まさかの再会に心臓が跳ねました 2
何秒経っただろう。
さっきまで無言だったシュポールさんが小さく「ふむ」と呟いて、ランから少し距離を取った。心臓バクバクなんだけど。シュポールさん、あなたの次の行動は…!?
「…どうやら彼は、王都や学園の規則に不慣れな故、こちらのお嬢さんからパーティーに招待されていたものの入り方を誤ってしまったようですね。」
「へっ?」
「「!?」」
固まる私の横で間抜けな声を漏らすランと、騒つく周囲の人集り。シュポールさんは身体を衛兵達の方へと向けて、声高々に言葉を発する。
「王城に侵入者ありとの話は誤報でした。皆持ち場に戻るように。」
「はっ!!」
彼の言葉を聞いた衛兵達は敬礼し、ぞろぞろと解散していった。王子の側近と警備担当の下っ端では立場が違いすぎ反論出来ないと見た。とにかく助かったぁ…。
人が減り、大広間の賑わいが聞こえるくらいには静かになった。今この場に残っているのは、私とラン、そしてシュポールさんの3人だけ。
「どうしてあんな風に言ったんですか?どっからどう見てもコイツ侵入者でしょ。」
じゃ無かったみたい。シュポールさんとランに対する疑惑の眼差しを添えて、オルロージュ先輩が私達の元へ近づいて来た。お父さんからのパシリって、侵入者であるランの捕獲だったんですね。だから今のやりとりも見ていた、けど一連の流れに疑問を感じたんだろう。
フラム殿下と親しい故にシュポールさんとも関わりがあるであろう彼は、さっきの衛兵のようにシュポールさんに対して縮こまる様子は全く無い。
「そうですね。でも彼はこの通り、ただの侵入者では無いようなので。」
チラッと様子を窺われる。『ただの侵入者では無い』。私から見たらそうだけど、シュポールさんにとってはただの侵入者で良いのでは?…とか思ったけど余計な事言いません、恩人なので。
「あの…ありがとうございました。俺、ランドル=トリベールって言います。さっきトゥシェが言ったように、彼女とは従兄弟で幼馴染の関係です。」
ランが1歩前に出て、シュポールさんに頭を下げた。お礼を言われた彼は柔らかな口調でそれに応える。
「礼には及びません。城の者がトゥシェさんと親しいあなたに無礼をしてしまいすみませんでした。それで…あなたはどうしてこのような形で王城に入られたのですか?」
そりゃ聞いてくるか。優しいけどなんか怖い…非があるのは絶対にランなんだけどね?ラン、なんて答えるの?
「…パーティーの前にトゥシェに会うつもりだったのに会えなくて。城に入れば今日のうちに会えるかなって思ったんです。ご迷惑をかけてすいませんでした。」
真面目に返した、しゅんってなってるし。
見た感じランは嘘ついてないし、これ以上言いようも無いんだろうな。あまりにも簡単な理由で侵入してきた事に呆れられたかもしれない。
「でも彼女に会えたので俺は満足しています。こうやって会うのも久しぶりなので、出来るならもう少し2人で話したいんですが…大丈夫ですか?」
「ラン。」
少し遠慮がちではあるけど、ランはシュポールさんにまだここにいても良いか尋ねた。
私ももうちょっと一緒にいたいけど、なんて言われるかな。
「そんなもう少しと言わず、ランドルさんもパーティーに参加してください。」
「えっ!?」
「はぁ!?」
「良いんですか!?俺、田舎出身のど平民ですよ!?」
予想外の返事に私もランも先輩も思わず大きい声が出た。1番驚いてるのは参加を提案された本人っぽい。パーティーへの侵入者から参加者へシフトチェンジって、そんな事あって良いの!?って思うよね。
ただこれは言わせて欲しい。田舎出身のど平民は私もだから、それでパーティー参加出来ないなら私は今ここにいないぞ…?
焦るランと対照的にずっと落ち着いた様子のシュポールさんが言葉を続ける。
「あなたは学園の生徒であるトゥシェさんと従兄弟の関係なのでしょう?それならパーティーへの参加資格は十分にあります。今からでも遅くありません、裏には私から話を通しておきましょう。ただ…。」
再び全身を凝視される田舎の平民ランドル君。冷や汗は止まった?いや、止まって無さそうだな。
「参加して頂く上でその服装では…。」
「ゔっ。」
ランの今の格好は、ボール村で普段彼が着ていた物より質が良さそうな平民服。王都に来る用に新調したっぽいけど、侵入の加減で汚れてますよ?
ただいくら質が良くても平民服である事に変わりはない。この格好のままでパーティーに参加するのは流石に空気読めて無さすぎる。
「でも俺、今はこれしか服持ってないです。それに、パーティーに参加する為の服をすぐに買ってくる時間もお金もありません。」
「その点はご安心ください。この城にはあらゆるドレスコードが揃っていますので1着お貸ししますよ。」
「そんな…良いんですか?」
「勿論です。」
ランの奴、一見遠慮してるけど貸してもらう気満々だな!?提案聞いた途端めっちゃオーラが明るくなったぞ!?
「じゃあ、なんでも良いんで1着貸してください!」
「わかりました。では場所を移さないとですね…使えそうな部屋に案内しましょう。」
「ありがとうございます!」
シュポールさんが歩き始め、ランがそれについていく。私も2人に続こうと思い進もうとした時、肩の上に手を置かれ、クイっと後方に引っ張られた。




