況を聞かれ、顔色を確認され…そして「今日は休みなさい。」そう言われた。
学園への連絡は寮母さんがするのが通例らしいけど、
「私は今から登校するので、先生方には私から伝えておきますわ。トゥシェさんをよろしくお願い致します。」
こう言ってくださったフルール様にお願いする事にした。寮母さんは慣れた手つきで病人用の水分や冷たい枕を準備している。この世界には治癒魔法とか聖女っていう概念が無いから、病気になっても前世同様に冷やすとか薬とかで対応する事になっている。あったらあったで便利な能力だとは思うけど、聖女関連って争い起きやすいイメージだし無くてよかったのかも…?
とか考えている間にベッドの近くに病人用セットみたいなのが整えられていて、私は寮母さんに渡された熱覚ましの薬を飲み込んだ。に、苦い。
時折汗を拭きながらしっかり水分を取るように私に言った寮母さんは、また見にくると言葉を残して部屋から出て行った。渡された寝衣に着替えてベッドに潜り込む。熱のせいか薬のせいか、その途端、不足を極めていた睡眠を補うような猛烈な睡魔に襲われて、ようやく私は眠る事が出来た。
爆睡から目が覚めると朝より身体が軽くなっていた。どのくらい寝ていたんだろう、と時計を見ると、時刻は午後の2時を過ぎた頃。ざっくり計算して6時間は寝たな…てかめっちゃ汗かいてる、着替えよう。
おそらく薬を飲んで休んだから、いっぱい汗かいて熱が下がったんだろうな。枕もぬるくなってる。あ、水分も取らなくちゃね!
汗を拭って着替え飲み物を飲んでいると、コンコンとドアを叩く音がした。入って来たのは寮母さん、私の顔色を見るなりホッと安心する様な表情になった。
「目が覚めたのね。よく寝ていたから熱も下がったのかしら、朝より顔色が良くなってるわ。」
「はい、おかげさまでだいぶ楽になりました。いろいろと用意してくださってありがとうございます。」
「良いのよ気にしないで、むしろ今までよく寝込まずに頑張ったと思うわ。何か食べられそう?」
「はい!なんかお腹すいてきました!」
「おっけー、食べやすいもの作って欲しいってカフェにお願いして来るわね。」
ぬるくなった枕を新しい物と交換して部屋を後にした寮母さん。私は再び横になって、食べ物が届くのをのんびり待つ事にした。
寝不足が続いて心労も酷かったけど、まさか本当に熱を出すとは…。多分、メンタルがやられてる上に寝てないせいで体力が落ちた状態で、寒い夜中に薄着で長時間外にいたのがトドメになったんだと思う。だから気づいた時点で帰りたかったのに…。
学園は休みたく無かったし、休むのは良くないだと思っていた。けど、偶然?とはいえこのタイミングで体調を崩し、堂々と休めたのはラッキーで正直有難い!駄目な思考回路じゃん…。
これで今日はフラム殿下達に会う事は無いだろうし、明日以降もしばらく会わないから、返事を先延ばしに出来る。
…いや待て。先延ばしは先延ばしでも、次に皆さんに会うのってパーティー当日なのでは…?
そんなギリギリまで返事保留しちゃって良いの!?流石に失礼すぎじゃ無い!?いやでもまず、それまでに私自身も誰と踊るか決められるんでしょうか…頭痛い…。
色んな意味で始まった頭痛に頭を抱えていると、寮母さんがリゾットを持ってきてくれた。私の様子にまた心配されたけど、リゾットが優しく美味しく私を包んでくれて、頭痛が和らいだ気がした。
そこから寝たり起きたりを繰り返す事数時間。ドアがノックされ、寮母さんに連れられてフルール様がやって来た。
「トゥシェさん!あれから少しは楽になりましたか?」
「ぐっすり寝たので一応は…朝だけじゃ無くて、放課後まで来て頂いてすいません。」
「何も気にする事はありませんわ、私が勝手に心配になって来ただけですので。」
しばらく話が出来そうか尋ねられる。頷いて肯定すると、寮母さんがどこからかフルール様に椅子を持ってきてくれた。そして寮母さんは退室し、部屋には私とフルール様の2人だけ。本来なら今日を最後に次の登校は卒業式典の日だった事もあり、彼女は色々と渡されたプリント類を私の分も預かってきてくれたらしい。感謝を伝える傍らで、前世で小中学生の時に休んだ時と同じ感じだなぁ〜、なんて思った。




