2度目の城下町は開拓といきましょう 1
時の魔法の実技部屋。私は今、この場所で鼻歌混じりに魔法に関する書物を読んでいる。
「今日はずいぶんと機嫌が良いね、何かいい事あったの?」
机を挟んで対面に座り、別の書物を読んでいるオルロージュ先輩が私の方に顔を向けて尋ねてきた。ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました!
「先週あった中間試験、全教科平均点より余裕で上の点数だったんです!」
私は立ち上がって、先輩に向けて全力のドヤ顔を見せた。
この学園は前期後期の2学期制で、それぞれの学期に中間試験と期末試験が実施される。中間試験は座学のみ、期末試験は座学と実技の両方の試験、その中の後期中間試験が、先週行われたのだ。私にとっては初の試験、今週になってそれぞれの試験結果が発表、返却されたんだけど、私の点数は自分の予想よりもはるかに良かった。
「ふぅん、良かったね。順位は何人中何人だったの?」
「72人中20位ですけど。」
「俺、69人中5位だったよ。」
なっ…!?
「先輩ついこの前まで不登校だったじゃないですか!なんでそんなに頭いいんですか!?」
「俺って要領がいいから、ちょっと勉強したらすぐに理解出来ちゃうからね。20位でドヤ顔されてもな〜。」
うっわ、腹立つ〜!からの恥ずかしい!1分前の私、今すぐドヤ顔閉まってくれ。
オルロージュ先輩と魔法実技を行うようになって数週間、なんとなく彼のことがわかってきた。
まず頭が良い。書物で疑問に思う事があって尋ねるとすぐ答えてくれる。次に魔法も上手い。ひとつしか歳が違わないのに、彼は膨大なはずの時の魔力いとも簡単に操る。そして気さくで話やすい。貴族特有の堅苦しさも無いし、フラム殿下のように傲慢な素振りも無い。でも弁える所はちゃんとわかっていて、以前グリモワールさんが時の魔法の実技部屋に訪れた時は言葉も態度も丁寧に接していた。
距離が近くて必要以上に褒めてくる時もあるけど、女の子を口説くのは多分癖のようなものなのだろう。私もだんだん慣れてきて、適当にあしらえるようになった。褒めるだけじゃ無くて、今みたいに茶化してきたり冗談を言われる事もしばしば。おかげで私の彼に対する警戒心は薄れていき、親しみやすさからか、お貴族様相手なのに様付けをせずに先輩呼びが定着してしまった。咎められる事も無いのでずっとそれで通している。
「まーまーそんな怖い顔しないでよ。そうだ、トゥシェちゃん中間試験20位のお祝いに、オルロージュ先輩がこの後城下でおすすめのお店に連れて行ってあげよう。」
「いや結構です。」
「即却下って酷くない!?」
「先輩と城下町なんて行ったらチャラ男の本領発揮されそうなんでお断りします。ここは学園なんでたま〜に距離近いくらいで済んでますけど、それ以上近づかれるのは御免です。また一発食らわせますよ?」
見せつけるように自らの右膝をシュッシュと突き上げる。先輩はそれは困るなぁと眉を八の字にした。
「それに、今日はこの後ヴァン先生との補習があるんです。どちらにせよお誘いは受けられません。」
午後の授業時間終了の鐘が鳴る。私は読んでいた書物に栞を挟んで閉じた。
「トゥシェちゃんは真面目だね。試験終わったばかりで成績も悪くないのに、わざわざ補習受けに行くとか。しかも放課後。」
「当たり前です。今回のこの成績はヴァン先生の補習のおかげですもん。先生が私の為に時間を作ってくださってるんだから期待には応えたい。それに、試験で解けなかった問題について教えてもらうのは早い方がいいでしょ。という事でお先に失礼しまーす。」
「俺とデートするより補習、か。釣れないなぁ。」
先輩がなんかぼやいてるけどいつもの事なので無視。栞を挟んだ書物を持ち、私は実技部屋を後にした。




