まさかの再会に心臓が跳ねました 3
少しだけ長めになっています!
「っオルロージュ先輩!」
「今案内されてるのはあの幼馴染君だよ。トゥシェちゃんが行く必要は無いんじゃないかな。」
「ゔっ。」
確かに先輩の言う通りだ。でも、王城どころか王都すら全然知らないランをこのまま行かせるのは心配です…あれ?なんか戻って来た。
そう思った次の瞬間、肩に触れる手の感触が無くなって。横を見るとランが先輩の手首を掴んでいた。
「…わざわざ戻ってこなくて良いのに、さっさと着替えて来たら?」
「そうしたいのは山々なんですけど、虫は払っておきたくて。」
「虫はどっちだか。」
先輩が掴まれた腕を振り払いながらランを一瞬睨む。すぐに表情は優しくなったけど…なんかお2人、バチバチしてません?空気が怖いよ??
「ランドルさん行きますよ。」
「はい、すいません。」
「トゥシェさん、ランドルさん事は私に任せて大広間に戻ってくださいね。せっかくの卒業パーティーですから楽しんで欲しいのです。そうですね…1時間後にあの扉からランドルさんを連れて会場に入ります。それまでは一旦、彼の事は忘れてください。」
「忘れ…」
「あ、忘れるは言い過ぎですね、こちらの事は気にせず楽しんで欲しいと言う意味ですよ。」
「は、はい…。」
ラン達行っちゃった。ランの奴、去り際ギリギリまでこっち見てたな。
1時間か…次にランと会えるのは、パーティーも終盤に差し掛かった頃かな?てか今どのくらい時間経ってるんだろ。
「トーゥーシェーちゃんっ。」
「ほあいっ!?」
考え込んでたら急に目の前にイケメンがっ!…って、
「オルロージュ先輩!いきなり覗き込まないでください!!」
「だってトゥシェちゃん、さっきから全然俺の方見てくれないんだもん。」
「そんな事は…。」
…あるかも。
だって、半年会ってなかった幼馴染がいきなり登場したんですよ?そっちに意識持ってかれても仕方なく無いですか?
私が否定しなかったが気に障ったのか、先輩は私の正面で頬を膨らませてみせた。
「俺ちゃんと、君の所に戻ってきたのに…寂しいよお姫様?」
「おひ…ッッ!?」
その顔で2度もそんな事を言わないでー!かっこ良すぎて心臓に悪い!!やっぱりこの人女慣れしてる、じゃ無いとそんなワードチョイス出来ないって。
なんで返せば良いか思いつかなくてしどろもどろになる。少し沈黙が流れたけど、それを終わらせたのは先輩だった。
「…ねぇ、パーティー終わるまで2人でここにいない?」
「えっ?」
「さっきの幼馴染くんとは落ち合わないで、ずっとここに居ようよ。」
「それは…」
そんな事したらランを困らせちゃう。
そう言おうとオルロージュ先輩の顔を見ると、彼の瞳があまりにも真剣で 思わず出かけた言葉を飲み込んでしまった。
「…トゥシェちゃん。」
「…はい。」
「俺今すっごいやきもち妬いてる。俺が目の前にいるのに、いきなり出てきた知らない男が君の関心を奪っていった。俺は俺を見て欲しいの、わかる?」
両手を握られる。でも壁ドンされた時とは違って怖さは無い、そっと添えるような形。
真っ直ぐに気持ちを伝えてくれている。出会った頃のふわふわしていた彼はここにはいない。
…ー誠意を伝えなくちゃ。
最後のダンスまでに全員に踊れないと返事する事で頭がいっぱいになっていたけど、それじゃ駄目だ。ゲーム的に言えばイベントやノルマかもしれない。けれど私は今、この世界に生きている。だから、攻略対象としての彼等じゃ無くて、私と同じように生きている彼等1人1人と向き合わないといけないんだ。
「…オルロージュ先輩。手を離してください。」
「どうして?」
「私、これ以上あなたとここにはいられません。」
返事はないけど、訴えに反して握られる力が少し強まった。私の言わんとしている事を察して拒絶しているのかもしれない。言ったら嫌われる?嫌われはしなくても、前のような関係には戻れないかもしれない。
それでも…言葉にしなくちゃ。
「先輩は私の事を好きだと言ってくれました。私も先輩が好きです、でも違うんです。私は今の状況が逆の立場で起こってもやきもち妬いたりしません。先輩に対する私の『好き』は、そういう『好き』じゃ無いから…。」
目を逸らしたい逃げ出したい。頑張れ私…!
心の中で喝を入れ、やっとの思いで次の言葉を口から発した。
「…ー私は最後のダンスをあなたとは踊れません。ごめんなさい…。」
言うべきことは言った。心臓がバクバクうるさいし、空気が怖くてどうしようもないけど震える足でしっかり立つ。目の前の先輩に負けないくらいの気持ちを込めて、その瞳を見つめ続ける。
どのくらい時間が経っただろう。ふと、手に感じていた熱と力が無くなった。
「…そこまで言われちゃったら俺もうどうしようもないよ、結構自信あったんだけどなぁ。」
取り繕うような、困ったような表情と共に、先輩の2つのトパーズが細められた。
この人を傷つけた…わかってたつもりなのに、彼の様子を目の当たりにして胸の奥がズキッと痛む。
「先ぱ…」
「気を遣わせちゃってごめんね?でも来年こそは、絶対にOKの返事もらってみせるから!」
「えっ?」
らいね…え、来年?
来年って、1年後だよね?現時点でこんなに攻略対象からアプローチきてるのに、1年経ってもゲームの時間軸続いてるんですか!?
…じゃ、無くて!!つまり先輩は今回踊らない事は受け入れてくれるけど、私を諦めるつもりは無い…って事??
「先輩あのですね」
「トゥシェちゃん、踊る気のない相手といつまでも喋ってたら時間が勿体ないよ?早く会場に戻りな?」
「いやだからその」
「それとも無理矢理にでも、俺から逃げられないようにしてあげようか。」
へっという言葉が溢れるより早く身体をグイッと引き寄せられ、一瞬で私の視界には先輩の胸元しか入らなくなった。驚いたのも束の間、次の瞬間顎を持ち上げられ、吐息がかかりそうな程の至近距離に彼の顔が迫る。
待ってまたこのパターン!?ごめんなさいしたのにこのままキスされるのはアウトでしょ!!また蹴る?駄目だ、ドレスのスカートが邪魔でちゃんと足を上げられそうにない。こここ、こうなったら…!
「離してーーー!!」
「!?」
自分の鼓膜までやられるんじゃないかってくらいの大声で叫んだ。びっくりした先輩の腕の力が緩んだ隙に、ドンッと思いっきり彼を突き飛ばす。そしてそのまま一目散にパーティー会場へと走った。
「…ー今、君の気持ちが俺に向いていなくても…他の男に向いていたとしても、どうやら俺は諦められそうにないからね。来年の今日迄には振り向かせて見せるよ、トゥシェちゃん。」




