卒業パーティー当日となりました 6
指定された場所で馬車から降りる。見上げるとてっぺんがわからない程高い城…昨日ぶり2回目でございます。昨日と違うのはここに私やフルール様、後ろに控えるスクレさんの他にも多くの人がいる事。『モーヴェ公爵家の中に平民の私』という周囲からすれば謎すぎる一行は、他の人たちと同じようにパーティーの受付を済ませ、会場である大広間まで進んでいった。
昨日も見た大きな大きな扉。今のそれは開かれた状態で固定されており、どんどん入ってくる来客を歓迎しているよう。
イベントが始まるー…。
この扉の向こうには何が待ち受けているの?私の身に何が起きる?もしくは何も起こらない?ここまでフラグびんびんに張られた状況で、何も無いのはあり得ないと思うけど…。
私はこの卒業パーティーで誰と恋愛するかを決めなければならない。乙女ゲームのヒロインとしての義務だ、わかってる。
それでも私は誰も選ばないと決めた。悩んで悩んで、それでも選べなかったのだから仕方がない、許して欲しい。ただ、そう決めたのならそれを伝えなくちゃ。今度こそ、昼間のヴァン先生の時みたいに言葉に詰まったりしないできちんと言うんだ…!
フルール様達に気づかれないように、小さく深呼吸をする。
「…よしっ。」
意を決して、大広間へと足を踏み入れた。
「…うわぁぁあ凄い…!!」
大広間には、既に着飾った多くの人達が集まっていた。
静かに聞こえるクラシックは生演奏。端には立食用の食事がずらりと並んだテーブルがあって、グラス片手にお喋りに花を咲かせる人々がちらほら。昨日の昼間も準備をする使用人の方々で賑わってはいたけどその比じゃない。なんかもっと、こう…キラキラしてる!!
これが貴族の…王城のパーティー!!!!
「緊張なさってますか?トゥシェさんはこのような場所に来る事自体初めてですものね。」
「うおっ!?」
フルール様に話しかけられてハッとする。雰囲気に圧倒されて棒立ちしてたわ…。
「そうですね緊張はしてます…でも、」
何度読んだか、何度想像したかわからない。前世でも、転生したボール村でも幾度となく夢に見た、シンデレラていうところの『舞踏会』。
それが今、私の目の前で行われている。ずっと憧れていた世界がすぐそこにある。そんなの…
「凄くワクワクしてます!」
ハッキリ伝えると、フルール様達はとても嬉しそうに笑ってくれた。
「このパーティーの主役はサントル魔法学園の卒業生、次に在校生だ。私達大人は端でのんびりしているから2人で楽しんでくると良い。」
「ではお言葉に甘えてそうさせて頂きますわ。トゥシェさん行きましょう。」
「はいっ!」
フルール様に手を引かれる。なんかエスコートされてるみたい…女の子が女の子を引っ張ってもエスコートって言えるのかな?ムズムズするけどそれ以上に嬉しいや。
「あっ、あっちにオリヴィア様発見!」
「本当ですわね、お話ししに行きましょうか。」
「はい♪」
ピンク色のドレスを見に纏ったオリヴィア様に声をかける。隣には彼女のお兄さんがいた為、お互いに自己紹介した。喋っているとすぐにスザンヌ様とシャルロット様がやって来て、いつものトリオ、ドレスアップバージョンとのお喋りタイムがスタートした。
しかし数分も経たないうちに音楽が鳴り止み、静かにして大広間の最奥に注目するよう促される。
奥の方って確か…玉座?
そこに注目するという事はつつつ、つまり…!?!?
ドキドキしながら言われた方に全身を向ける。
「…えー、本日はサントル魔法学園の卒業パーティーにお越し頂き、誠にありがとうございます。学園長のエリオット=ド=グリモワールです。」
…あれっ?王様じゃ無い。代わりに玉座のある台のふもとに立っているのはグリモワールさん。そりゃそうか、王城で開催しているとはいえこのパーティーは魔法学園の行事だもんね、責任者の挨拶は必須か。
いつもはゆったりとおろされているミントグリーンの長髪が後ろに纏められている。装いも見慣れたローブ姿とは違い、パーティーに相応しい華やかなものだ。様になり過ぎている…やっぱりあの人年齢不詳だよ。
グリモワールさんは落ち着いた様子で挨拶的なものを続ける。そして話が済んだ時、ある人物を呼び込んだ。
「それでは、今年度の卒業パーティーの開催宣言を国王陛下にして頂きます。」
ほへっ!?
「国王陛下、王妃殿下並びに王子殿下の入場でございます!!」




