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卒業パーティーとは何ですか 6



「ずっとお会いしたかったんです、娘からあなたの話はよく聞いているんですよ。」

「本当に…慣れない王都での暮らしで大変だと思うが、フルールは迷惑をかけてはいませんか?」




…そうです。一緒に夕食をいただく事になったのはフルール様だけでは無かったのです。



食事を食べる部屋に案内された時、テーブルには何故か4人分のフォークとナイフが用意されていて。首を傾げつつ座るとすぐに彼等…フルール様のご両親がこの部屋に入ってきたのだ。


聞いてないよ!?フルール様の方見たら、さも当然みたいな感じで私の事紹介しだすし。えっ今日ってそういう日なんですか?



「そう固くならないでください。ここは私的な場だ、マナーなど気にせずゆっくり食事を楽しんで欲しい。」

「あなた、そうは言っても緊張すると思うわよ。私達の事は気にせず…なんてのは難しいでしょうから。」



凄く気を遣わせてしまっている気がする。意識すると余計ガチガチになって、ナイフもフォークもうまく掴めない。すると隣からクスッと小さい笑い声が聞こえた。

フルール様に笑われた…!?そう思い、恐る恐る彼女を見ると、その視線の先には私では無く彼女の両親の姿があった。



「お父様もお母様も楽しそうです。…私も、トゥシェさんとこの場で食事が出来て嬉しいですわ。」



視線をこちらに向けて、優しく言葉をかけられた。

その時の彼女の微笑みは聖女のようち淑やかで柔らかで、優しいものだった。




その後私は、フルール様に幾度となくテーブルマナーを尋ねながらも、適度に彼女の両親ともお話しさせて頂きながら食事をいただいた。最初に口に含んだサラダからもう美味しさの次元が違っていたのでテンションが上がり、美味しい食べ物のパワーで緊張が若干ほぐれたのもあると思う。ええ、トゥシェ=ルルーは食に対してがめついですよ。淑女とは程遠い性格してますからね。







「…とまぁ、こんな事が一昨日にあったんですよ。」



数日後、私はヴァン先生の部屋でハーブティーを飲みながら、フルール様の屋敷であった事を詳細に話した。先生は恒例の聞き役スタイル、毎度ながらお喋りな私に付き合ってくれて有難いです。



「それはお疲れ様でした。…ダンスレッスンは1回では終わらないでしょう、次はいつモーヴェさんの屋敷に行くのですか?」

「それなんですけど、一昨日があまりにも濃密だったんで次は試験が終わった後にして欲しいってお願いしました。ただでさえこれから試験勉強で忙しくなるのに、そこにあの熱血レッスンまで追加されたら流石の私でもぶっ倒れますよ。」

「確かに、無理は良くないです。」



私の気持ちを先生は理解してくれました、流石大人の男。



「でもそうなると次のダンスレッスンまでかなり期間があいてしまいますね。せっかく身につけた技術、覚えていられるんですか?」

「ゔっ。」



痛いところを突かれた。

そうなんだよね。一昨日かなり叩き込まれたから今は問題ないんだけど、1ヶ月あくと流石に身体が忘れてしまいそう。せっかく手取り足取り教えてもらったくせに、それはそれで失礼だよな〜でも試験も大事なんだよな〜もう!!



私が唸りながら頭を抱えていると、先生は持っていたカップを置いて徐に立ち上がった。私にも立ち上がるように促し、何故かテーブルと椅子の位置を端に寄せていく。何してるんですか先生?

やがて室内の1部にぽかんとスペースがひらけた。状況が掴めず棒立ちの私に向けて先生は少し屈み、スッと自らの右手を差し出してきた。



「本格的なレッスンが出来ないのであればその間は僕と練習しましょう。僕もあまりダンスは得意ではありませんが、初心者のルルーさんの相手なら可能かと。」




…うわっ、何これ!?

イケメンが…っ長身の眼鏡イケメンが、私に目線を合わせてダンスのお誘いだと…っ

!?うわぁめっちゃ絵になる!やばい!鼻血出そう!!



「…ルルーさん?」



…おっといけない、あまりの美しさに思考がバグった。えーと…これはあれだな、座学のついでにダンスの補習もしましょうという先生なりの思いやり!ときめくなんて不純だ、冷静にならねば。

とか1人脳内会議をしていると、先生の手がゆっくり後退し始めた。いけない、このままでは彼の厚意を無下にしてしまう。


私は慌てて下がりゆく目の前の手をぐっと掴んだ。目線を手から先生の顔の方に移すと、珍しく驚いていそうな瞳と目があった。




「ルルーさん…男性からのダンスの誘いを受ける時は、差し出された手を掴むのでは無く手の上に手をのせるんですよ。」




…先生が、笑った?


見間違いじゃない。今一瞬、表情筋が機能しているのか怪しいと思っていた彼の口角が上がり、エメラルドの瞳が驚くほど優しく細められたのだ。…ーまるで、目の前の大切なものを愛おしく思う、そんな気持ちが溢れたかのように。



意識した途端、急に自分の顔が熱くなるのを感じた。それに気づいたからか何か思ったのか定かではないけど、先生の顔もすぐにいつもの仏頂面に戻ってしまった。




ヴァン先生とのダンスレッスンは、私のペースに合わせてゆっくり行われた。一昨日に1回だけの練習でこんなに踊れるようになるなんて凄いですねって褒めてくれたけど、正直私の思考はそれどころじゃ無くて。


ハイパー爽やかイケメンスマイルを見せられた相手とダンスレッスン…距離が近い!!

先生の事は好きだし、近づく事に抵抗は無かった筈なんだけど…なんだか今日はムズムズしてしまった。



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