試験も補習もレッスンも大変です 5
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ようやく発された言葉は予想外のものだった。グリモワールさんは、一体何に驚いたの?
「まさか君が、ここまで魔法をコントロール出来るようになっているとは…映像が視られたら合格でいいと思っていたんだけどな。」
「…どういう事ですか?」
彼は立ち上がり、私の隣までやって来た。身体を私の方に向けてきたので、私も彼に向き直る。
「出会った頃の君は、増大していく時の魔力を全くコントロール出来ていなかった。それが、この学園に編入してたった半年足らずで、発動のタイミングはおろか映像の時期の調整まで可能になるなんて…あなたは凄いです。」
「それって、つまり…。」
もしかして、私は成し遂げたのだろうか。発動のタイミング調整の、その向こうを。
「トゥシェ=ルルーさん。あなたが視た映像は間違いなく24時間前の映像です。…本当によく頑張りましたね。」
グリモワールさんはとても嬉しそうで、優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「出来たんだ…私…っ、初めて…!!」
口にした途端、一気に実感が湧いてくる。やった、やったよ…!!
徐々に視界が歪んでいく、いつの間にか泣いていたようだ。グリモワールさんがハンカチを差し出してくれたので、厚意に甘えて雫を拭わせてもらった。
その後、室内のソファーで涙が落ち着くまで座らせてもらった。溢れる雫が落ち着いた頃合いを見て、机を挟んで正面に座るグリモワールさんが私に声をかけた。
「トゥシェさん、改めておめでとうございます。実技試験はこれ以上の無い合格点ですよ。」
「ありがとうございます。」
「今後も引き続き頑張ってね。ところで、先程ちらっと言っていたけれど、望んだ時期の映像を視たのは今回が初めてなのかな?」
「そうです。だからまさか出来るとは、自分でも思っていませんでした。」
記憶を遡るけど、覚えている中でこのような事は初めてだった。気付かない間に出来ていた…なんて現象が起きているとは思えないし。
「なら今日は記念すべき日になったね。本当に誇らしいよ。」
あまりに褒められるので流石に恥ずかしくなってきた。頬に両手を当てると熱くなっている気がする。そんな仕草をガッツリ観察された。
「トゥシェさんは、両手で触れた『物』に関する映像を視ることが出来る、そう言っていたね。」
「はい。」
「生きているものに対しては、発動していないんだね。」
「そうですけど…。」
グリモワールさんが何かを考えるように黙り込む。私、別に変な事言って無いよね?
「私は文献や、人に聞いた情報でしか時の魔法について知る事が出来ません。なのでこれはあくまで『可能性』の話です、聞いて貰えますか?」
「…はい。」
改まって何だろう。手のひらを膝に移し姿勢を整えた。
「魔法のコントロール技術が向上した事で、魔力そのものの量が増えている事はトゥシェさんも自覚していると思います。更に魔力が増大した時…君はもしかすると、生き物に対しても魔法を発動出来るようになるかもしれません。」
え?
「…そんな事が、あり得るんですか?」
「わからない、でも素質は十分あると思うんだ。だからこそ…もしその時が訪れても、不用意に他人の景色を覗いたりしないようにコントロールを怠らないでね。こんな形で過去や未来を探られるのは、君も相手も気持ちのいいものでは無いだろうから…。」
とても心配そうに言う彼の姿に、事の重大さをずっしりと感じた。経験あるの?って感じてしまうくらい、彼のアメジストの瞳は憂いを帯びていたから。
「半年前とは比べ物にならないほど魔力も技術も向上したけど、まだまだ現状に満足しちゃ駄目って事なのね。」
学園長室から出て大きく伸びをする。試験からの開放感や達成感を覚えつつも、次の高みを目指す必要性を私は痛感した。




