卒業パーティー当日となりました 7
ファンファーレ的なものが響き渡る。
私達が入ってきた扉とは反対方向に位置する大きな扉が開き、そこから横並びの男女、一歩後ろに知った顔の2人の王子、お付きの人数人という団体がゆっくり入ってきた。先頭の男の人…あれが王様かな?隣はきっと王妃様だろう。彼等はグリモワールさんの隣まで歩み寄り、少し会話をしてから台の上に登っていった。
「学生諸君、今夜は楽しんでくれたまえ。ここにサントル魔法学園卒業パーティーの開催を宣言する!」
凛とした、どこかフラム殿下と似た声が大広間に響き渡る。瞬間一斉に拍手が沸き起こり、オーケストラの演奏がまた聞こえてきた。そして解き放たれたかのように皆が会話を再開し始めた。
あれが国王陛下と王妃殿下か…遠目でしかわからないけど、フラム殿下はお父さん似でフリュ殿下はお母さん似かな?両親どっちもあんだけ見目麗しかったら、そりゃ子供も美形になりますわ。
玉座に座る国王陛下、隣の椅子には王妃殿下。彼等の隣に立って話をしている2人の王子…絵になるッッ!!この光景が見られて幸せです、これだけで来た甲斐あったわ!
「…トゥシェさん、トゥシェ=ルルーさん!」
「はぅあっ!?」
近くから名前を呼ばれてハッとする、変な声出しちゃったよ!?声の方を向くと、オリヴィア様達が落ち着いてくださいと言いながらクスクスと笑っていた。恥ずかしい…。
演奏の音が耳に入ってくる。なんだかさっきまでより音量が大きくなった気がする。
「演奏の音、大きくなってませんか?」
「ああ、正式にパーティーが始まったから、音に合わせて踊れるように演奏の音が大きくなったんだよ。」
オリヴィア様のお兄さんが返事をしてくれた。なるほど踊る為ね…ダンス…。
「ダンスッッ!!!!」
「!?!?」
こんな所で油売ってる場合じゃなかった!!最後のダンスが始まるまでに4人全員にごめんなさいしないといけないんだ、やばい。
ダンスって何曲やるの?最後のダンスの前には次で最後です〜的なアナウンス入るって信じて良いよね?それまでになんとか4人と接触しないと…皆さんどこにいらっしゃるの!?王子2人は玉座辺りにまだいてる!?
バッ!と玉座に顔を向ける。2人ともまだ陛下の隣にはいるけど、今にも離れそうな雰囲気だ。やばい、はやく玉座に行かなきゃ…
…平民の私が、玉座に??
流石にキツいでしょ。いくら王子2人と接点があっても王様とは絡み無いんだし。悪役令嬢が主人公の小説に出てくる常識のないヒロインならズカズカ行っちゃえるんだろうけど、私には無理!!!!
と、いう事は玉座から離れようとしているこの瞬間がチャンス?急げば2人が玉座付近にいる間に見つけて声をかけられるよね…?どっちかと話してる間にどっちか遠のくかもだけと、そんなこと考えてたら両方とも見失っちゃう!
「…あの!私、行くところあるんで失礼します!」
「えっ?」
驚くフルール様達にババっと礼をしてくるっと体の向きを変える。私は人混みをかき分けながら、玉座方面に向かって早足で移動を始めた。貴族に知り合いがいない平民である事が幸いし、誰も話しかけてくる気配は無い。ヒールの低い靴履いてきて良かったー!
…結構移動したけどまだどっちの王子も見つかんない。急ぎが足りなくて、2人とも既にどこかに行っちゃった?
もしそうだとしてもここで諦めるわけにはいかない。
『…ートゥシェ!』
「…えっ?」
今、誰か私を呼んだ…?
声?いや違う、でも確かに語りかけてきた。この声って…。
『トゥシェどこだ?』
間違いない聞こえる。聞こえるっていうより、頭の中に直接語りかけられてる…?
いやいや落ち着け、今の私が必死過ぎて変な幻聴が聞こえてるだけかも。一旦深呼吸してから王子探しに戻ろう。
息を吸おうとしたした瞬間。
「あっ、トゥシェちゃん!」
「オルロージュ先輩!?」
私の目の前で、急ブレーキをかけるように赤毛のイケメンが足を止めた。
王子探してたのに、まさか先に先輩に会うなんて!これはつまり、まずはオルロージュ先輩に話をしろという思し召しですか!?
やばい緊張する。意識したらちょっと吐きそうだけど今言うべきだ。ごめんなさい、あなたと最後のダンスは踊れません、って…!
「…先輩、あの」
「ごめんトゥシェちゃん、俺もちゃんと話したいんだけど後でいいかな?」
「えっ?」
「ちょっと野暮用で親父にパシられてるんだよ、俺もれっきとしたパーティーの参加者なのに。」
「野暮用?」
先輩のお父さんって確か軍人さんだったよね。そのお父さんからの用事って事は、警備関係だったりする?事件発生の予感…イベントの可能性!?
「私もついて行って良いですか?」
「え、なんで?」
光の速さで疑問視されたーそりゃそうかー!!なんて答えよう…。
「えっとですね…。」
…思いつかないー!柔軟な思考回路を持ち合わせていない自分が憎いー!
返答できずしどろもどろになっていると、ふわっと優しく頭を撫でられた。
「…後で絶対迎えにくるから待ってて?俺の綺麗なお姫様。」
「ッッ!?!?」
顔全体が一気に沸騰したように熱くなる。ななな、なんですかお姫様って…!?
って、私が火照ってる間に先輩行っちゃったんですけど!?
先輩あっちに走って行ったよね、あの扉の方面…。あれ、あの場所の扉は閉まっていたはずなのに半開きになってる?扉の外に何かあるのかな。
先輩に言われた通り下手に動かないべき?これもゲーム内の選択肢だったりする?残って王子を探すか、何かありそうな扉の外に向かうか…。
……。
「やっぱり気になる!イベント上等、行ってやろうではないか!!」
選択とともに私は何度目かの方向転換をして、半開きの扉へ急ぎ足で向かった。




