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卒業パーティーとは何ですか 1



魔術の痕跡がわかる石が光った後、私は腰を抜かしてしばらくその場に座り込んでしまった。

刻一刻と時間が過ぎ、気づいた時には登校時間の10分前。踏ん張って踏ん張って、ようやく立ち上がる事は出来たけれど、どうしても早く動けなくて私は初めて遅刻をしてしまった。登校してからヴァン先生やフルール様、トリオ、他のクラスメイトも心配してくれたけど、「ちょっと寝坊しただけだよ」って誤魔化した。勿論朝ごはんだって食べていない。でも不思議とお腹は空かなかった。


昼休みになってすぐ、授業を終えたヴァン先生に声をかけられ、やっぱり心配だから午後は無理せず帰りなさいと言われた。先生の優しさは有難いもののそういう訳にはいかないんです。あなたには言えないけれど、今朝石が光ったって事を、午後にオルロージュ先輩に伝えないといけないから。

先生は「そうですか。」と、一応納得はしてくれた。でも渋々って感じだった。


ヴァン先生との会話が終わると、待ってましたと言わんばかりにフルール様が話しかけてきた。



「トゥシェさん、ランチに行きましょう。」



毎日聞いているお誘いの言葉。なのに、それは抑え込んだ今朝の私の恐怖を呼び起こすには十分すぎるワードだった。



「あ…えっと…。」



思わず視線を逸らす。また腰が抜けたらどうしよう…ふらついて心配かけないように、精一杯踏ん張る。



「…大丈夫です。私がついていますわ。」



彼女の言葉は、優しくて真っ直ぐな眼差しとともに私を包み込んでくれた。まるで守ってくれているみたいに。キュッと手を握られて、私の中の恐怖心が少しずつ溶けていく感覚がした。

私がフラム殿下に怯えている事を、多分彼女はわかってくれている。でも詳細な理由は尋ねてこない。だからこそ、そんな彼女が隣にいてくれるなら…って、腹を括ってカフェ裏のベンチに行ったのに。




その日、フラム殿下は私達の前に姿を現さなかった。



拍子抜けした部分もあったけど、どうしても会わずに済んだ事に安心せずにはいられなかった。フルール様はというと、表面上は落ち着いていたけれど、いろいろと思う事があるみたいでちょいちょい何か考え込んでいるように見えた。



午後の授業の時間になる。私は朝に起きた石の反応を、時の魔法の実技部屋でオルロージュ先輩に報告した。案外先輩は驚いてなくて、まるで既に知っていたかのように私の話をすんなりと聞いてくれた。そしてその日の放課後、2人がかりで先輩の部屋に置いていた私の荷物を元の場所に戻し、私は再び自分の部屋で眠る生活に戻る事になった。



「…本当にありがとうございました。」

「良かったね、これで気兼ねなく休める生活に元どおりだよ。」



良かった、と繰り返す先輩はどこか切なげな瞳をしているような気がした。

そういえば。先輩にお世話になりっぱなしだから事が落ち着いたら何かお礼したいと思ってたの、今思い出した!



「先輩!」

「んー?どうしたの。」

「何かお礼させてください。私にできる事なら頑張ってお返しします、お世話になりっぱなしは嫌なんです。」

「お礼!?」



予想外にびっくりされた。先輩はしばらく私をじっと見た後、何故か頭をブンブン振った。そして眉を八の字にして再度私を見た。



「お礼はもう貰ったよ、良いもの見せてもらったからね。」

「?私、何もしてません。」

「うん、何もしない君が見られた事がお礼。…もしこれで納得してくれないなら、何をしてもらおうか考えておくよ。」



何もしてない私を見られた事が、お礼?…何を言ってるんだこの人は。

理解不能で首を傾げまくっていたら笑われた。笑うな笑うな、ちょっと失礼だと思うよ?





…といった感じで予知夢騒動は過ぎていき、いつの間にか騒動への私の恐怖心も消えていた。そして、今まで通りの学園生活に戻る事が出来たのだった。





…ーランチタイムにフラム殿下が訪れなくなった事以外は。



石が光った日、翌日、さらにその次の日…私もフルール様もいつもの様にカフェの裏に行っていたのに、フラム殿下はいっさい姿を現さなかった。

最初は安心する気持ちの方が大きかったけど、やがて殿下自身に何かあったんじゃ…?という別の不安を感じるようになった。それはフルール様も同様のようで、彼女もどこと無く心配そうな表情を浮かべていた。


まさか不登校?という可能性も考えたけどそれは無いらしい。たまたま校内で遭遇したフリュ殿下にそれとな〜く聞いてみたら完全否定された。オルロージュ先輩も、登校しているフラム殿下の姿は遠目で確認しているとの事。何故遠目?と聞くと、「何でだろうねぇ」とはぐらかされてしまった。オルロージュ先輩も、フラム殿下と何かあったのかな?


学外でフラム殿下と会ったフルール様に彼の様子を尋ねると、彼女と接している時は至って変わった様子は無かったらしい。でも余りにも普通すぎて逆に不自然に感じたとの事。



そうしてフラム殿下と会う機会が無いまま月日は過ぎ、1か月が経とうとしていた。



本日2ページ更新します。次ページは22時頃に投稿予定です。

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