魔法学園での生活が始まります 4
教室の反対側から響く声に、教室中が一気に静まり返る。
声の主は優雅に立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。
「貴族ではなく平民だから何ですか?ここは学舎です。知識と魔法を磨く場所、そこに身分は関係ありません。」
「いえ、その、私達はただ平民の身分でこの学園に通う方がいらっしゃることに驚きが隠せなくて…決して、辱めようとした訳では…。」
御令嬢トリオめっちゃ慌てだした。今私に背中向けてるけど青ざめてそう、声が震えてる。
「だとしても、まずは相手の方に名乗るのが礼儀でしょう。淑女の風上にも置けない行いです。」
御令嬢トリオはビクッとしてから、恐る恐ると言った感じで私の方に向き直した。
「オリヴィア=ド=シャリエと申します。」
「スザンヌ=ド=カルメルですわ。」
「シャルロット=ド=アルノワです。以後お見知り置きを。」
名乗られ、淑女の礼をとられた。様になってて流石だなと思ってしまった。
「騒がしくしてしまって申し訳ありません。私にも名乗らせてください。はじめまして、フルール=ド=モーヴェと申します。これからよろしくお願いしますね。」
御令嬢トリオがあけたスペースに一歩踏み出て名乗り淑女の礼をとった彼女は、この顔面偏差値異常な教室で一際目立っていた。
ふわふわとゆるいウェーブを描くローズピンクの髪は腰まで伸ばされたロングヘア。陶器みたいに白い肌。小ぶりな唇はぷっくりと愛らしく。少し釣り上がったペリドットの瞳は、彼女の醸す雰囲気を甘く柔くなりすぎないよう引き締めている。
これはまるで……
小説の悪役令嬢として出てきそうな美しさ!!!!いや、それ以上!!!!
「ト、トゥシェ=ルルーです!こちらこそよろしくお願いします!!」
淑女の礼なんてもの私にはわからないのでとりあえずペコペコしといた。
ペコペコ終了後にフルール様と目が合い、優しく微笑みかけられた。一瞬真顔でガン見された気がしたのは見間違いだろう。
そうしている間に鐘が鳴り、次の授業の時間となった。
午前中の授業が終わった。教科によって量はまばらではあるけれど、この午前だけでもわからないところがありすぎる。復習?出来るようしるしをつけたけど、しるしのない部分を探す方が難しいですね…赤点とらないようにするには相当の気合が必要だ。
グ〜…
こんな時でも私のお腹の虫は正直だ、うんお昼食べに行こう!
「トゥシェ様。」
動きだした瞬間凛とした声に呼び止められた。柔かなモーヴェ様だった。
「よろしければ…ランチ、ご一緒してもよろしいですか?」
編入初日の平民が貴族様からのお誘いを断れるはずもなく。お昼はモーヴェ様と食べることになった。この学園で食事の際、ほとんどの人がカフェを利用しているらしい。私達もカフェに行こうとなった。そこまでの道のりで改めて庇ってもらったことへの感謝を伝えると「自分が思ったことを言っただけで感謝されることではない」と言われてしまった。なんて心の広いお方でしょう。
などと喋っているうちにカフェに到着した。学園と寮の丁度間に位置するカフェは朝と同じ場所のはずなのに、今は多くの人で賑わっていた。
奥の方に空いている席を見つけたので、その場所に行こうと思った時、モーヴェ様が「そうだわ」と呟いた。
「トゥシェ様、私ランチに最適な場所を知っているんです。カフェで食事を受け取ってからそちらで一緒にいただきましょう♪」
「えっあっハイ!」
どゆこと?どこのこと!?
脳内にハテナを浮かべながら、何故か機嫌が良さそうなモーヴェ様の後をついていった。
「うわぁ…素敵!」
「でしょう?ただ屋外なので虫が出たり、天気に左右されてしまうの。だから誰か誘うのも躊躇ってしまって…。」
案内されてついた先は、カフェの裏側に位置する木陰の古びたベンチだった。遠くに花壇が見えて、そよそよと風が心地良い。躊躇う理由がわからない。秘密基地的な場所なの?いやそれなら、普段躊躇う場所に何故私を誘ったってなる。田舎者だから屋外とか虫とか平気でしょってこと?その通りですけど!
「躊躇うの勿体無いですよこんな素敵な場所なのに…どうして私を?」
「…トゥシェ様は、編入の都合で故郷を離れることになったのでしょう?ここなら自然がいっぱい感じられるので、貴女の故郷と通じるところがあるかも知れないと思ったんです。」
「モーヴェ様…。」
「モーヴェなんて堅苦しいわ、フルールと呼んで。」
本当にどこまで慈悲深いのだろうか。会ったばかりの平民娘にこんなに優しく接してくださる。女神は存在したのですね…ちょっと泣きそうになるのを堪えた。
「はい、フルール様!」




