フルール様の屋敷でお茶会です 6
……へ?
「…綺麗?私が?」
「そうだよ、何回も言わせるな…。」
言われた事への理解が追いつかなくて思わず聞き返す。殿下は真っ赤な顔のまま、また私から視線をずらしてぽりぽりと頭をかいた。なにこれ誰。
褒められたのは嬉しい。せっかくのドレスアップだもん、普段より可愛く見えてほしい。でもこんな風に褒められるのはこそばゆいな。なんか、照れる。
「…殿下の服装も、制服以外見るのは初めてなので新鮮です。様になっててかっこいいと思います。」
「!?そっ、そうか!!?」
褒められたので褒め返してみる。でもお世辞とかでは無くて、シンプルに思った事を伝えた。そしたら凄い勢いでまた私の方に顔を向けたんだけど、めっちゃ目見開いてるしさっきより更に顔が赤い気がする…ここに来る時に早足だったから?いや、それだと落ち着いてくる頃のはずだよね。
「失礼します、飲み物とお菓子をお持ちしました。」
やや勢いよく、私たちの前にティーカップとクッキーがのったお皿が並べられ始める。並べているのはスクレさん。…なんかめっちゃ機嫌悪くないですか?動きに無駄がないのは流石だけど無表情だし、まとうオーラ的なものが怖い。そうですよね、いくら主人の命令?とは言え、自分の主人の婚約者と別の女が2人で飲むお茶を用意するなんて嫌ですよね!ごめんなさい!!
スクレさんと一緒にお皿を並べる男の人と目があう。あれ、この人さっきいたっけ?
私の視線に気づいたのか、執事服のようなもの見に纏う彼は手を止めてこちらに一礼した。
「お初にお目にかかります。私、フラム様の側近をしておりますシュポール=ド=ゴダールと申します。以後お見知り置きを。」
「は、はじめまして。私はトゥシェ=ルルーです、よろしくお願いします!」
慣れないドレスと靴ですぐに立ち上がれなかった為、座ったまま一礼を返す。
自己紹介をしている間にお皿類は全て並べ終わったようで、スクレさんは私達から少し離れた場所に移動した…オーラはそのままに。シュポールさんは殿下の斜め後ろあたりに移動した。
出されたお茶はスッキリとした味わいで、ややお腹が満たされていた私でも問題なく飲めた。殿下の分はアイスティーになっていたみたい、すぐに飲み干してシュポールさんにおかわりを要求している。
「殿下喉乾いてるんですか?顔もずっと赤いし…もしかして、熱!?」
「違う!…違うこともないが、体調不良とかそういった類じゃないから気にしないでくれ。」
「…そうですか、わかりました。あっこのクッキー柑橘風味で食べやすい。」
見るからに暑そうなんだけどな、本人が否定するならきっと大丈夫だよね。気にするだけ損と割り切って、出されたクッキーをいただくことにした。
同年代の男の子、しかもイケメンに綺麗なんて言われるのは初めてで、実は柄にも無く少しときめいたの。ランは私に綺麗とか可愛いとか言う事が無かったし、フラム殿下ほどのイケメンでも無い。そう、察しの通りこういう事態に私は全く慣れていない。だからこの状況が、雰囲気がとてもムズムズして、フルール様はやく帰ってきてと心の中でめちゃくちゃお願いしながら、殿下との会話を続けた。
殿下はいつもと違ってグイグイ来る様子が無かったので、場が静まらないように私から話題を提供しないといけなくてそれも骨が折れた。もしかしてフルール様がいないから、間取り持ち役の私に積極的に話す必要はないと判断した?それならそれで良いんだけど、勝手が違うから私の調子が狂う。
何分経ったんだろう。ようやく、こちらに向かって通路を歩くフルール様達の姿が見えてすごく安堵した。やっと解放される…!ガゼボに戻ってきたトリオは、私に薔薇園の美しさとフルール様の薔薇園にかける情熱的な物について早口で語ってくれた。フルール様はというと、殿下と少し話をして後は私たちの会話を聞いていた。
そして今回のお茶会はお開きとなった。最後がちょっと腑に落ちないけど、またフルール様のお屋敷に来られる口実が出来たと思って不服な気持ちに蓋をする。フルール様と一緒にトリオを見送った後、私はドレスを着せてもらった部屋で元の服に着替えた。ドレスや装飾品を外した時、開放感と共に少し寂しさも感じる。12時の鐘が鳴り終わった時のシンデレラってこんな気持ちだったのかな、なんて思った。




