卒業パーティーとは何ですか 5
翌日、放課後。
私はフルール様と一緒に、彼女のお家へ向かう馬車に揺られていた。学園から彼女の屋敷までそれ程時間はかからない。お喋りしていたらすぐに到着して、数度目の訪問でやっと慣れてきた気がするモーヴェ公爵邸に足を踏み入れた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。トゥシェさんも、本日はお越しくださりありがとうございます。」
出迎えに待っていたスクレさんに声をかけられる。それに挨拶を返した後、スクレさんはフルール様の鞄を、他のメイドさんが私の鞄を預かってくれた。そして私は、そのまま進むフルール様の後ろをついていく。こうやって放課後に直接お邪魔するのは初めてなので、普段とはまた違う緊張をしていた。
しばらく進んである部屋に案内された。そこで制服よりも動きやすい服に着替えさせられ、更に別の部屋に案内されることに。
その部屋はやたらと空間が広く、既に着替えを済ませたフルール様と、初めて見る中年くらいの女の人が待機していた。
「トゥシェさん、こちらの方はサラ=ド=マラルメ様ですわ。私が幼い頃からダンスのレッスンをしてくださっている方ですの。」
「は、はぁ…。」
「はじめまして、ご紹介に預かりましたサラでございます。本日からトゥシェ様のダンスレッスンを請け負う事になりました。よろしくお願いします。」
「ええこちらこそよろしく…って。え?」
雰囲気的にお辞儀しそうになったけど待ってくれ、これはどういう事ですか?私は確か、フルール様にダンスを教えてもらう筈では…!?
困惑しつつもフルール様の方を見る。あっニコッてした美しい〜…ってそうじゃ無い!
「フルール様、『私と一緒に練習しましょう』って言ったじゃ無いですか!?」
「え?私も一緒に練習しますよ、サラ様に指導を受けながら。」
ああ〜、『一緒に』ってそーゆー意味…。私が解釈違いしてたって事ですね、理解しました。
「といっても私はダンスは何度も踊っていますので、サラ様には主にトゥシェさんの指導をしていただこうと思っています。」
「なんですと!?」
「そういう事ですので…改めて、本日からビシバシ指導させて頂きますね、トゥシェ様。」
えっ。
ええええ〜〜!?
何故こうなった!?
私は基本的なステップが出来るようになればそれで満足なんですけどぉぉお!?
サラ様の指導は優しい口調で的確ではあるものの、穏やかな雰囲気とは裏腹なスパルタそのものだった。パーティーなんて在学中しか出ないであろう私にここまでやる必要ある?といった泣き言は言うだけ無駄だろう。お陰でヘトヘト、冬だというのにめちゃくちゃ汗をかいた。
そうこうしているうちに結構時間が経っていたらしく、レッスンの終了を告げられた時には外は真っ暗。
「トゥシェ様…さんは筋が良いですね。教え甲斐があるので時間があっという間でした。」
レッスン終了後、満面の笑みのサラ様からお褒めの言葉を頂いた。私、運動神経は良い方なんだよね、だからかな?関係あるかは知らないけど。
あ、様付けじゃ無くなってるのは安定に私がお願いしたからです。
「トゥシェさん、身なりを整えたら食事に行きましょうね。」
「もうそんな時間ですか?…ってそうじゃ無くて。私の分の食事まで用意して頂いたんですか!?」
「ええ。サラ様は指導熱心な方ですから、終わる頃に夕食を頂けばちょうど良いと思っていましたので。さあ行きましょう♪」
状況がうまく飲み込めないまま、誘導されるがままに移動を繰り返す。気がつくと、私の目の前には豪華な食事がテーブルいっぱい所狭しと並べられていた。まさしく『晩餐』!…めちゃくちゃに美味しそうでキラキラしていて、涎が滴り落ちそうなんですが。
今すぐ食べたい気持ちとは反対に、私はガチガチに緊張していた。




