とある可能性に気づいてしまいました 8
本日2ページ更新しています、こちらは2ページ目になります。
あったかい、まずそう思った。
次にこの温もりの正体を推測し始めるもその必要は無くなった。少し前まで程よい距離から聞こえていたはずの声が、私の耳元で発せられたから。
「フリュとはあんなに話していたのに、俺と話すのはもう終わりかよ。」
「え?」
まわされている腕にグッと力がこもる。ここでようやく、今の状況を理解する事が出来た。もしかして私、フラム殿下に後ろから抱き締められているのでは…!?
自覚した途端、あったかいが熱いにチェンジした。肩まわりにあるふたつの腕は、コートを着ていても私のものより太くガッシリしている事が明らかで、背後の彼が男の人である事を物語ってくる。待て待てなんだこのシチュエーションは、何かの撮影ですか!?!?…って、フリュ殿下?
「何で今フリュ殿下が出でくるんですか…ってか何してるんですか。」
「結局お前も、フリュを選ぶのか?」
…何を言ってるの?選ぶってどういう…まさか最後のダンスの話!?いつバレたの!?
ここにきてそんな質問してくるなんてどういうつもりなんだろう。仮に私がフリュ殿下の誘いに乗ったとしても、フラム殿下には関係無いはず…だよね?
ドクドクと鼓動が早くなるのは、質問のせいなのか、抱き締められているからか。それとも、このふたつを掛け合わせて脳裏に浮かんでしまったある推測が原因か。
「…私が誰を選ぶかなんてどうでも良いでしょう?ってかそれで悩んでるんですから、追求して欲しく無い。」
「じゃあ、フリュに相談してたダンスに誘ってきた相手のどっちかを選ぶのか?」
はいこれ完全にダンスの話バレてるー!仰る通りなんだけど、肯定して深掘りされるのもキツいし無言からの無反応を貫く。
すると、ギリッと歯を食いしばるような音がしたかと思えば、まわされた腕の力が更に強まった。ちょっと痛い。
「フリュ以外のお前を狙っている奴は誰だ?オルか?それとも俺が知らない男か?駄目だ、そんな事は許さない。」
「!?許さないって、どうして」
「俺を選べよ、トゥシェ。」
…ーえ?
耳元で響く切ない声色。背中が更に密着し、そこから伝わる温度が上がる。
「選ばれたい、認めて欲しい、その為に俺は今まで必死にもがいてきた。勉強も魔法も公務も…何もかも頑張っているのに、どうして弟の方が優れているんだ。武芸の技術や人との接し方に関しては、弟だけじゃなく親友にすら劣ってー…。
でも、俺の方が先に出逢ったんだ。オルロージュよりもフリュよりも先に、俺が見つけた俺だけの太陽ー…トゥシェ。」
ふわりと柔らかい感触がする。彼のブロンドの髪が、紅潮する私の頬を掠めた。
「お願いだ、他の男なんか見ないでくれ。君にだけは俺を選んで欲しいんだ…。」
「頼む。」
そう呟く声はとても弱々しいのに、腕の力は更に強まった。まるで『逃がさない』とでも言うように。このまま連れ去られる、そんな風にさえ感じた。
痛いー…怖い。
「っ離して!!」
「!?」
突然の大声に驚いたのか、まわされている腕の力が一瞬緩む。その隙をついて腕の内を飛び出し、一目散に駆け出した。そのまま振り向かずに寮へとダッシュする。本当は追いかけてきていないか振り返って確認したいけどそれどころじゃ無い、一瞬でも速度を落として捕まれば今度は逃げられない、そう感じた。
バタン!
大急ぎで自室のドアを閉めて鍵をかける。追いかけられていたかは不明だけど、とりあえず逃げる事には成功したみたい。ドアにもたれかかり、そのままズルズルと座り込んだ。気分転換の予定が何故全力ダッシュを…てか今日何回ダッシュすんのよ…とか思いつつ、荒くなった息を整える。
それにしても、今日色々ありすぎじゃない?正確には昨日から?
ヴァン先生のダンスのお誘いに始まり、オルロージュ先輩、フリュ殿下…既にお腹いっぱいな所に、とどめと言わんばかりのさっきのフラム殿下。
こんな一気に複数のイケメンから告白っぽい言動される事ってあるの?そーゆーの、少女漫画とか小説とか、乙女ゲームの世界特有のやつなんじゃ…。
その時、あるひとつの可能性が脳裏に浮かび上がった。
それは以前に1度だけ、編入初日に考えた可能性。その時は『それ』と自分のイメージが異なり過ぎて妄想という扱いで済まし、以後は全く考えなかった私のこの世界での立ち位置。
そんな筈は無い。でも今の状況からして、そうである事は十二分に考えられた。
「私、もしかしてーー…
乙女ゲームのヒロインに転生しちゃったの!?!?」




