午後の過ごし方リニューアルです 1
ヴァン先生の補習が終わり、寮への帰路に着く。本来なら帰りは通らないんだけど、なんとなく気になったので遠目からチラッと時の魔法の実習部屋周辺を見に行った。
「…流石にいないか。」
万が一赤毛のイケメンがあのまま転がってたらどうしよう…という考えは杞憂だったみたい。そりゃそうか、あれから数時間経ってるもんね。
「かーえろっと。」
あの出来事は一旦忘れよう。
自室に戻った私は、何事もなかったかのように勉強をしたり、本を読んだりして今日を締めくくった。
次の日の朝登校すると、既に登校していた御令嬢トリオとフルール様が何やら盛り上がっていた。トリオのひとり、スザンヌ様が私に気づいて楽しそうに手招きしてくる。
「皆さんおはようございます!何か面白い事でもあったんですか?」
「おはようございますトゥシェさん。ええ、とても面白い事ですわ。なんてったって、フルール様のお屋敷で開催されるお茶会の話ですもの!」
「ああ…昨日話してたやつ!そんなにワクワクするものですか?」
確かに楽しみではあるけど、トリオが遠足前日の夜の小学生なテンションだからつい聞いてしまった。そこに食い気味に「当たり前ですわ!」と言ってきたのはシャルロット様だった。
「モーヴェ公爵邸の庭園はあらゆる草花で彩られ、王宮に次ぐ美しさと評判ですの。お庭の手入れにはフルール様自身も積極的に参加されていらして、特にフルール様が熱心に手入れされているという薔薇園はこの世のものとは思えぬほど美しいと…。」
「私達も評判は以前から知っていたのですが、実際に見れるのは初めてなので…それに、私達とフルール様では、身分的に夜会でもゆっくりお話する事が難しいのです。このような機会を作っていただいた事で、学外のフルール様と沢山お話し出来ますわ。本当に嬉しいです。」
言葉通りに嬉しそうな顔をするオリヴィア様。聞き役になっていたフルール様も嬉しそう。
「ところでトゥシェさん、そのお茶会なんですが日程は来週末の休日でもよろしいですか?この日だと私達4人は都合がつくのですが、トゥシェさんは予定などありますか?」
「私、全然いつでも大丈夫です。基本暇してるんで。」
「では決定ですね!楽しみですわ〜。」
授業が始まる。昨日の補習で教えてもらった事を振り返りながら聞くととても理解できた。午前の授業が済んだらフルール様とランチ。いつものようにカフェ裏のベンチに腰掛ける。そして恒例のフラム殿下乱入。
何ら変わりなく過ぎる時間。そんな中、普段と様子が異なる人物がいた。
「トゥシェ…赤毛の男には会ったのか。」
その人物ーフラム王太子殿下は、いつものようにグイグイではなく恐る恐ると言った感じで私に聞いてきた。そういえば昨日気をつけろー的な事言われたっけ、確か赤毛に黄色い瞳の男…だっけ?
「…あ。」
昨日の壁ドン顎クイイケメン、まんま当てはまるじゃん。
私の表情の変化に気づいたのか、恐る恐るだった殿下がグイグイモードの通常運転にシフトチェンジした。
「会ったのか、会ったんだな!?何もされなかったか、大丈夫だったか!?」
めっちゃ心配してくるじゃんどうしたの。何かされた…のは、されたな。隠す必要性もないし黙っててもしつこく聞いてきそうだから、昨日の出来事言っとくか。
昨日の午後に実技部屋の前であった事をざっくりと説明した。最後に一発くらわせたことを言った時、フルール様はクスッと笑い、殿下は青い顔をして自身を両手でサッと隠した。いや、今やんないから。
「あの瞬間は殿下の言ってた事全く頭になかったんですけど、今振り返ったら殿下の言う特徴通りの人でしたね!殿下あの人の襲来予測してたんですか?」
「…まあな。あいつはそういう奴だから…。」
予測してたということは、彼と殿下は面識があるのだろう。イケメン×イケメンか、並んで立ってるところ観察したーい!てか『そういう奴』って言ったな。やっぱりあの人誰にでもあんな感じなのね、蹴っといて正解だったな。
「お前、今日の午後は何するんだ?」
「えっと、今日はヴァン先生も学園長先生も手が空いてないから、図書館に行くつもりです。」
「そうか。だったら問題無いと思うが、時の魔法の実技部屋には近づくな。」
「えっなんでですか?それ殿下が決める事じゃ無いでしょ。」
「それは、そうかも知れねえけど…とにかくもう行くな、わかったな!?」
「いやわかる訳ないでしょ…って、殿下?殿下ぁぁあー!?」
私の返事を聞こうともせず、フラム殿下はスッと立ち上がってどこかに行ってしまった。




