私ヒロインなんて柄じゃありません 2
…どれくらいの時間が経過したのでしょうか。
最適解が微塵も浮かばず頭を抱えているうちに、窓の方から日の光が差し込んできました。うん、2日連続で眠れなかった!この晩に至っては本当に一睡もしていない。疲労感がやばいし、心なしかさっきから寒気もする。
カフェが開くまであとどのくらい?いやでも食欲無いな、朝ごはん抜くか。
登校までの残りの時間だけうたた寝〜なんて器用な事、私には出来ないだろう。答えを出すのは諦めて、顔を洗おうと椅子から立ち上がった。
あれ、なんか身体が重い?洗面所が遠く感じる。やっと着いた洗面所の鏡に映る自分の顔が心無しかしんどそうに見えた。寝不足がたたってるからだろうな…今日が終われば卒業式の日まで自由登校になるのに、この感じだと学年最後の授業で寝落ちをかましてしまいそう。気合を入れねば。
やっとの思いで顔を洗って歯を磨く。制服に着替える為に寝衣を脱いだ時、寒気に拍車がかかった。えっ、この建物って温度コントロールしてくれてるんだよね?もしかしてどこかぶっ壊れた!?
着替え完了、髪もいつも通りのポニーテール出来ました!時計を見ると、思ってたより時間が経っていた。
なんか今日体調微妙だし歩く速度スローになりそうだから、ちょっと早いけどそろそろ学園行こうかな。
……。
行、き、に、く、い!!!!
まず教室に行く、それは問題無い。でも予鈴が鳴ればそこにヴァン先生がやって来る。昨日は意味ありげなワードを遠くから言われただけでそれ以上何も無かったけど、今日もそうとは限らない。万が一何か理由をつけて呼び出されたりしたら…無視する訳にはいかん!けど気まずい!!
午前の授業が終了して、ランチを食べて…その後も超憂鬱。午後の時間は、オルロージュ先輩と数時間2人きり…うん無理。先輩が私を恋愛的な意味で好きな事を知ってしまった今、前と同じように話せる自信がない。向こうがどんな態度でくるかも不明だけど、今まで通りって訳にはいかない気がする。
授業はサボりたく無い。でも真面目に出席すればこの2人と確実に合わねばならない。
仮に先生と先輩とのやり取りをうまくあしらえたとしてもそこで終わり!とはいかない可能性が残っている。
学園は無駄に広い。だから大丈夫だとは思ってるけど、登校する以上どこかでフリュ殿下やフラム殿下とバッタリする確率も十分ある訳でして…。特にフラム殿下!全然見かけなかった筈なのに、何故か昨日のフリュ殿下とのやり取りを知ってたし、どこかで見張られてたって事もあり得る…こわっ!
学園行きたくないよぉ〜、でもサボるのは申し訳ないし心苦しいよぉ〜。鞄を持ったは良いものの、どうにも足が動かない。
駄目駄目、逃げるな私…!意を決して足を動かし、出入り口のドアノブに手をかけた。
ガチャ!!
どん!!
「!?!?」
勇気を振り絞って出した1歩は、部屋を出てすぐぶつかった何かに弾かれてバランスを崩してしまった。そしてそのまま後方に尻餅をつく私。いてて…って、何に衝突したの!?私を倒したものの正体を確認しようと目を開けたと同時に、聞き慣れた綺麗な声が耳に入ってきた。
「大丈夫ですか!?すいません、ノックをしても反応が無かったので勝手にドアを開けてしまいました…トゥシェさんの妨げになるつもりは無かったんですの!」
「フルール様!?どうして…?」
顔を上げると、そこにあったのは心配そうに私を見てオロオロするフルール様の姿だった。ここ、教室じゃ無いよね?なんで彼女がこんな所に…?
「昨日の放課後は私の屋敷に一緒に行く予定だったでしょう?けれどトゥシェさんは、私との待ち合わせに来なかったじゃありませんか。おかしいと思って時の魔法の実技部屋に行ってもあなたはいないし、オルロージュ様に尋ねたら『トゥシェちゃんは早退したよ』なんて言われるし…昨日も体調が優れない様子だったので、悪化されたのでは無いかと心配になったんです。」
そう言えば昨日からサラ様のダンスレッスン復帰する予定だったな。それどころじゃ無くなってすっかり頭から抜けてたわ、ごめんなさい。
「本当は昨日のうちに様子を伺おうと思ったんですけれど、もし本当に体調不良なら確認と称してお邪魔するのも申し訳ないと思ったのです。ですので1日休んで回復されているか、もしくは無理をされていないかを知りたくて、図々しくもお迎えに来てしまったのですわ…迷惑だったでしょうか?」
潤んだ大きな瞳で問いかけられる。迷惑?そんな事あるもんか。むしろ私が約束ドタキャンした形なのに、ここまで心配かけてしまって本当に申し訳ないです…。
「迷惑だなんて…迎えに来て頂くなんて、私の方が迷惑かけてますよ。ごめんなさい、ありがとうございます。」
謝罪と感謝を伝え、ニコッと笑って見せる。これ以上彼女に心配かけたく無い、そう思いゆっくりと立ち上がった。顔を見合わせると、フルール様は驚いたような表情をした。
「トゥシェさん、なんだか顔が赤いですわ。」
「そうですか?…そう言えば、さっきまでしてた寒気消えたな。むしろ今は暑いくらい…。」
不思議に思っていると、フルール様が「失礼します」と言いながら私の額に触れてきた。ひんやりとしていてなんだか心地良い。しかし、緩んだ表情をした私とは裏腹に、フルール様は大変驚いている様子だった。
「!?すごい熱です!体調不良、治ってないじゃありませんか!!」
「…え、熱?」
身体は重いし、全体的にだるい感覚はあるけど…熱??
実感が湧かなくてキョトンとしてしまう。対してフルール様はめちゃくちゃ慌てだした。
「なんて事でしょう!このような状態で学園になんて行かせられませんわ!とりあえずベッドに横になってください、ああ着替えも…私は寮母さんを呼んできますから、トゥシェさんは部屋の中に戻っていてくださいね!?」
強制的に室内に押し込まれ、バタンとドアを閉められた。




