とある可能性に気づいてしまいました 3
ヴァン先生の言動が刺激となったのか眠気は一旦収まった為、その後の授業は起きておく事に成功した。まぁ授業っていっても、今週は試験の返却と内容の復習が主なんだけどね。
午前が終わり、フルール様とランチを食べて午後になる。お互いの午後の授業が終わったら正門横で落ち合おうと話をし、鐘の音と共に解散した。私は再び頭角を現した睡魔と戦いつつ、あくびをしながら時の魔法の実技部屋に向かった。
「トゥシェちゃん、今日はこれでやってみようか。」
室内の机上に、いくつかオルロージュ先輩の私物が並べられる。
以前、魔法の実技試験で私が狙った時間の映像を見る事に成功したと伝えた時、彼は自分の事のように喜んでくれた。そして、それがまぐれにならないよう、継続して発動して感覚を完璧に把握するべきだという話になった。
からのこれ。今週の実技の時間は、先輩の私物から過去の映像を読み取る練習をする事になった。昨日までの結果は1勝2敗…やはり簡単にはこの魔法を扱えないみたいです。
今日出された課題は薄手の手袋。先輩はこの手袋に関する昨日の20時を視るよう指示した。
「では、失礼します。」
手袋に触れて意識を集中させる。魔力の流れを両手に集め、昨日の20時を視せて欲しいと念じた。
ー…。
「…どうだった?」
「綺麗な女の人が、嬉しそうにこの手袋にラッピングしてました。」
「あー…この手袋はルーシーからプレゼントされた物だからね。彼女が俺に渡す前の映像だろう。」
「20時で包装って…プレゼント何時に受け取ってるんですか?」
「待ってよ、俺が彼女から手袋を受け取ったのは半年以上前だ。」
まじか!って事は大失敗じゃん!!私は天を仰ぎながらため息をついた。
「残念だったね、ドンマイ!でもここまで外すのはこの練習を始めてから初めてだよね?」
そういえばそうだ。今まで何回かこの実戦をしてきたけど、失敗しても誤差はせいぜい1週間。そして過去を視るイメージが固いからか、先輩が把握していない未来を視る事は無かった。何で今日はこんなにずれたんだろう…あ、
「睡魔不足だわ。」
「え?」
「多分、睡魔不足で魔力の調整が鈍ったんです。だから他の失敗よりも的外れな映像になっちゃったんだと思います。」
じゃ無かったらミスの理由がわからない!今晩は絶対しっかり寝て、明日の実技は絶対に成功してやる〜!えいえいおーと小さく拳を突き上げた時。
「トゥシェちゃん昨日眠れなかったの?何かあった?」
やば。
しれっと流してもらう言い訳のつもりが本気で心配させてしまったパターンだ。
何かあったよありまくったよ考え過ぎで寝れなかったの!でも内容的に、何かは貴方には言えません!
「べ、別に何もないですよ!ちょっと考え事してただけでオルロージュ先輩が気にする程では」
「考え事?」
しまったーー!!どうして言うつもりの無いワードまでポロリしちゃうの私の口いぃぃ!!
これ以上ボロを出すまいと私は両手で口を塞いだ。しかし、その態度が裏目に出たのか、先輩は疑いの眼差しでじりじりと距離を詰めてくる。やばい、このまま先輩に合わせて後退していくと、いずれは壁にぶつかる!何かいい誤魔化しはどこ!?
「…っそう言えば、さっき映像で視た女の人凄く綺麗でした。流石女たらし、隅に置けませんね!」
「ありがとう、でももう彼女とは会っていないし、今後も会うつもりは無いよ。」
「え、えー勿体無い!あ、もしかして他にお気に入りの子が出来たとか?先輩の心変わりの速さは筋金入りですか?いや逆に遊び人だから、誰にも本気になってなくて、さっきの人とも上辺だけで終わっちゃって…」
トン、と背中に硬い感触が当たる。本当に壁にぶつかってしまったようだ。
これ以上後退は出来ない、なのに先輩は足を止める様子が無くて。それどころか、私が弾丸トークで話を逸らせば逸らす程彼の表情は曇っていった。
触れそうで触れない、薄い板1枚挟んだくらいの距離まで近づいて、ようやく彼は足を止めた。
「話を逸らすにしても、もうちょっと他の方向に飛ばして欲しかったな。そんな風に思われるなんて心外だよ。」
「だって、本当の事でしょ?」
「…前はそうだったから否定はしないけど。それよりどうして話逸らすの、眠れないくらいの悩みがあるなら、フラムの件みたいに俺に相談してよ。」
距離が近い。そしてやっぱりイケメンだ。凛々しい系のヴァン先生とはまたタイプの違った、アンニュイな雰囲気の…って!ヴァン先生の事は今は考えるなー!!
バチン!
私は思考をリセットしようと己の両頬を勢いよく叩いた。




