あなたの考えが私にはわかりません 3
午後になり、私はもやもやを抱えたまま時の魔法の実技部屋に歩いていく。ガチャリとドアを開けると、待ってましたと言わんばかりにオルロージュ先輩が私に近づいて来た。
「トゥシェちゃんどうだった?今朝、石は光った?」
「いえ全く。流石に速攻で訪問は無かったみたいです。」
「そっか。」
先輩はホッとしたような、でも困ったような…複雑そうな顔をした。促され、室内の椅子に腰掛ける。
昨日同様に水晶に魔力を送る練習を始めると、水晶は明らかに昨日より光るようになっていた。予知夢の時以来魔法を発動していなかったからだと思う。でも、1日半?使わなかっただけで魔力ってこんなに溜まるんですね…。
「魔力は大体戻ったみたいだね、流石、俺と同じ時の魔法使いだ。」
「でも短期間でこんなに戻るって事は、その分発散しないとまたあんな事になりかねないんですよね。」
「まぁね。そこはまぁ、折り合いつけてやっていくしか無いからさ。」
折り合いかぁ、ますます気持ちがもやつくわ。
先輩が「俺と一緒だねー」って目の前でニカっと笑いかけてきたけど、私はぎこちない笑みしか返せなかった。
実技練習がひと段落したので、体を休めがてら本を読む。そして試しに、その本に両手で触れて魔法を発動してみた。発動そのものはすんなりいって、頭の中に映像が流れる。
「魔法の発動に関しては、もう俺からアドバイスする事は無さそうだね。」
「ありがとうございます、でも時期の調整がまだまだですね。一応この辺が視たい〜ってのはイメージしてるんですけど、今、1日前を視たいって念じたのに、視えたの書店っぽい所でした。いつの時代なんだか。」
「焦る必要は無いさ、ゆっくり身につけていこう。」
穏やかに時間が流れる。雑談が始まり、話題はオルロージュ先輩とフラム殿下がいつから仲が良いのかになった。
「具体的には覚えて無いな〜、いつの間にか仲良しって感じ?あいつは立場的に弱みを見せまいと頑張ってるけど、いつからか俺にはしんどい気持ちをたまーに言ってくれるようになった。」
フルール様はフラム殿下の事を弱みを見せないって言ってたのに。殿下にとってオルロージュ先輩は、婚約者のフルール様より近い存在って事なのかな。
「だったら殿下の事いろいろ知ってる先輩に質問です。昨日私が視た映像…あの未来はどうして起こると思いますか?」
私の問いに対し、先輩は大きく首を捻って黙り込んだ。いろいろ考えて言葉を選んでいるっぽい。
「…そうだなぁ。どうしても、君に自分を見て欲しいと思ったんじゃ無い?」
「…会ったらちゃんと見てますけど。」
「そういう事じゃ無いんだよね。まあフラムの気持ち、わからなくも無いけど。」
「どういう意味ですか?ちゃんとわかるように言ってくださいよ。」
「えー面倒くさい。」
なっ…!
その後も適当に流されてしまい、結局ちゃんとした意見は聞かせてもらえなかった。
全く…フラム殿下といい、フルール様といい、オルロージュ先輩まで。私の思考レベルでは理解が難しい発言や行動をしてくるから困ってしまう。
フルール様と先輩に関しては私に直接的な害は今のところ無いけれど。よくわからない言い回しにもやもやが収まりません。おかしいな、殿下の件だけで困っていたはずなのに、いつのまにか悩みの種増えてない?
…もう深く考えるのやめよっかなぁ…。
夜が来る。
先輩と裏口で待ち合わせをしたのは初日である昨日だけだったので、今日は自分のいい時間に部屋を出て移動する。ぱぱっと木を登り、窓から先輩の部屋に入る。シンプルな部屋で本日もお世話になりますと口ずさみながら眠る準備を整えてベッドに横になった。
昨日程の疲労が無かったからか、初日よりも他人の部屋である事を意識してしまい、なんだかなかなか寝付けなかった。
深夜、優しく風が髪を撫でた気がした。しかしそれ以外は特に何の変わりもなく、翌朝も私の部屋で石が光る事は無かった。




