まさかの再会に心臓が跳ねました 1
扉の前に到着し、まずはチラッと外を覗いてみる。どうやらこの扉の外は渡り廊下に繋がっているようで、廊下の片側が庭みたいになっていた。
外に出る。大広間の中は人の声や演奏で溢れていたけど、扉から離れると必然的にそれも小さくなる。代わりに焦るような複数の会話が聞こえるようになった。
声の方にゆっくり近づくと、角の向こうに数人衛兵のような人を発見。何か喋っているようなので、こっそり聞き耳を立ててみた。
「…ったく、ここまで探しても見つからないってどういう事だよ?」
「まさかデマだったりよな?」
「いやそれは無いって。侵入者を発見したのっていうのは、信頼できる奴だからな。」
侵入者…!?ってやばいこっち来る!
慌てて太い柱に身を隠す…隠せてるのかこれ?まぁ、気づかれなかったっぽいのでよしとしよう。
卒業パーティー当日に王城に侵入者…イベント臭がプンプンするな。この後何が起きるの?てかそもそも侵入者は私とどう絡んでくるんだろう。
『…ー見つけた。』
「えっ?」
またこの声だ。さっきと同じように頭に響いてくる…幻聴?だってこの声は、この声の主はここにはいないー…
「…トゥシェ!!」
また声がした。けど今度は頭の中じゃない、頭の上…上から!?
慌てて真上を見ると、渡り廊下の天井の穴からある人物が目の前に飛び降りてきた。
瑠璃色の髪に瑠璃色の瞳。クシャッとなった、私のよく知った笑顔を添えて。
「よっトゥシェ!久しぶりだな!!」
「えっ…な、なんで、どうして?」
「どうしてって…明日から長期休暇に入る幼馴染をフライングドッキリで迎えにきたんだよ。なのに俺が今日の昼過ぎに寮を訪ねたら不在って…お陰で強硬手段使ってお前を探す羽目になった!この貸しはでかいぞ?」
「いや待って、マジで言ってる意味がわかんない。ドッキリって何?そもそも私、迎えにきて欲しいとか言ってないんだけど。」
「…なんだよ、トゥシェは俺に会えて嬉しく無いのか?」
不貞腐れて少し口を尖らせるそれも、何度も見た仕草。
ここ王都、しかも王城。そんな場所でこんな形で遭遇するなんて思うわけないじゃん。だからびっくりしてんのよ、腰抜けるかと思った。
でもそれ以上に…たった半年ぶりなのに懐かしい。
「ラン…ランドル!!私だって会いたかった!!」
「おわっ!?」
潤んだ視界を誤魔化すようにギュッと彼に抱きついた。スカートのボリューム邪魔!ハグがしにくいわ!
勢いよく飛び込んだからか一瞬ランがよろけたけど転けずに耐えてくれました、ありがとう。
久しぶりの彼の匂いと体温に安心する。嘘じゃない、私の知っているランが今目の前にいる。
視界の揺らぎが落ち着いてので一旦離れる。見上げるとランの顔が真っ赤になっていた。
「ラン…暑いの?」
「いや違…。」
「改めて聞くけどなんでここに来たの?て言うか、そもそもどうやって入ったの?」
王城での今日のイベントは、今行われている最中の卒業パーティーだけのはず。そこに参加するには学園からの招待か、学園の生徒の関係者として参加しますという事前の申請が必要になる。そして受付で身元の確認?的なのが必要になると思うんだけど…。
「あー……母さん直伝の秘密の通路からこっそりと?」
「はぁ!?!?」
いやちょ、何言ってんの!?なんでドヤ顔してんの!!だからさっき天井から降りてきたの!?いやその前に母さん直伝って、マヌーヴル伯母さんどうしてそんな通路知ってるんですか!?
…ちょっと待て。
つまりランは、正規のルートから王城に入っていない…不法侵入してきたって事だよね。不法…侵入!?
「見つけたぞー!!あの青年が侵入者だー!!」
「あいつ、パーティーの参加者を人質に取りやがった!!」
やっぱりぃぃいい!!?
2人の衛兵が声を上げた事で他の衛兵も一気に集まって来た。
私達が一緒にいる光景を見て、侵入者が私を人質にとったと判断したらしい。衛兵達は集まりはしたものの、私の安全を考慮してか一定距離から近づいてくる様子が無い。
彼等的には、ここからなんとか私を救出してランを捉えたいんだと思う。でもそうなったらランはどうなるの?確実に牢屋とかにぶち込まれるよね…。彼は大切な幼馴染なのでそれは困るんですが。
てかそもそもの侵入した理由が本当に、さっき言ってた『私を迎えにきたドッキリ』なら私も責任問われる?他に侵入して来た理由…無さそうだし。隣の彼の表情は悪戯がバレた後の誤魔化し方を考えてる時のそれと一緒だもん。
これ…どうしたらいい?
「間違いであれば申し訳ありません。その青年は…トゥシェさんのお知り合いなのですか?」
どう弁解するのが最適解か足りない頭を必死に回転させていると、いきなり背後から私への質問が聞こえてきた。恐る恐る振り返るランと私、そこにいたのはシュポールさんだった。
「…っそうです!田舎で仲良くしてた従兄弟で幼馴染です、だから私、人質とかじゃ無いですよ!?」
「成る程?」
遠巻きな衛兵達を尻目に私達へと歩み寄るシュポールさん。ランの目の前で足を止めて、まじまじと彼の全身を観察し始めた。
「……。」
「「……。」」
観察している目が怖い…息苦しい沈黙が流れる、私もランも冷や汗ダラダラだ。
この後シュポールさんがなんて言うかで、きっと私達の処遇が決まる…最悪の事態を想定しつつ、見逃してくださいと心の中で必死に祈った。




