私の魔法ってそんなに珍しいんですね 1
「あっいたいた、トゥシェさーん!!」
「グリモワールさん!」
王太子殿下とフルール様の関係に悶えまくっていると、遠くから私を呼ぶグリモワールさんの声が聞こえた。彼は小走りで私達3人のところまでやってきた。私、フルール様、王太子殿下の3人を見て、興味深そうな表情を見せた。
「これはまた、豪華な顔触れが揃っているね。」
「学園長先生、ご機嫌よう。」
「お勤めご苦労様です。」
「ご機嫌ようフルール嬢、ありがとうフラム殿下。盛り上がっているところ申し訳ないけど、トゥシェさんをお借りしてもいいかな?」
ポンと私の肩にグリモワールさんの手が乗る。いつの間にそんな近距離に来ていたんですか。
「勿論ですわ。このようなわかりにくい場所に彼女を引き留めてしまいお手を煩わせてしまったようで、申し訳ありません。」
「問題ないよ。トゥシェさんと親しくしてもらえるのは大歓迎だ。」
グリモワールさんが優しく答えた。視線がこっちに移る。
「それでは行こうか。」
「はい!フルール様、殿下、失礼します。」
ペコっとお辞儀して、グリモワールさんと共にその場を去った。
「それにしても、編入して初日に国の王太子とその婚約者と親しくなるなんて、やっぱり君は凄いね。」
「そうでしょうか…本当にたまたまなんですけど…。」
昨日言われた予定通り、今日の午後はグリモワールさんが学園内を案内してくれている。学園は寮なんて比じゃないレベルの広さで、ついて歩くだけでもなかなか大変だ。覚えられる気がしないなぁ…地図アプリが欲しい。
そういえば、あまり気にしていなかったが私は今、午後の授業をサボっていることになる。でも横に学園長先生ありきのサボりなので問題はないだろう。
「なんだか、午前中より賑やかですね。」
今は授業中のはずだ。でも午前中とは違い、多くの生徒の声が聞こえてくる。廊下を歩く生徒も少なくない。おかげで私達2人は注目の的だ。
「午前は先生方の講義が主だけど、午後は生徒中心の魔法の実技だからだね。同じ分類の魔法を使う生徒が集いその技術を高め合う。教員も自分と同じ分類の生徒の指導にあたるけど、得意とする分類に偏りがあるから常に指導をしている訳ではないんだよ。」
「そうなんですね…。」
通りがかった教室のドアの隙間から中を覗くと、数十人の生徒が水を操っていた。この部屋は水の魔法が使える人の集まりなのかな?
「グリモワールさ…」
呼びかけようとした時ハッとした。そうだこの人学園長じゃん、生徒がさん付けで呼ぶのは流石におかしくないか?
「…学園長先生は、何の魔法が使えるんですか?」
「得手不得手はあるけれど、一通り全ての分類の魔法を使えるよ。時と心以外はね。」
「時と…心?」
一通りとは何通りなのか気になったけど、付け加えるように言ったそのワードの方が引っかかった。
「この国の人間は全て、生まれ落ちた時既に魔力を持っているんだ。ただ魔力の量には個人差があって、生まれ持った魔力が小さい者は自分の魔法に気づく事なく、魔法を使う事なく一生を終える。魔法が使えない人が存在するのはその為だよ。
血筋や育つ環境によって得意とする魔法の分類が大方決まり、10歳までには何が出来るか細分化される。でも自分の魔法を極めれば魔力が向上して、それ以外のこともできるようになるんだ。自分が元々持っている分類を極めた後も更に魔法を極めると、他の分類の魔法だって使えるようになる。
私はそうやって、多くの分類の魔法を習得した。…でも、時の魔法と心の魔法は、この条件に含まれないんだ。」
「え?」
「時の魔法と心の魔法はその力を生まれ持った者しか使えない。同一人物の中で他の分類の魔法と共存できない代わりに、あらゆる運命を変えられる能力と莫大な魔力を神から与えられるのさ。そしてこの2つの魔法に血筋や育ちは関係がない。僅かな確率で突発的に発生する。だから、これらの魔法を使える人間は希少で重宝されるんだよ。」
長い語りでわかったような、わからないような…。ただ、ランのように魔法が使えない人も一応魔力を秘めているんだという事と、時の魔法を使う自分の存在がどれほど珍しいのかを理解した。




