初めての城下町散策です 4
フルール様の後ろにスクレさんも続いたので、私も慌てて追いかける。2人が止まったのは、フードを被った人物と男性の2人組の前だった。
「フリュ様ご機嫌よう。こんな所でお会いするとは思いませんでしたわ。」
「ご機嫌ようフルール様。僕も驚きましたよ、屋敷にいらっしゃらなかったので、今日はもう会えないと思っていました。」
「あら、私と会う事を楽しみにしていてくださったの?」
なんか、えらく親しげだな。
後方からチラッとフードの内側を覗き見る。被り物のせいで少し影になっているけれど、プラチナブロンドの髪にアクアマリンの瞳が整った顔立ちを彩っている、とても美しい少年が見えた。でも待って、この顔どこかで見覚えが…。
少年と目が合った。しまった、またガン見してた…この癖直さなくちゃな。
「…貴女が時の魔法使い、トゥシェ=ルルーさんですね。」
「えっ、あっハイ!そうですけど…?」
待って、なんでこの人私の事知ってるの!?状況が飲み込めないぞ?
「初めまして。僕の名前はフリュ=トゥール=ド=ソルセルリー、この国の第2王子です。貴女の噂はかねがね伺っています。」
「え。」
…え???
まさかの第2王子様!?!?確かにそれなら、第1王子のフラム様の婚約者であるフルール様と親しいのは理解できるけど…なんでそんな人がこんな所に?しかも私、なんか噂になってるの?
既視感があったのは、どことなく顔つきがフラム王太子殿下に似てるからだったのね。
「私って有名人なんですか?」
ぽろっと口から溢れた言葉に周囲は呆気に取られていた、なんで?
「…サントル魔法学園は基本的に編入制度を取り入れていないのです。しかし今月、数十年ぶりに編入生が現れ、しかも平民だった。それだけでも十分噂になり得るところに、編入の理由が時の魔法の使い手だからとなると当然注目の的になりますわ。」
「加えて兄上の婚約者であるフルール様と親しいときたら、話題の中心になるのはどう足掻いても逃れられませんね。」
「確かに客観的に情報並べたら、めちゃくちゃ注目される条件揃ってますね私…。」
ここにいる人達の育ちがいいから会話のみで済むだけで、村の人達相手なら今更気づいたんかい!って腕でビシッと突っ込まれそうな状況じゃん。思わず苦笑いだわ。
「…ところで、なんで王子様がそんな格好をして街中に?」
我にかえって頭によぎった疑問を投げかける。フリュ殿下は少しだけ間をあけて口を開いた。
「…城下を散策するのが好きなだけです。」
それを聞いてフルール様はクスッと笑った。
「フリュ様は折を見ては街に出て、国民の生の声や王宮ではわからない空気を味わう事がお好きなのです。そしてそれらを今後の国政に活用できるように掛け合っておられます。武力、魔力、政治力の全てにおいて優れておいでで、魔法に関しては水と光の2分類を操られます。殿下は、14歳にして既に多くの国民から信頼されているのですわ。ただ…」
「ただ?」
「…口下手と言いますか、政治的なことや社交辞令から離れると、人と接するのがあまりお得意ではないのです。」
「全部聞こえてますからね?」
「これは失礼しましたわ。」
少し口元をへの字にするフリュ殿下と微笑むフルール様。2人の間にはなんだか穏やかな空気が漂っていて、見ているこっちまで気持ちが温かくなった気がした。
「お嬢様、そろそろ行きましょう。靴屋の主人がお待ちですので。」
「それもそうね、フリュ様、それでは私たちはこれで失礼します。」
「はい、お気をつけて。」
「失礼します!」
おかしいな、同じ『失礼します』のはずなのに、どうして私の『失礼します』は運動部の下級生みたいになるんだ?やっぱり育ちなの?
それにしてもフラム殿下とフリュ殿下、顔は似てるのに醸し出す雰囲気が違いすぎる。フリュ殿下はどちらかというと、なんだかクールな印象だったな。ひとつ歳下とは思えなかった。
「トゥシェさん。」
「はい?」
「フリュ様はとても素晴らしい方です。ですが、フラム様もそれに負けず劣らずの努力家で勤勉で、大変素敵なお方ですわ。ちなみにフラム様は炎の魔法をお使いになりますの。」
「はぁ。」
弟よりも自分の婚約者の方がカッコいいんですよーって、アピールしたいのかな?私グイグイ王子の話題は求めてないんだけどな。




