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あなたの考えが私にはわかりません 8

オルロージュsideも続きます!&こちらも長めです。



【オルロージュside】



『俺は君を守ってみせるよ。』ー…か。


はじめはフラムを守る為、トゥシェちゃんが変な子じゃないか品定めするつもりだった。それなのに今、俺はそのフラムからトゥシェちゃんを守る為に動いている。


フラムの事を信じていない訳ではないが、俺は最近フラムと会えていない。俺の知らないうちに、アイツを突き動かすような何かが起きている可能性はゼロでは無かった。だから万が一の事態に備えてトゥシェちゃんを安心させる為に…。

いや違う。怯える彼女を俺自身の手で救いたい、守りたい、助けたいと思ったんだ。


それだけじゃ無いな。もし映像の通りに事が進んだ場合、トゥシェちゃんがそのままアイツに最後まで犯されてしまう危険性があると考えた時、体の奥底から今までに無いような腹立たしさと苛立ちを感じたんだ。そんな事は絶対にさせない、シンプルにそう思った。



夜になり、俺は寮の自分の部屋に彼女を案内する。簡単に接待だけして帰ろうとすると、「もう帰るんですか?お茶飲んで休憩してからでも…。」と予想外に引き止められた。



全くこの子は…誘ってるの?そんなこと言われたら、俺も今晩ここに泊まっちゃうよ?


いや絶対に駄目だ。それで手を出してしまったら、俺も未来のフラムと同罪になる。



「こんなシチュエーションで男引き止めちゃ駄目だよ。俺は『先輩』を全うしたいから帰るの。今度こそ、おやすみ!」



自分の中に湧き上がった欲の塊に気づかないフリをして、魔法を使って足早に去った。この時感じた『欲』は、今までと少し違うような気がした。




それから何日か経ったけど、フラムが訪れた形跡は無いままだったらしい。

どこかのタイミングで、トゥシェちゃんから「どうしてあんな未来が起きるのか」意見を求められた。ただの肉欲…では無いと思う。そもそも俺だってその理由を知りたくて仕方が無いのに。



「…そうだなぁ。どうしても、君に自分を見て欲しいと思ったんじゃ無い?」



考えに考えまくって出した答えはあまりにも抽象的だった。でもこれが1番しっくりきた。その気持ちが、わかる気がしたから。




週末の休みの日。今日はトゥシェちゃんに会えない。しかも夜には王城のパーティーで警備の補佐だから遊びにも行けない…そういえば最近、夜遊ばなくなったな俺。学園に行くようにした分、武芸の稽古する時間が夜にずれ込んだんだよね。



なんて事を思いながら、俺は父の部下に指示を仰ぎながら会場周囲をパトロールしていた。

女の子口説けないし、疲れてきたしどっかでサボれないかな〜と会場から離れた時、不自然に開いた窓を見つけた。



「なんでここだけ開いてんの?」



閉める前に、念の為窓から外を見渡してみる。すると少し離れた空中に、魔術が元であろう薄い光が見えた。どういう事だ?ここから出て、魔術で空を飛んだ…?誰が、何の為に。一体どこに向かっている…?




…ーまさか!?



俺は慌ててパーティー会場に引き返し、ある人物を探した。


いない。



その人物の不在を確認した俺は即座に王城の出口へと向かう。一刻も早く辿り着く為に自分以外の時間を停止させた。自分の能力にこれまでに無い程感謝するも、感謝している場合では無い。

魔力の限界がきて時間が動き出す、アイツより先に到着出来たので十分だ。俺は物陰に身を潜め、呼吸を整えながらアイツがくる時を待った。




やがて訪れた…訪れる事が予知されていた人物は、風の魔術で空中浮遊をしながらある部屋の窓を風圧で開けていく。全て開ききった後、彼は窓枠に足をかけた。





「お前、こんな所で何やってんの?」



物陰から出て、浮いた背中に声をかける。突然の呼びかけに驚いた背中は魔術のコントロールが崩れたのか浮遊が不安定になり、やがて勢い良く地面に吸い込まれていったが、落下地点には低木が並んでいた為大した痛みは無かったようだ。彼は落ちた後すぐに、俺の姿を探すように勢い良く身体を起こした。




