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とある可能性に気づいてしまいました 2



それからしばらくの間、叫んだり頭をかいたり…とにかく落ち着きのない動きをしていた。誰もいない自分の部屋だから問題無いけど、他人から見れば不審者でしか無かったと思う。それから晩ご飯を食べに行ってお風呂を済ませてさあ勉強!…と、思ったんだけど。


教材をひらいて問題を読もうとすると、どうしてもヴァン先生の顔がちらついて全然集中出来なくて。ならば気を紛らわそう!と、フルール様に借りている恋愛小説の続きを読む事にした。

でもおかしい。いつもなら読んでてキャーキャー盛り上がるシチュエーション何だけど、これが私とヴァン先生だったら?なんて思考がひょっこりするんです!お陰で全く物語の世界に入っていけない。


この選択はミスだと気づき、勉強も読書も困難だと理解した私は早めに寝る事にした。でも全然眠くない、当たり前だ。灯を消して、瞳を閉じて羊を数える作戦を開始する。



「羊が1匹、羊が2匹…。」



空想の世界でもふもふの羊達がお行儀よく柵を飛び越えていく、いい調子。柵があるのは広い原っぱ、草は生々とした緑色だ。

緑色…綺麗な緑…宝石みたいにキラキラで、例えるなら…エメラルド?

そう、エメラルド!ヴァン先生の瞳みたいな綺麗なエメラルド!



「って違ーーーーーーう!!」



どうして先生に連想ゲームしちゃうの私の脳みそは!?駄目だ、いい感じだったのが秒で消え去った。次は何を数えよう…。



とか色々と思考を巡らせていると、いつの間にか窓の方から柔らかい朝の光が入ってきていた。恐る恐る時計を見ると針は7時を指しており、私は事態を悟って絶望した。



「嘘でしょ、全然眠れなかった…。」



恋愛小説で想い人の事を考えて眠れないってのはベタだけど、まさか自分がやるなんて。

待てよ?って事はこの場合、私の想い人はヴァン先生になるよね。やっぱり私って、先生の事が好きなのかな…?



わからない、だって恋愛経験無いんだもん。



時間も時間なので、眠る事は諦めるしか無い。私はわざと大きく伸びをしてベッドから降り、朝ごはんを食べに行く準備を始めた。





教室に1番乗りし、安定の後方端にある席に腰を下ろす。ボーっと外を見ていると、こんな時に限って眠気が襲ってきた。抗ってはいるけど、ちょっとヤバい負けそう…。



「トゥシェさん、トゥシェさん!」



至近距離から私を呼ぶ声にハッと意識を取り戻した。声の主はフルール様だったようで、少し眉を下げてこちらを見ている。



「やっとこちらを見てくださいましたわ。おはよう御座います。」

「フルール様…おはようございます。」

「意識ここにあらず…といった様子でしたけど、何かあったのですか?」



朝っぱらから心配かけちゃったみたい。何かねぇありましたよ、とんでもない何か。

でも言える訳無いじゃないですか!だってその何かってのは、ヴァン先生が私に告は…やめやめ、今思い返す事じゃ無い。



「大丈夫です、心配かけてごめんなさい。強いて言うなら昨日、ちょっと寝付きが悪かったくらいで。」



実際はちょっとどころじゃ無いけどね。私は笑顔を作って元気アピールをした。



「そうですか、でも無理はなさらないで、何かあったら私に言ってください。トゥシェさん、先月も身体が辛い時期があったでしょう?」



先月…予知夢騒動の時期の事かな。確かにあの時期も色々考えてて、しんどい日があったような。フルール様よく覚えてるな。



「あれはたまたまですよ。私は元々丈夫なんです、気にし過ぎですって!」

「だと良いんですけど…。今日からまた、サラ様にダンスレッスンをしていただくつもりだったのですが、辞めておきましょうか。」

「大丈夫ですって!私の我儘で期間が開いてしまったレッスンがやっと出来るんですから、行かなくちゃ。」



そう、今日の放課後は久しぶりの熱血ダンスレッスン!自主練で上手くなった姿をサラ様にも見て頂くんだ!本当に上手くなったんだもん…先生との、練習で。






「皆さん席についてください。」



聞き慣れたはずの声に、言葉にドキッとする。

いつのまにか教室に来ていた彼の指示で生徒たちは各々着席した。教壇に立つその人は昨日までと何ら変わりのない様子で、出欠の確認と必要な連絡をしていく。


ヴァン先生、昨日あんな事があったのに何でそんなにいつも通りなんですか?やっぱり大人だから?私ばっかり色々思い詰めて馬鹿みたい…。



「…では最後に、卒業パーティーについてです。」



『卒業パーティー』というワードに思わず目を見開く。何を言うのかと思ったけどそこは教師、タイムスケジュールとか禁止事項とかを改めて確認されただけだった。皆の前で何か言わないか内心ハラハラしたけど、ヴァン先生がそんな事するはず無かったわ。



その時バチっと先生と目が合った。距離はあるけど、間違いなく彼は私を見ている。そしてそのまま視線を逸らさずこう言った。




「皆さん、悔いのないように想う相手をダンスに誘ってください。自分の気持ちに素直になる事は…とても大切ですから。」



ヴァン先生が退室してからもクラスメイトはなんだか盛り上がっていた。そりゃそうだよね、真面目なヴァン先生が、あんな恋愛歓迎!みたいな事言ったんだもん。でも私は、皆のように素直にワイワイ騒げない。



今の言葉、私個人に言われた気がしてならなかったの。


自分の気持ちに素直になってー…彼は私に、手を差し伸べただろうから。



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