卒業パーティーとは何ですか 3
「式典とパーティーは同じ日に行われます。卒業式展は午前中に、学園の講堂で行われますわ。生徒は全員制服を着て出席し、学園長や来賓の方々からお言葉をいただきます。そして卒業パーティーは、日が暮れる頃から王城で行われます。ドレス等の正装で出席して、音楽に合わせてダンスを踊ったり、立食をしつつ談笑したり…いわゆる生徒が参加者の一般的なパーティーですわ。」
いわゆるって言われてもピンとこないけど…あれか!前世で読んでた小説にも腐るほど出てきた定番中の定番イベント!!それを卒業のタイミングでやるなんて、乙女ゲームのイベントみたい。
「それって私も参加出来るんですか?」
パーティーとか行ったら浮いちゃいそうだけど、興味がないと言えば嘘。いや、むしろ興味しか無いくらいだ。ワクワクしながらまた質問すると、フルール様はにこやかに答えてくれた。
「勿論ですわ!式典もパーティーも、生徒は学年関係無く全員出席ですし、生徒と縁のある方々の参加も可能です。トゥシェさんとパーティーに参加出来るだなんて、私本当に嬉しくて…!」
フルール様、いつにも増して瞳がキラキラしてる。喜ぶ気持ちが全身から滲み出ているようで、釣られて私も嬉しさが溢れ出した。
「パーティーでは曲に合わせてダンスが出来ますが、卒業生以外はダンスは自由参加となっています。卒業生の方も、どのタイミングで踊るかは本人の自由ですわ。…ですが、パーティーを締め括る最後の曲だけは、他の曲で踊る事とは一味も二味も意味が異なってくるのです。」
「そうなんですか?どういう意味があるんですか?」
テンション高めに更に質問を追加する。と、声のボリュームが大きくなっていたらしく周囲にじとーっと見られてしまったので、2人で顔を合わせて苦笑いした。
「最後の曲を共に踊った男女は末長く結ばれる…というジンクスがあるのです。残念ながら踊った全員が幸せになったかは定かではありません。でもこのジンクスから派生して、最後のダンスを共に踊るという事は、相思相愛の意思表示という意味合いを持つようになりました。…つまり。」
「つまり…?」
フルール様が無駄にためるので、私はゴクリと唾を飲む。
「…卒業パーティーの最後のダンスに誘う行為は、愛の告白を意味するようになったのです。そして誘いを受けるという事はその愛に応えるという事。卒業シーズンは、学園内では告白のシーズンとなるのですわ!」
「えええ〜!めちゃくちゃロマンチックですね…!」
思わず胸の前で両手を合わせ、拝むようなポーズをとってしまった。興奮する私を見てフルール様も満足そうに微笑む。けど、その微笑みは次の彼女自身の言葉と共に曇っていった。
「流石に両思いカップルだけでは、最後のダンスが過疎状態になってしまう危険性があるので、婚約者のいる方はその相手と踊ったりする事もありますけどね。」
「そうなんですね…。て事は、フルール様は最後のダンスをフラム殿下と踊るんですか?」
「去年まではそうしていました。ですが今年はどうなってしまうのか…私にもわからないのです。」
「…どうして。」
いろいろ聞き過ぎてるな私。でもフルール様の今の言葉、どうしても引っかかった。今まで殿下と踊っていたのなら今年も踊るのがセオリーじゃ無いの?今年は崩れる可能性があるって事?
フルール様が私に向かって改めて笑いかける。けれどその笑みは、どこか困っているような笑みだった。
「…さぁ、どうしてでしょうね。」
「…。」
「そういえばトゥシェさん、ダンスって嗜まれてますか?」
「えっ?」
話がすり替えられた!って、私がダンス?辺境ど田舎出身の平民娘の私が…?
「ダンスなんてやった事無いです。見たこともありません…。」
「そうですよね…という事は、試験勉強と並行してダンスのレッスンもしなければいけませんね。」
…ん?
「何故…!?卒業生以外は、パーティーに参加してもダンスは必須じゃ無いんですよね?私、踊らずに雰囲気だけ楽しむつもりなんですけど…!?」
「トゥシェさん自身がそのつもりでも、パーティーの前やパーティー中にどなたかからお誘いがあるかもしれません。その際に全てお断りするのは勿体無いですわ。1曲でも踊れたら、パーティーはもっと楽しくなりますもの。」
…確かに一理あるな。
「…ど素人の私が、パーティー当日までに踊れるようになるんでしょうか。」
「基本的なステップさえ覚えればあとはなんとかなります!よろしければ今日の放課後、早速私と練習しませんか?」
「今日はヴァン先生の補習の日なんです…明日でよければお願いしても良いですか?」
「ええ、勿論です♪」
やがて昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り、私達は解散した。
田舎娘のトゥシェちゃん、思いがけずダンスを練習する事になってしまいました。