「…オルロージュ。」

「何してんのお前。あの部屋、トゥシェちゃんの部屋だよね。」



歩み寄った俺の正体に気づいた男…ーフラムは、月明かりの下で驚きと困惑の表情を浮かべていた。無理もないか、こんな所に俺がいるなんて思うはず無いよね。

フラムが戸惑うのはわかるけど、それとそれとは話が別。トゥシェちゃんが予知していたとは言え、俺も根拠をいろいろ考えたとは言え、このフラムの行動の本当の理由が知りたい。

真面目なお前が理由も無く、こんな時間に女の子の部屋に押しかけるなんて俺には考えられないから。



「…オルには関係ない。」

「関係あるよ、だってトゥシェちゃんは俺の大事な後輩だし。」

「…大事な、後輩。」

「そ。…詳細省くけど、実はお前が来る事予知してたんだよね、あの子。こんな時間にいきなり来る映像だったらしくて戸惑ってたよ。」

「…戸惑ってた?」



低木から降りたフラムの正面に立つ。パーティー用の正装をしているにも関わらず、土や葉っぱがまとわりついた彼の姿はとても滑稽に見えた。



「戸惑ってたよ、当たり前でしょ。客観的に状況整理して?年頃の女の子の部屋にいきなり男が突撃してきて、怖い以外の感情があると思う?」



フラムを真っ直ぐに見て問うた。でも待てど待てど返答はない。それどころか彼は俯いて、目すら合わせてくれなくなった。




「…お前がトゥシェちゃんの事好きだって、俺は痛いぐらい知ってるよ。でもこんなやり方じゃあの子には届かない。お前らしく無い。俺の知っているフラムは…不器用だけど、負けず嫌いで誰よりも努力家な奴だ。」



俯いたままのフラムの肩をポンと叩き、俺はその場を立ち去った。

結局、フラムがトゥシェちゃんの部屋に行った理由はわからないままだったけど…俺が伝えたいと思った事は言葉にできたので及第点とするか。




俺は王城には戻らず、そのまま男子寮の方へと向かった。大きな木を登り、2階の窓の鍵を開ける。部屋の住人が眠っている事を確認し、ゆっくりと音を立てないように室内を移動した。

ベッドの側まで歩み寄り、ゆっくりと腰を下ろす。




閉じられたラピスラズリの瞳を縁取る長い睫毛、筋の通った鼻、少し開いた状態の愛らしい唇。


ここ最近の俺は、毎日夜が更ける頃この部屋にお邪魔して、トゥシェちゃんの眠る姿を見に来ていた。起きている時はあんなに明るくて生き生きしているのに、夢の世界にいる時のこの子は、なんだかとても儚い美しさを帯びている。

知ったのは、彼女がこの部屋で眠るようになった2回目の夜。なんだかとても気になって、悪いと思いながらもつい眠る様子を見に来てしまったのだ。それ以来毎日訪れて、何をするわけでも無くただ彼女の寝顔を眺めるようになった。



「『お前らしく無い』ってフラムに言ったけど、俺も人の事は言えないな。」



こんな据え膳に手を出さない状況を何日も繰り返して。2か月前の自分なら速攻でいただきますしてるよ。

でも、トゥシェちゃんにはとてもそんな事出来ないと思った。



触れるか触れないかくらいの力加減で、柔らかなセピアの髪を撫でる。

その時何故か、眠っているはずの彼女が嬉しそうに微笑んだ。





「…ー駄目だよ、そんな顔見せないで。君の先輩を全うしたかったのに、これ以上は抑えられなくなっちゃうよ?」




毛先に小さくキスを落とし、窓の鍵を閉めて部屋を後にする。

こんなはずじゃ無かったのになー…。





明日の夜には、彼女は元の部屋で休む生活に戻るだろう。

喜ばしい事のはずなのにー…どこか悲しんでいる自分がいた。



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