2度目の城下町は開拓といきましょう 6
お腹の膨れ具合も落ち着いてきたので、そろそろお店を出る事にした。次の目的地を聞かれたので、ポシェットから先生にもらったメモを取り出す。この中でまだ行っていないお店は3つ程だった。
「ここと、こことここに行こうと思ってます。」
店内を指差しながら殿下達にメモを見せる。2人は私の指先を目で追った。
「その店なら全部知っています、案内しましょうか?」
「良いんですか?」
「良いんですよ!フリュ様がこう仰っているんです、任せてください。このメモに書いてある店、全部知ってますし。」
全部!?さっきほぼ全員と面識があるって言ってたのは誇張してた訳では無さそうね…別に疑っても無かったけど。
「じゃあ、お言葉に甘えて…よろしくお願いします!」
満面の笑みを添えてお願いした。殿下もなんだか嬉しい顔をしている気がする。どこからまわるか相談してから3人で唐揚げ店を出た。本当に美味しかった…また来よう。
「…唐揚げをボール村まで届けるのって、この世界の技術では難しいんでしょうか。」
「届ける事自体は出来ても味や食後の体調の保証は出来ないでしょう。唐揚げとは異なりますが、鶏肉を用いた保存食を取り扱う店があります。もしお気に召したらそちらをボール村に届けてはいかがですか?」
「それめちゃくちゃありです。そのお店にも案内お願いしてもらって良いですか?」
「勿論です。では進んでいきましょう。」
そして、2人に案内してもらいながら私はスリ騒動前よりも沢山のお店をまわった。行く所のほぼ全てで声をかけられ、さも当然のように会話をするフリュ殿下。最早フード被って顔隠す意味あるの?って聞いたら、「万が一顔がばれている他国民やよからぬ考えの人物に遭遇したらややこしい事態になりかねませんから」とスエテさんが苦笑いした。
「フリュ様、スエテさん!今日は可愛い女の子連れてどうしたの。」
朗らかな声がする方を向くと、アラサーくらいの綺麗な女の人がこちらに笑いかけていた。彼女の側にはアクセサリーやブローチの並ぶ屋台。殿下達がそこに寄っていくので慌ててついて行く。
「こんにちはリザさん。彼女は僕の友人のトゥシェ=ルルーさんです。偶然会ったので、この辺りを案内してるんですよ。」
ゆっ、友人!?いつの間に私達は友達になったの?まぁ…微塵も嫌な気はしないし、むしろこんな出来たお方に友達認定していただけるとか光栄ですけど。
「なーんだお友達かぁ、殿下にも春が来たのかと思っちゃったじゃない。ま、お友達も大歓迎だけどね。トゥシェちゃんだっけ?せっかくだしうちの商品見て行ってよ。殿下達はこういう飾りに興味がなくて買ってくれないんだよ。」
返事をする間もなく、ほらほらと腕を引かれ屋台の前に立つ。近くで見ると、遠目では見えなかったヘアゴム等も置いていた。ネックレスやブレスレット、イヤリング。値段からしておそらく本物の宝石では無いんだろうけど、どれもキラキラしていて素直に素敵だと思った。
ついつい物色してしまう。後から追いついてきた殿下とスエテさんもいろいろ見ている。ふと、殿下の視線の先にあるヘアゴムが目に止まった。
「綺麗…。」
「トゥシェちゃんお目が高いね。それは昨日仕入れたばかりのヘアアクセだよ、付いてる石が良いだろ?」
「ええ、とても。一目で気に入っちゃいました!」
商品をそっと手に取る。親指サイズの黄緑色の、ペリドットのような石がアクセントのヘアゴムだ。値段を確認すると全然買える範囲だった。普段髪を括るヘアゴムは地味な物ばかりだけど、たまにはこんな可愛いヘアゴムもつけたいかも。
「これ、買います!」
「まいどあり!」
お代を払って、小さな紙袋に入れられたヘアゴムを受け取る。その様子を見てフリュ殿下もなんだか嬉しそうだった。リザさんの屋台から少し歩いて保存食のお店に到着。お店の人や2人に相談して味見して散々吟味して、やっと村へ贈る物を決めた頃には空の色が変わり始めていた。
「フリュ殿下、スエテさん。今日は本当にありがとうございました!私、城下町をいっぱい開拓した気分です!贈り物も一緒に選んで頂いて…家族からの感想、またお伝えしますね。」
「僕も今日は楽しかったです。…贈り物を贈りたい相手に贈れる事は幸せな事です。感想お待ちしています。」
「…はい!」
フリュ殿下の言い回しにちょっと引っかかったけど、わざわざ聞き返すほどでも無いかなぁと思った。お父さんお母さん、伯父さん伯母さん、ラン…喜んでくれると良いな。
…あ。
「…何度もごめんなさい、最後にもう一件だけ行きたいお店がありました。時間も時間なので行き方だけわかったら自分で行きます、道のり教えてもらって良いですか?」
「一件ぐらい案内しますよ?」
「多分ここからだと遠いので大丈夫です、西エリア方面なので…。」
「構いませんよ。で、どこの店ですか?」
…結局、最後の店もフリュ殿下とスエテさんに案内してもらうだけでなく、荷物の量や距離や疲労を理由に帰りの馬車にまで乗せてもらってしまった。
まぁ、私も新しい友達が出来たので良しとするか。




