誰か私を悪夢から救ってください 1
…ーこれ、どうゆう状況?
部屋も外も真っ暗な真夜中。私は寮の自室のベッドで仰向けになっていて、遠目に見える窓は何故か開いている。暗がりの中、うっすらとそよぐカーテンが見える。
窓を閉めに行きたいのに動けない、何で?金縛り?
違う、誰かが私に馬乗りになって私の動きを封じている。暗くて見えないその顔が近づいてくる、やだ、怖い…
…ーあなたは!
「やめて!!」
慌ててベッドから飛び上がった…ってあれ、動ける?
窓の方を向くと鍵がきちんとかけられており、外から早朝の薄明かりが差し込んでいる。
て事は、今まで見ていたものは夢?でも夢にしては妙にリアルな映像だった。夢というより魔法で視る映像に近いような。
「…いやいやまさかね。」
ある可能性を考えついてしまったけど、信じたく無いので一旦忘れよう。
夢見?は最悪、時間も普段起きる時間よりかなり早い。でもとても、もうひと眠りする気分にはなれなかった。仕方がないのでいつもよりゆっくりと身支度を整え、朝のカフェのオープン時間を待つ事にした。
歯磨き洗顔、着替え等を済ませ、あとは髪をまとめるだけ。ドレッサーの椅子に座り黒いヘアゴムに手を伸ばした時、ふとその隣に置いている別のゴムが目に止まった。
いつもならこれを学園に付けていこうなんて考えないだろうけど、今の私のメンタルはいつもとは違う…言うなれば不安定。
「…学園に髪飾りに関する制限は無かったはずだし、今日ぐらい可愛いやつ付けて行っても良いよね?」
部屋には私しかいないので勿論返事は返ってこない、いいんです独り言ですもの。
モヤつく気持ちを少しでも変えたくて、私は以前城下町で購入した石のついたヘアゴムでポニーテールを作った。
朝ごはんを食べに行ったカフェではトレーをびっくり返してしまい、ミラさんに心配されたけど笑って誤魔化す。改めて用意してもらった朝食を飲み込むと、気持ちがちょっと軽くなった気がした。
いつもより早めに教室に行き、順番に登校してくるクラスメイトに挨拶をする。しばらくしてからフルール様が教室に入ってきて私に微笑みかけ、そのままこちらに向かって進んできた。
「トゥシェさん、おはようございます。」
「おはようございます。」
何気ない会話をしていると、フルール様が何かに気づいたように私の頭の上を見つめた。
「そのヘアゴム素敵ですね。」
「!ありがとうございます!実はこれ、少し前に城下町に行ったときに買ったんです。」
「…城下町に?」
「はい、中間試験の翌週ぐらいに行ったんです。フルール様とまわった場所とは違うエリアに行ったんですけど、その時お財布すられちゃて…でも、フリュ殿下が助けてくださったんです。」
「え?」
フルール様は私の話を聞きながら大きな瞳をぱちくりとさせた。本当に綺麗な瞳だよね、キラキラとした黄緑色のペリドットみたい。
そうか、私このヘアゴムの飾りを素敵だと思ったのは、フルール様の瞳と似ているからだったのね。だから一目で気に入ったんだ。そのヘアゴムを彼女に褒められて、なんだかほっこり嬉しくなる。
それから流れで、フルール様に先日の城下町での出来事をいっぱい話した。私の盛り上がりが凄いせいでフルール様は聞き役に徹するしか無かったみたい。彼女は所々で相槌を打つだけで、向こうから私への質問はされる事は無かった。質問をする必要がない程に私が喋ったというのも否定はしませんが。
始業の鐘が鳴り、しぶしぶ会話を終了する。城下町の話をしたおかげで気持ちが明るくなり、私の中の今朝起きた時の不安な出来事の存在感を薄れさせてくれた。
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