初めての城下町散策です 3
「ちょっと、どういうことですか!?」
ここでようやく時間がとれたので、私は先程までの謎行為について尋ねる事が出来た。のに、当事者は2人ともキョトンとしている。
「フルール様の靴、買いに来たんですよね?靴屋さん行ってないじゃないですか!それに行く所行く所私ばっかり色々試して…今日はフルール様のお買い物ですよね?」
そういうとフルール様は分が悪そうに苦笑いをし、スクレさんはキョトン顔のまま視線をフルール様の方に向けた。
「…お嬢様、私が聞いている話と少し違うようですが。」
話が違う?どういうこと?フルール様を見ると更に分が悪いといった表情をしていたが、私達の視線に限界を感じたのか口を開いた。
「…だって、普通にお買い物に誘ったら、トゥシェさん一緒に来てくださらないと思ったんですもの。今はまだ必要ないかもしれませんが、サントル魔法学園に在籍している限り、いずれドレスや装飾品が必要になる時が来ます。その時に貴女に困って欲しくなくて…私がサポートしたいと思ったのです。」
そうだったんだ。確かに、私用のお買い物行きましょうだけだったら気後れして断ってたな。そうならないよう、フルール様にはフルール様なりの考えがあったのね。
「お嬢様はこう仰っていますが、純粋にトゥシェ様と出かける事をとても楽しみにしていらっしゃいましたよ。立場上、他の御令嬢からも一線引かれた関係しか築けず、やっと心置きなく一緒に過ごせるお友達が出来たのです。昨日の夜なんて、何を着て行くか決まらないと何着もお洋服を試されていました。その都度片付けさせられるこちらの立場はもう大変で…。」
そうなの!?昨日の私と一緒じゃん!フルール様に視線を移すと、彼女の顔がぼっと赤くなった。
「ちょ、私そんな言い方してない…それにどうして服のことばらすのよ…。」
「何年お側にいると思ってるんですか、そのくらいお見通しですよ。」
「お待たせ致しました、ダージリンが2つとアールグレイでございます。」
真っ赤なフルール様にぽかぽかされるスクレさんは、涼しい顔で届いたダージリンティーを飲んでいる。ぽかぽか可愛い。フルール様ってこんな一面もあったんだ。
私、彼女は隙がない完璧な貴族の御令嬢なんだと思ってた。でも実際は隙がないんじゃなくて、隙を見せない様に振る舞っているのかな。本当のフルール様は、私が思っているよりも普通の15歳の女の子なのかもしれない。そう思うと、今でも大好きな彼女のことがもっと好きになった。
その後、届いたケーキに舌鼓を打ちながら、スクレさんがしてくれるフルール様の秘蔵話を沢山聞いた。話題の当事者は勘弁してくれって感じだったけど、私の知らないフルール様を知る事が出来て嬉しかった。私も、住んでいたボール村の事、家族や幼馴染のランの事をいっぱい話した。
フルーツタルト、美味しかったな。紅茶もあんな上品な味のものは初めて飲んだ。添えてあったクッキーもナッツが効いて絶品だったし。…そうだ!
「すいません、ちょっと買い物して行ってもいいですか?」
最後にもともと行く予定にしていた靴屋さんに行きましょう〜と席を立ち、そのまま店を出ようとする2人にストップをかける。2人は勿論と言いつつ頭の上にハテナを浮かべていた。
私は店頭のスタッフさんに声をかけ、先程のクッキーと紅茶の賞味期限や郵送日数、金額を確認する。手持ちのお金で足りそうだし、期限も問題無さそうでホッとした。
実は寮の部屋にはグリモワールさんが好きに使っていいよと手紙を添えたお金が大量にある。けれど今日鞄の中に入れてきたお金は、村にいた時に自分で貯めてたお小遣いと、村を出る時に足しにしなさいと両親に渡されたお金だけ。これ以上グリモワールさんに借りを作りたくない。両親からのお金だって、大人になったら返すつもりなんだから。
実家とランの家宛にクッキーと紅茶を郵送するよう手続きをしてお金を払った。まさか、王都に来て最初の買い物が故郷宛のプレゼントになるとは…。まあいっか、自分でそれがいいと思ったんだし。
「お待たせしました〜。」
出入り口の手前で待つ2人に声をかける。買い物と言っていたのに何も持っていないのは何故か尋ねられたので、故郷宛に届けるようにしたことを伝えると、どちらも一瞬目が点になったけどすぐに笑顔を見せてくれた。
「さっ、靴見に行きますよ、靴!」
ケーキショップから出て、スクレさんの案内について行く。角を曲がった所でスクレさんが何かに気づいたように足を止め、フルール様にそっと耳打ちした。フルール様は驚いている様子だったが、耳打ちされた後ある方向に向かって真っ直ぐ歩き出した。




