ようやく会えたあなたは予想外でした 3
「…ずるいですわ。私だって、ドレス姿のトゥシェさんとお茶会したかったです。」
「でもフルール様、あの日は王城に用事があるって…。」
「ええ、だからどうしようもなかったのです。次こそはリベンジさせて下さい、私セッティングしますので。勿論オリヴィア様達も招待しますわ。」
「良いんですか!?光栄でございます!」
フルール様がなんだか不貞腐れているようで可愛らしく感じた。お茶会リベンジ宣言に自分も誘われた事に嬉しそうなオリヴィア様につられ、私も笑顔になった。
そうこうしている間に授業が始まる時間になり、私達は会話を切り上げ各自席に座り教材を開く。この1か月で最も大変だったのは間違いなく勉強だ。ただでさえ遅れている上に取り扱う内容はハイレベル。でも以前よりは随分理解できるようになった。毎日復習と自己学習をしているのと、週2回、午後の時間を使って行われるヴァン先生の補習のおかげだと思う。
午前の授業が終わり、フルール様とのランチタイム。いつものようにカフェ裏に向かうと、今日は既に鎮座されていた。
「ご機嫌ようフラム様。」
「…ご機嫌よう。」
「よう。今日は俺の方が早かったな。」
ベンチに座り、私達に向かってにこやかに手を振るフラム王太子殿下。
最初の方はどこかでランチを済ませてからこの場所に来ていたのに、最近では殿下もここで一緒にランチをするようになってしまった。どうしてこんな事になってしまったのか本気でわからない。しかも困った事に、3人横並びで座れる広いベンチでの配置は、決まって私が真ん中なのだ。これは流石にフルール様的にもアウトでしょ…!って思って、何度もそれとな〜く私側のスペースを狭くしてるのに、殿下は絶対にその狭い隙間に割り込んでくる。
でも今日は、先に殿下が座り済み。という事は着席位置をこちらで決められる。良かった、これで婚約者同士の間に割り込むヤバい奴にならなくて済むぞ…!
気持ちフルール様よりゆっくり歩き、先にフルール様が殿下の隣に座れるように配慮した。
…のに。
グイッ
「お前は、ここ。」
…何という事でしょう。フルール様着席前に殿下に腕を引っ張られ、有無を言わさず殿下の隣に座らされてしまいました。恐る恐るフルール様の顔色を伺うと、なんと笑顔である。いや、何故?
学園生活が始まってから私はほぼ毎日このカップルを見てきた。そして思った。2人は決して仲が悪い訳では無い、お互いを無視したりしないし悪口を言ったりもしない。でも愛し合ってはいない気がする。
幼い頃に決められた婚約者で、本人達の意思はそこには無いのかもしれない。でも、今後生涯を添い遂げる相手なのにそれは何だか悲しくないか?
そして更に思った。このカップル、間に私というクッションを入れる事で関係の再構築をしようとしているのでは…!?そう考えると、今の謎配置もなんとか納得出来る。
でもね殿下。フルール様とちゃんと向き合う為には、クッションじゃなくてもっとフルール様本人に話しかける必要があると思うんです。ほら、まーた私にばっかり話しかけて、それじゃ駄目ですよ。
対してフルール様は、この光景を見ても終始笑顔。程よく会話に入っては黙るの繰り返し。フルール様は表情を崩さないし、この状況に対して思う事もあるはずなのに私に何も言ってこない。それが逆に怖い。
フルール様のこと好きだから彼女に嫌な思いはして欲しくない。フルール様がハッキリ気持ちを言ってくれたら、私も流されるだけじゃなく何かしら行動が起こせるかもしれないのにな。
そうだ、昨日あったらしいパーティーの話題からフルール様の話題に持っていこう。良い感じに会話の橋渡しがしたい。
「そういえば、昨日王城でパーティーがあったんですよね。王城って事は殿下参加してたんですよね。」
「そりゃあ勿論。別に何の代わり映えもしないただのパーティーだった。」
「ただのパーティーって…参加してたフルール様どうでしたか?絶対に綺麗だったでしょ?」
「いや、別に。」
別に…別にって、なに!?そんな訳無いじゃん、お人形さんみたいに可愛いフルール様のドレス姿だぞ!?
「何言ってるんですか?フルール様こんなに可愛いんだから、ドレス姿とか綺麗に決まってるでしょ!てかドレス着て着飾った女の子が綺麗じゃ無い訳無いでしょ!」
私はドレスなんて着こなせない田舎娘だから除外だけどね!!
「…お前、オルみたいな事言うんだな。」
「……おる?」
人名?愛称か何かかな、聞いたことない名前。
私が聞き返すと殿下はハッとした顔になり、真っ直ぐに私を見ながら言った。
「トゥシェ、赤毛に黄色い瞳の男には気をつけろ。何かされたらすぐ俺に言え。わかったな?」
「えっ、なんでですか?」
「…なんでも良いだろ!とにかく、気をつけろよ。」
なんでそんな事を言われたのかサッパリだった。けど、殿下があまりにも真剣だったので思わず首を縦に振ってしまった。




