確か私を悪夢から救ってください 2
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そろそろ午前の授業が終わる。この後はフルール様とカフェでランチを受け取って、裏のベンチに行って…。いつもと同じなんだけど、個人的には気乗りしなかった。原因はまぁ…今朝の夢に関係するのですが。
「トゥシェさん、ランチ行きましょう。」
「…。」
「トゥシェさん?」
「あっ、は、はい行きましょう。」
2人でカフェに移動する。列に並んでランチを受け取り、外に出ようとするフルール様に恐る恐る声をかけた。
「…フルール様、今日はベンチじゃ無くてカフェの中で食べませんか?」
「どうしてですか?今日はこんなにいい天気なのに…。」
悲しそうなお顔!なんて美しく儚げな…。そんな顔されたら、私の超絶個人的なわがままを言える訳無いじゃありませんか!!
「なんでも無いです!やっぱり外で大丈夫です…。」
「良かった。では行きましょう、フラム様もお待ちかもしれませんわ。」
嗚呼…私はその待ち構えてるかもしれない人に今会いたく無いのです。でも嬉しそうなフルール様の横顔を見ると、とてもじゃ無いけどそんな事は言えなかった。ベンチでは既にフラム殿下が私達を待っていた。そしていつものように、私は2人の間に着席させられる。
最近、フラム殿下は様子がおかしい。元々おかしい所はあるんだけど更に…と言いますか。
オルロージュ先輩が登校するようになった時期もなんか変だったけど、あの時とはまた違う感じのおかしさなんですよね。
私が城下町に行った次の週辺りからかな…?通常運転でグイグイ迫ってはくるんだけど、そのグイグイがなんだか以前より必死に見える。そのくせ要点や核心をつくような言動は避けるし、私が聞きたい事は適当にはぐらかされたりするし。だから、ただでさえ最近の殿下の相手をするのはしんどいのに…あの夢。
今朝見た夢の中で私に馬乗りになっていたのはフラム殿下だった。
わかってる、実際にされた訳じゃない。でも様子のおかしい殿下ならあり得ない話じゃない。そんな風に思ってしまう事が嫌で、誰も悪くないのに殿下に対する罪悪感が拭えなくて。だから出来る事なら今日フラム殿下には会いたくなかった。
でもこんな理由、2人には言えない。それこそ失礼にあたると思うし。
不安復活、自己嫌悪モード突入。肩を落として俯いた時、殿下のマシンガントークが一瞬止んで別の話題を振られた。
「…そのヘアゴムどうした?」
「えっ、あーこれですか?ちょっと前に城下町で買ったんです。安物ですけど可愛いでしょ?」
…あれ、そっちから聞いてきたくせに返事無し?
私これ気に入ってるのに、感想教えてよ。好みじゃ無いなら残念でした趣味が合いませんねって私答えるし。
「…せ。」
「…はい?」
やっと返事したかと思えば超小声。聞こえない!って文句言おうと思って顔を上げる。
そこには、今まで見た事の無いくらい冷ややかで、でも最深部は煮えたぎるマグマが潜んでいるんじゃないかってくらいの目つきで私を見るフラム殿下がいた。
「そのゴム今すぐ外せ。」
「…なんでですか。もしかして殿下の趣味と違いました?でも私は気に入ってるんで」
「いいから外せよ!!」
至近距離で凄い剣幕。次の瞬間、殿下の腕が私の頭めがけて伸びてくる。
今朝の夢で見た彼となんだか似通っていて、思わず恐怖を覚える。怖い、咄嗟にギュッと目を閉じた。
「フラム様、いくらなんでも横暴ですわ。王位継承者としての品位を感じられません。」
芯の通ったフルール様の声が響いた。ゆっくり目を開けると、私に触れる前に動きを止めたのであろう殿下の腕が宙に置かれていた。そして、我に返ったかのようにゆっくりと引っ込められる。腕は彼自身の頭上に移動し、ぐしゃぐしゃと頭をかいた。
「…すまない怒鳴ったりして。でもやっぱり、そのヘアゴムは外してくれないか?どうしても…見ていられない。」
「フラム様、その言い方はいかがなものかと。」
「分かりました、取りますね。」
「トゥシェさん…。」
フルール様は気にする必要無いって言ってくれたけど、これ以上殿下の機嫌を損ねたくなかった。困り顔のフルール様に謝罪と感謝を視線で伝えて、私は自らポニーテールを解いた。




