私ヒロインなんて柄じゃありません 1
私は乙女ゲームのヒロインに転生したー…。
魔法のある世界で稀有な能力を持つ平民、学園長に見込まれて貴族だらけの学園に特例で編入する。…うん、元の設定?からしても、考えれば考える程そうとしか思えなくなってきた。それにしても、前世の私は転生モノの小説が好きだったのにどうして今まで気づかなかったんだろう。
床に座り込んでお尻が痛くなってきたので、重い腰を上げてベッドまで移動する。横になってみたけどなんだかしっくりこなくて、灯りをつけて椅子に座る事にした。
何故今まで気づかなかったのか。何故今気づいたのか。ノートのページを1枚千切って書き起こせる態勢を整えてから、読んだ事のある数多の小説の設定を記憶の奥底から必死に掘り起こす作業を開始した。
その1、婚約破棄されたかと思えば別の運命の出会いがあるパターン。
王道中の王道、それがいいっ!この場合主人公は、ヒロインをいびって悪役令嬢としての仕事を全うしたエンディング直前に前世を思い出す。抗えない運命を受け入れた途端、次の出会いが待っているなんて…素敵!
その2、婚約破棄に奔走するけど結局くっつくパターン。
これも割と多い。こっちの場合はゲーム本編が始まる前の時間軸で前世を思い出す。婚約破棄したい理由は、悪役を全うしますのであなたはお幸せに〜だったり、平穏に暮らしたい〜だったり様々。婚約者は遅れて登場するヒロインに惚れなくて、最終主人公と両想いになる。これもいいよね!
その3、婚約者がいないパターン。
悪役令嬢=攻略対象の婚約者とは限らない、勝手にしゃしゃりでるパターンね。これもゲーム開始前に前世を思い出す事が多くて、だいたい保身の為に攻略対象と関わらない行動に出る…けど巻き込まれちゃう。前述2つはヒロインの性格悪い率が高めだけど、このパターンはそうとは限らない。そして主人公がヒロインの役を取ってしまう流れになる。
…悪役令嬢ばっかじゃん!!確かに悪役令嬢の物語好きだったけど、今求めてるモノとはなんか違うぞ!!ヒロインに転生したパターンの小説を思い出すんだ!!
えっと…悪役令嬢モノに比べたら読んだ数は少ないけど、なんとなーくだったら覚えてる。
確かヒロイン転生系もゲーム開始前の時間軸で前世を思い出すんだよね。で、高確率で主人公の前世はゲーム制作に関わってた。だからこそ、これから始まるゲームのバッドエンドへの多さや分岐を把握してて、地雷避けながら生きていく…的な?
ここまで書き起こした文章を読み返した。だいたいこんなもんか…?
繰り返し読む。角度を変えて何度も読む。この中に、今の私が求める答えへの糸口があるはず!…あれ、何の答えを求めてたんだっけ。
そうだ!私はどうして自分が乙女ゲームのヒロインに転生したのか気づけなかったか、だ!
乙女ゲーム…。
「…私、前世で乙女ゲームやってない!!!!」
…そう、前世の私は陰キャのぼっちで、異世界転生小説は読み耽ってたけど、乙女ゲームという世界には手を出していなかったのだ。
そりゃ気づかんわ!前世の私がこの世界を知らないんだもん、いくら昔から記憶があったとしても、前の人生で知り得なかった知識を思い出せる筈が無い。至極単純な答えだった。
「乙女ゲーム、やっとけば良かったかな…。」
今更悔いてもどうしようも無い、次に移ろう。
元の設定の知識がからっきしなのでこの仮説が正しいのか不明だけど、ここは何かの乙女ゲームの世界という話で進めよう。おそらくだけど、ゲーム本編のスタートは私がこの学園に編入してきた日。美男美女が多い中で特に際立っていた人物は5人。
フラム殿下、フリュ殿下、オルロージュ先輩、ヴァン先生、そしてフルール様。
フルール様は女性だけど、フラム殿下の婚約者で主要キャラだから目立ってたのかな。
現時点で、今述べた男性4人全員が私を卒業パーティーの最後のダンスに誘っている。あらゆる小説で読んだパターンから考えて、この卒業パーティーは間違いなくイベント!つまりこの4人がゲーム内の攻略対象で、誰を選ぶかでストーリーが大きく変わる可能性が…!もしくはこれがエンディングってパターンもあり得る。その場合、パーティー済んだらゲームやってても知らない世界に突入するのかな?
…とにかく。
ここでゲームの時間軸が続くにしろ終わるにしろ、卒業パーティーは間違いなく重要になってくる。くるんだけど、
ここでもし、ヒロインが誰の手も取らなかったら?誰とも結ばれなかったら物語は…私は一体どうなるの?やっぱり誰かを選ばないといけないの?私は…誰と踊るべき?
「…教えてよラン。私、どうすれば良いの?」
無意識のうちに口から溢れた幼馴染の名前。そうだラン…ランドルは、この世界ではどんな立ち位置になるんだろう。ランも攻略対象?でも私が彼と過ごした時間は、多分ゲームの時間軸じゃ無い。本編に入った今のやり取りは文通オンリーだ。
もし、ランが学園に居たら。
ランが他の攻略対象のように、私を最後のダンスに誘ってくれたなら…答えは出るのだろうか。
「たられば言っても何も変わらない、ランの事は一旦忘れよう。」
頭をぐしゃぐしゃーっと掻いて、私は今後どうすれば1番良いのかを考える事にした。
名前を呟いたせいだろか、無性に幼馴染に会いたいと思った。




