初めての城下町散策です 7
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【ランドルside】
俺は言った、絶対忘れてやらないと。
そしてこうも言った、王都からいいものを届けろと。
そして今日届いたソレは、この辺ではなかなか手に入らない上質なモノだった。だったんだが…
「なんで靴紐なんだよ!!!?」
トゥシェが村を出てそろそろ2週間が経つ。アイツは約束通り、王都から俺宛にいいものを送ってくれた…靴紐だけど。
彼女の実家と我が家宛にクッキーと紅茶も届いたが、個別の贈り物があったのは俺だけだった…靴紐だけど。
なんでそうなるんだ?アイツのなんとも言えないセンスはなんなんだ、靴紐送るなら靴そのもので良くないか?でも、俺は昔から靴紐をすぐ駄目にしてしまうから、正直とても有難かった。今の靴の紐だってそろそろ千切れそうだ。
靴紐と共に手紙も添えてあった。どうやらこの贈り物達は友達になった公爵令嬢と出かけた時に買ったらしい。正直、この短期間でそれ程に親睦が深い友達が出来たと知って安心した。いくら魔力が強い彼女であっても、金持ち貴族の学園では完全にアウェイだ。馴染めずに孤立してしまったり、虐められたりするかもしれないと肝を冷やしていた。…まぁ後者の場合、トゥシェなら雑草根性で切り抜けそうな気もするが。
公爵令嬢のフルール?様以外の同級生ともうまくやっているらしい。と、言うことは当然男もいるよな。万が一、その中でトゥシェに好意を持つ奴が出てきたら…?
全身をブワッと寒気が襲い背中に汗が伝う。
あり得ない話ではない。
トゥシェ自身は自覚が薄いけど、アイツはとびきり可愛いんだ。ぱっちりと星空を宿したラピスラズリの瞳に、健康的な艶のある肌。さらさらとなびくセピア色の髪は、風が吹くたび光に照らされ琥珀色に煌めいて。何よりあの弾けるような太陽の笑顔。そして天真爛漫で快活な性格。あれで落ちない奴がいるのか?
…流石に言い過ぎか。惚れた弱み的な、恋愛フィルター的なものがかかっているのかもしれない。
でも本当に不安なんだ。
俺達は生まれてからずっと一緒だった。これからもずっと一緒にいるんだと、それが当たり前だと過信していた。
トゥシェとこんなに会わない、会えないのは初めてなんだ。いつだって俺の手が届く場所で笑っていた彼女が、今はどんなに手を伸ばしても届かなくて…見えなくて。掴めるものは空虚ばかり。
「…会いたい。」
溢れる想いも、彼女に届く事はない。
どうして俺には魔力がないのだろう。魔法を使う事が出来ないのだろう。
ほんの少しで良いんだ。魔法さえ使えたら俺も学園に編入して、他の男が彼女に寄り付かないよう、全ての男達に向かって威嚇してやるのに。2人の王子とも関わるようになった?関係ない、相手が誰であろうと、トゥシェを譲る気はさらさらないのだから。
窓の外には彼女の瞳と同じ空が広がっていたが、その空でさえ掴む事が出来なかった。




