卒業パーティー当日となりました 2
「トゥシェさんがお2人と親しくなった事には私が関係しているんです。私とトゥシェさんが一緒にいる時にそれぞれ別の場所で殿下達とたまたま遭遇し、そこで意気投合された…と、いう訳ですわ。そして、卒業パーティーが近づいたある日、王城を知らないトゥシェさんの為を思って、殿下達が私とトゥシェさんを王城に招いてくださったんです。」
次の言葉に戸惑っていたら、フルール様が横から事の流れを上手い具合に説明してくださった。トリオは「そうだったんですね」「やっぱりフルール様は私達と違いますわ」等々の返事をし、私へのグイグイ追求をストップしてくれた。フルール様、ありがとうございます…。
「皆さん席についてください。」
教卓方面から響いた声に肩が揺れる。生徒達がいそいそと近くの席に座って声の主の方を向いた。勿論、私も。全員が着席した事を確認した彼…ヴァン先生は、この1年間お疲れ様でしたと言った内容の話を始めた。
以前の私だったら、教卓で話す先生に真っ直ぐ見れたのに。
見ようとは思っている。けどもしそれで、この前みたいに目が合って、何かそれっぽい発言をされたら…それが怖くてチラチラとしか前を向けない。
そんな態度をしているうちに彼の話は終わってしまい、各自解散、卒業パーティーには各々で来るようにと言われてしまった。いつものように教室から出て行く先生。
ヴァン先生に返事をするタイミングって、今なのでは…?
先生はこれから式典後の諸々の最終確認したり、パーティーの準備をしないといけないはず。私もこの後はフルール様の屋敷に直行してドレスアップをしてもらう予定だし。
つまり今、踊る意思が無い事を伝え損ねた場合、次に彼と会えるチャンスはパーティー本番しかない。ぶっつけ本番の直前にごめんなさいを言わないといけなくなる、それは良くないよね…!
慌てて立ち上がり教室を飛び出す。人の流れの奥に既に教室から離れつつある背中を見つけ、必死にそれを追いかけた。
「ヴァン先生っ…!!」
何とか追いついた背中が停止する。そしてゆっくりと半回転した。
「ルルーさん…。」
「忙しいのに呼び止めちゃってごめんなさい、あの…。」
話したい事があるんです。
卒業パーティーの最後のダンス、あなたとは踊れません。
先生はきっと、いっぱい考えた上で私を誘ってくださったんだと思います。でも私はあなたの気持ちには応えられません。
「その…。」
言うんだ。
あなたが私に向けている気持ちと同じものを、私は与える事が出来ないって。
「私…。」
…言葉が出てこない。
覚悟を決めたはずなのに、いざ本人を目の前にすると口がうまく動かない。
どうして?頭の中は言うべきフレーズで溢れかえっているのに、現実世界で音になってくれない。
心拍数が上がって小刻みに足が震えだす。絞り出す単語の音量もどんどん小さくなって、こんなんじゃ会話にならない。先生は何も言わずに私の次の言葉を待ってくれているのに。きっと彼は、私以上に緊張しているのに。
「私、先生とは「ヴァン先生いたー!!」
!?!?
突然響いた大きな声にビックリする。叫んだ張本人が小走りでこちらにやってきて、ヴァン先生の隣で立ち止まる。少し息を切らした隣のクラスの担任だった。
「ルイーズ先生、どうしたんですか?」
「どうしたんですか、じゃ無いです!各クラス解散後の教員はすぐ式典の片付けに行かないといけないのに、何のんびり生徒と話してるんですか!手が足りてないんです、早く来てください。」
「そうですね、すいません。」
ちらっとこちらを見たヴァン先生と目が合う。私が今、話の続きをしたいのか確認したいんだろうな。
「…私は、大丈夫です。ヴァン先生仕事いっぱいあるんですよね、行ってください。」
「でも…。」
「いいんです。私の事はいいので…。」
「……。」
いい筈が無い。
でもこれ以上彼をここに留まらせても、私は次の言葉をすぐに言えるとは思えなくて。
だから私がちゃんと言えるまで待って欲しいというわがままに蓋をして、不恰好に笑ってみせた。
「ルルーさん…。」
「ほら、生徒の許しももらえたんですから行きますよーっ!」
ルイーズ先生が早足で進んでいく。ヴァン先生もその後を追いかけていき、どんどん私から遠のいていく。
自分が情け無い。
あの日、ヴァン先生ははっきりと意思を伝えてくれたのに私は逃げて。
ずるずる先延ばしにしてようやく出した答えは曖昧なものだし、その答えを伝えることすら出来なくて。言わなくちゃって思いと、言わずに済んだ現象にどこかホッとしている思いが交差して嫌になる。
こんな意気地無しがヒロインだなんて。
私が好きだった小説の主人公達はこんなところでウジウジしない。言うべき事はちゃんと言うかっこいい存在。私はそんな彼女達が好きだし、自分に無いものを持っている事への憧れも抱いていた。
転生して、性格も明るくなって、この物語のヒロインになったというのに私の本質は変わっていない。臆病で引っ込み思案なあの頃の私が今も絡み付いているんだ。
その場に棒立ち状態のヒロイン失格な私。
ずっとここにいるわけにもいかない、きっと教室では、フルール様が突然飛び出していった私を待ってくれている。私個人がヒロインを全う出来ていなくてもストーリーは進む、卒業パーティーというイベントの準備をしなくちゃ。
「ルルーさんっ!」
この小説を見つけ、目を通し、読み進めてくださっている読者様のおかげで、この物語も100ページ目となりました!ひとえに感謝しております。構成、執筆初期の段階では、実はこの小説は100ページ前後で終わる予定でした。しかし執筆を進めていくうちに新しい展開を思いついたり、深掘りしたい部分が出てきたり…気づくと予定より長くなっておりました。あくまで現在のイメージですが、150ページ前後で完結になると思います。どれだけ長くても200ページ未満のつもりですのでよろしくお願いします。
記念すべき100ページ目の主人公が居た堪れなくて申し訳ないですが、引き続き「どうせなら悪役令嬢に転生したかった〜ヒロインルートは私にはむず痒い!〜」を、よろしくお願いします!!




